GILT(ギルト) ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー
会社をつくるのが人間なら、つぶすのもまた人間である。
これまでには「強力な経営者」あるいは「ワントップ」が成長企業を支えてきた。既存の会社をみてほしい。どこに「強力なツートップ運営」の会社があるだろうか。あったとしても少数である。
その少数の会社の一つが、世界最大級の招待制ファミリーセールサイトを運営する「ギルト・グループ」である。もとは米国のスタートアップだ。現在では世界中に会員がおり、彼らは特別価格で高品質な買い物をすることができる。
創業者は「二人の女性経営者」である。
ギルト・グループの成功にみるチーム力
ギルト・グループの成功は「人間関係」と「実行力」にある。短期間で会員数を増加させた秘訣は「バイラル・マーケティング」や「秀逸なサイトデザイン」などの戦略によるところも大きい。しかし、強力なチーム力なくしては成功はあり得ない。
それは『GILT(ギルト) ITとファッションで世界を変える私たちの起業ストーリー』 に書かれている内容が、徹頭徹尾チーム力についてであることからもうかがえる。人間関係も実行力も良いチームワークから生まれたのだ。協力し、苦難を乗り越え、決断をしつつ、実行する。「アイデアはあるのだが……」と手をこまねいているだけの“チームを組まない人々”とは違う。
そしてその違いが成否をわけるのだ。
スタートアップを成功させる「絆」
スタートアップ成功のキーワードは「絆」である。実践方法は以下のとおりだ。
1.良いチームをつくる
まずはチームをつくること。
できれば共同経営者である前に「仲間」であることが望ましい。大事に思っている人と一緒に働くことは、それだけで事業に対する意義や意欲につながる。つまりは「絆」による力を生むのだ。
東日本地震の被害は記憶に新しいが、どうにか乗り越えてこられたのも絆があったからこそである。津波の被害は甚大であった。それはもう回復不可能かに思えるほど。それでも人は希望を捨てない。そこに絆があるかぎり。
町をなぎ払う津波に打ち克つことのできる絆。事業ができないわけがない。
2.自分が「善良、正直、誠実」であること
何があっても自分が「善良、正直、誠実」でいなくてはならない。
どんなに良いチームをつくろうとも、自分が信頼にたる人間でなくなれば、存亡は危ぶまれる。他人を完全にコントロールすることはできない。しかし自分なら可能だ。自分だけは信頼にたる人間でいつづけなければならないのだ。
優れた投資家はスタートアップの事業を見ない。事業が成功するかどうかを完全に予測できるのは「預言者」だけだからだ。だから、事業を見ないで人をみる。もちろん「経営者」をだ。共同経営者である自分が信頼にたる人間でなかったら、投資家ははたしてどう思うだろうか。出資してくれるだろうか。
私だったら土下座されても出資しない。あなたもそうだろう?
3.相互の信頼・尊敬・補完
共同経営者は双方が「信頼・尊敬・補完」する関係でいなくてはならない。
お互いに対する深い信頼があるからこそ、自分の仕事に集中することができる。相手の決断に反論することができる。実行するときに迷いが生じない。信頼はお互いを自由にし、お互いに勇気を与えるのだ。
信頼があるからこそ、尊敬が生まれる。相互に尊敬しあえることが配慮につながる。そして、競争することなく、お互いに高め合うことができるのだ。まさに理想的な関係である。良いライバルとは相互に尊敬があるものだ。
信頼し、相互に尊敬しあっているからこそ、背中をあずけることができる。たとえ後ろに目がなくとも、背中を合わせているパートナーに全幅の信頼を寄せることができる。相手の足りないところを補い、自分の足りないところを補ってもらう。
そうしてはじめて、1+1が10にも100にもなっていく。
ヒトコトまとめ
スタートアップを成功させるには
良いチームをつくり、相互にリスペクトし、自分が信頼にたる人間でいつづける、こと。
お付き合いありがとうございました。多謝。
<目次>
キャリアと友情―スタートアップまでの道 アイデアを練り上げる―ギルト・グループが形になるまで ビジネスパートナーを選ぶ―相性のよさをどこで見極めるか タイミングを計る―ビジネスを始めるには旬の時期がある ネットワークをつくる―立ち上げに向けて準備する eコマースの売場を改装する―ビジュアルによるブランディングの試み 資金調達はアートだ!―スタートアップにふさわしいベンチャーキャピタルを見つける バイラル・マーケティングで顧客獲得―コストをかけない画期的手法 草の根作戦―インサイダー・マーケティングと高級感の維持 優秀な人材を集める―私たちはどのように有能なチームをつくり上げたか 危機をバネにする―在庫不足の問題とリーマン・ショックを克服する 私たちらしいリーダーシップのスタイル―ギルト・グループの拡大後も自分流を貫く 超成長の反動をどう乗り切るか?疲労困憊、そしてギルト・ジャパンを立ち上げる これからのギルト・グループこれからのファッションeコマース
<著者>
アレクシス・メイバンク、アレクサンドラ・ウィルキス・ウィルソン
ギルト・グループ創業者。二人ともハーバード大学卒業、ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士号)取得。メイバンクはイーベイ・カナダとイーベイ・モーターズの立ち上げに参画。ウィルソンはメリルリンチ、ルイ・ヴィトン、ブルガリに勤務。その後、ケビン・ライアン、マイク・ブライゼックとフォン・グエンとともにギルト・グループを創業、現在に至る。二人とも既婚。夫と子供たちとともにニューヨーク、マンハッタン在住。
<類書>
日経BP社
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