企業経営に必要なものはなんだろうか。優秀な人材、良質な製品、そして潤沢な資金。たしかに。だが、それだけで十分と言えるだろうか。
おそらく御社の成長のグラフは、平行線をたどるかあるいは緩やかな右肩下がりとなるだろう。掲げた目標を達成したり達成しなかったりを繰り返しながら。ヒト・モノ・カネだけを頼りに事業を行うとはそういうことだ。儲かることもあれば、儲からないこともある。日和見的経営。
いわく、現代のような激しい競争社会においては、それだけでは不十分である。 では、他になにが必要だと言うのだろうか。
そう、「戦略」である。
企業の存在意義
企業の存在意義は「事業の継続」「利益の創出と成長」「社会貢献」である。事業を継続していくなかで、利益をあげ、成長し、社会貢献していく。そのどれかが欠けてしまえば生き残っていくことはできない。既存の企業からもそれは明らかだ。
そして、それらを実際に行うにあたって必要となるのが「経営理念」や「ビジョン」をもとにした「施策・戦術」である。
経営戦略とは
ただし、理念やビジョンはあくまでも抽象的なものだ。
理念とは「企業の最終的な目標(目的)、存在意義、ミッション、バリュー」を意味し、ビジョンは「中長期での目指す方向性、理念に時間軸を加えて具体化したもの」を意味する。これだけでは具体的な施策を行うことはできない。
そこで必要となるのが「経営戦略」である。その3つの特徴
- 「「経営環境」をもとに策定される」
- 「「理念」や「ビジョン」を具体化する」
- 「日々の施策の方向性を示す」
から詳しくみていこう。
1.「経営環境」をもとに策定される
まず、経営戦略は「経営環境」をもとに策定される。
経営環境とは「経済」や「政治」といったマクロな視点から、「顧客」「取引先」「競合」「経営資源」などのミクロな視点までを加味した、企業をとりまく環境のことである。
この経営環境を無視して策定した戦略は、効果的に機能しない。高級感や安心感をウリにする百貨店と、24時間営業や身近な存在としてのコンビニエンスストアーが同じ戦略で成果をあげることができるだろうか。
つまりはそういうことである。
2.「理念」や「ビジョン」を具体化する
また、経営戦略は理念やビジョンを具体化する。
理念やビジョンはすでに説明したとおり、どちらも抽象的なものだ。そのまま日々の業務に落とし込めるものではない。
たとえば、「ユニクロ」ブランドで有名な服飾大手「株式会社ファーストリテイリング」の企業理念は次のとおりだ。
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
これをそのまま、日々の業務に落とし込めるだろうか。まず無理である。「服を変える、常識を変える、世界を変えていく……で、具体的にはどうやって?」となるだろう。
だからこそ戦略が必要となる。戦略によって理念やビジョンを具体化するのだ。
服を変えるために機能性や新素材にこだわった独自商品を自社で開発。それによって、これまでの価格の常識をくつがえし、人々の「着る」そのものを世界規模で変えていく。日本では大都市圏への出店を加速させ、世界ではまずはアジアからシェアの拡大を目指し、各店舗では顧客の声を吸い上げる。簡単に言うとこんな具合だ。
3.日々の施策の方向性を示す
そして、戦略をもとに理念やビジョンと日々の施策を結びつける。
先ほどのユニクロの例で言うと、独自商品を自社開発するために企画・デザイン・素材調達・生産工場の品質管理・販売までの全プロセスを一貫して行う。また大型店舗を増やし、顧客の声を反映させるためにカスタマーセンターを設置。そのための人材を適正に配置し、責任の所在を明らかにさせ、日々の業務に落とし込む。あとはその業務の内容をマニュアル化し、標準化する。
こうして理念やビジョンが“戦略によって”日々の施策に反映されるのだ。
もちろん、事業ごと・機能ごとに戦略は多種多様である。詳しい内容は本書に記載されているので参考にしてほしい。
ヒトコトまとめ
経営戦略とは
「経営環境」をもとに策定され、「理念」や「ビジョン」を具体化しつつ、日々の「目標」の指標となるもの。
お付き合いありがとうございました。多謝。
<目次>
第1章 経営戦略の役割と特徴
第2章 経営戦略の理論を俯瞰する
第3章 戦略を動かすための仕組みづくり
第4章 企業全体のパフォーマンスを向上させる全社戦略の実践
第5章 個別事業の競争優位を構築する事業戦略の実践
第6章 不確実性の時代における“新しい”戦略論の潮流
<類書>