記事や書籍を執筆しているフリーライターにも、ビジネスモデルが必要です。
ともすると、ライターやデザイナーなどのクリエイターは、何よりも、技術やセンスが大事だと思われがちです。「実力さえあれば生きていける」、と。たしかに、最低限の実力は必要ですが、必ずしも、それがすべてではありません。
なぜなら、実力というものは、必ずしも正しく評価されるとは限らないからです。こういうと、「レベルの低いところで競っているからだろう」と思われるかもしれませんが、そもそも知ってもらえなければ、レベルもクソもないわけで。
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プロとして仕事をしていく以上、どうしたって、競合他“者”と競うことになります。需要は、無尽蔵にあるわけではありません。他人と異なる強みがなければ、仕事(BtoB)も、ファン(BtoC)も、獲得できません。
そのことを前提にしつつ、勝ち抜いていくこと、そして継続できることをふまえて、ビジネスモデルを構築していく必要があります。クリエイターだからビジネスモデルや戦略が必要ないかというと、いやはや、とんでもない思い違いなわけです。
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さて、ことフリーライターのビジネスモデルを考えると、肝となる収益をあげる方法(マネタイズ)は、大きく2つあります。ライターの仕事を、「文章を書いて生きていく」という狭義の意味でとらえた場合、
①執筆の仕事を受注する(BtoB)
②文章をユーザーに売る(BtoC)
となるでしょう。
受注する仕事は、書籍(ブックライティング)かもしれないし、雑誌やウェブの記事かもしれないし、あるいはパンフレットや小冊子の原稿かもしれません。発注元は、大きく「出版社(編プロ含む)」と「一般企業」の2つにわかれます。
一方、自らの文章をユーザーに売る方法としては、自著を出したり(印税収入)、サイト記事を書いたり(広告収入)、直販したり(物販)する方法があります。いずれも、相手は一般顧客となります。
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それらの収益源を軸に、「安定的に文章を書くこと(生産)」と「競合に勝ち抜くこと(差別化)」などを検討するわけです。ファイブフォース分析などを使ってもいいのですが、暗くなるのでやめましょう(厳しい業界なのは明白です)。
シンプルに戦略を構築するとすれば、
・安定的に文章を書く→自らの資源を活かす(スキル、体力、人脈、資金など)
・競合に勝ち抜く→そもそもライバルが少ない(参入がむずかしい)ジャンルを選ぶ
などが、差別化ポイントとなります。
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こうした差別化できる要素をもとに、他者との違いを創出し、社会のニーズにマッチした文章を安定的に提供していく。そうすれば、最良の戦略とは言えないかもしれませんが、継続的にライターをしていけそうに思えます。
ただし、ここで注意が必要です。フリーランスの場合、「ビジネスモデルの実践=自らのキャリア構築」という構図があります。つまり、自らの活動と、自らのキャリア形成が、密接に関連しているということです。
そうなると、闇雲に収益の最大化を目指した結果、望まないキャリアが構築されてしまう危険性もあるわけです。極端な話、評論家を目指していたのにテクニカルライターになってしまった、というように(実際には無いと思いますが……)。
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また、年齢的な変化もあります。私たちの身体は、減価償却される設備機器と同じように、とくに体力面で衰えていきます。AIのように学習による成長もあるのですが、ビッグデータほど何かが蓄積されるわけでもなく、やはり、衰えは無視できません。
そこで、ライターの仕事を、「文章に関連するあらゆる事業で生きていく」という広義の意味で定義しなおすとどうでしょうか。ライター業務を、文章に“関連する事業”にまで広げれば、執筆だけでなく
・ライター講座の開催
・文章コンサルティング
などの業務は比較的かんたんに思いつきますし、
・収益サイトの運営
・ミニ編プロとしての活動(著者の発掘、執筆、編集、出版社開拓など)
なども考えられます。
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これらは、ライターのビジネスを狭義で考えた場合と異なり、顧客層やタッチポイント、マネタイズの方法も大きく変わります。そのぶん、必要なスキルやノウハウも異なるのですが、持ち前の文章力や実績などの資源が活用できます。
このように、フリーライターのビジネスモデルを考える際には、勝ち抜くことと継続することに加えて、自らのキャリアや仕事内容についても検討しなければなりません。さらに、「ひとりでやるか・組織でやるか」という点も考慮する必要があるでしょう。
複雑な要素が絡み合っているだけに、考え過ぎは禁物です。大切なのは、「このままでいいのかな?」と思ったとき、ちょっとした軌道修正ができるよう、心の準備をしておくこと。そのうえで、日々の学びを重ねていくことが求められます。
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