吐き気がするまで考えろ|糸井重里さん、近ごろのネットをどう思いますか? 働く人とネットの関係性

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糸井重里さん、近ごろのネットをどう思いますか? 働く人とネットの関係性|はてなブックマークニュース

ネットに依存せず、「働く」を楽しむ。

仕事は楽しい

そもそも仕事は楽しいものである。

私の仕事のはじまりと言えば、小学生の頃、父親の配送に付き合ったときだ。父はローソンで深夜の配送をしていて、私と兄は、学校の休み前に交互に付き添ったものだ。見たこともない場所、深夜の町並み、コンビニの雰囲気など、当時の私からすれば刺激に満ちていたと思う。ローソンの工場内でも手伝ったし、あの冷蔵庫のような寒さは今でも覚えている。

その後はさまざまなアルバイトを経験したが、どれも平坦な「作業」ばかりだった。私は量をこなすのは得意だったが、自ら動き出すということをしなかった。いつでも肩身が狭い思いをしていた。それは新卒で入社した会社でも同様である。

ただ、一度だけ楽しかった思い出がある。それは、ファミレスで友人3人とアルバイトをしていたときのこと。急に責任者や年配の社員が出れなくなり、私たち3人でお店を任せられることになった。空いてる時間、それも短時間だけだったが、とても楽しかったと記憶している。自由に、主体的に、協力して仕事をすれば、高校生だけでもお店を運営することはできるのだ。

ノイズのノイズ

職を転々とし、道を見失いかけたとき、私はようやく「本当にやるべきこと」を見つけた。

それが現在の「文筆業」である。まだまだ口に糊する暮らしではあるが、毎日が楽しくて仕方がない。誇り高き使命感、苦にならない地道な努力、朝から晩まで好きなことをやる。仕事と遊びのはざまで、創意工夫はどんどん重ねられていく。

さまざまなものを捨てて、私は「個」を手に入れたのだ。

同世代の人間と比べても、恐ろしいほど所有しているものは少ないが、それがかえって私を身軽にした。交友関係もパッタリとなくなった。ほとんどすべての時間を文章のために使っている。これからもそうするつもりだ。

そうなると、あくまでも情報と収集しての「ネット」は必要だが、情報の量は不要になる。自分の考えを否定したり新しい発想をもたらす「ノイズ」は必要だが、雑踏のお喋りは不要なのだ。スマホはいつもおやすみモードだし、アプリのプッシュ通知はほとんどがオフ。

重要な連絡はメールでしかこないようにしている。

「クチ」動かす前に、「テ」動かせ!

たしかにネットはネットで楽しい。くだらない興味をそそるものがたくさんある。だから意図的に切る。

私が本当にすべきことは「文章を書くこと」で、それを邪魔するものは容赦なく切って良い。それが私のルールだ。チャットやニュースアプリなどへのコメントといった「クチ」を動かすことは極力避け、文章を書くという意味の「テ」を動かすこと。

『桐島、部活やめるってよ』の前田くんのように、何を言われようとカメラを持ったものが勝ちなのだ。私の結論はサルトルの『嘔吐』 と一緒である。

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