「情けは人のためにならないからやめたほうが良い」という意味ではない。自分のためになるからどんどん情けをかけるべきだ、という意味。
なぜ自分のためになるのかは、本書の第2章にある『返報性の法則』が答えてくれる。
返報性の法則とは
返報性の法則とは
他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、似たような形でそのお返しせずにはいられない
というもの。いわゆる「ギブアンドテイク」である。
いちいち例をあげて説明しないが、恩を受けたという感情は強力なもので放っておくと負担となる。やがては非常に不快なものとなり、社会から(端的に相手方から)の悪評価を受けるのではと心配にもなる。だから「返すべき」ではなく、「返さずにはいられなくなる」のだ。
返報性の法則を活用する
おおむね次のような活用方法が考えられる。
1.先に与える
無料の試供品、プレゼント、試食コーナーなどは返報性の法則を利用している。ただ実験によると、「購入してくれたら◯◯をプレゼントする」というよりも「プレゼントしてから購入してもらう」方が成功確率は上がるそうだ。
たとえば、「アンケートに答えてくれたら粗品を差し上げます」というDMよりも、「こちらはささやかなプレゼントです。よろしければ付属のアンケートにお答えください」の方がアンケート回収できるということ。大切なのは先に与えることである。
2.拒否を想定して譲歩を引き出す
大きな要求が拒否された後、小さな要求をすると承諾されやすい。これは、こちらが先に譲歩することによって、相手の譲歩を引き出しているのだ。形は違うがこれも返報性の法則の一種である。
この仕組みを理解しておけば、あらかじめ本当に要求したいことよりもハードルの高い要求を用意しておいて、譲歩を引き出すことが可能だ。しかも譲歩して承諾した場合には、相手方に責任と満足度がともなう(理由は本書を読んでほしい)。ただ、あまりに大きすぎるお願いをしてしまうと効果はない。要求全体がうさんくさくなるからだ。
3.サプライズで心の準備をさせない
サプライズは相手を混乱させ、冷静な判断をできなくする。要求は、サプライズによって承諾される可能性が高まるのだ。たとえ相手から勝手にされたことでも(一方的なものであっても)効果は変わらない。
よくよく考えてみると恐ろしいことであるが、予期せぬプレゼントによってコントロールされてしまう可能性があるということだ。恋人へのただのプレゼントならまだ良いが、プロポーズの場合は注意したい。結婚には「契約」という一面もあるのだ。
ヒトコトまとめ
返報性の法則とは
“先手必勝”の施しによって相手をコントローすること、である。
お付き合いありがとうございました。多謝。
<目次>
第2章 返報性――昔からある「ギブ・アンド・テーク」だが……
第3章 コミットメントと一貫性――心に住む小鬼
第4章 社会的証明――真実は私たちに
第5章 好意――優しい泥棒
第6章 権威――導かれる服従
第7章 希少性――わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力――自動化された時代の原始的な承諾
<著者>
ロバート・B・チャルディーニ
米国を代表する社会心理学者の一人。現在、アリゾナ州立大学教授。社会的影響過程、援助行動、社会的規範などに関する数多くの業績で学界をリードしている。
<類書>
誠信書房
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