起業・独立を成功に導く“強くてニューゲーム”の方法論~倒産の知識・資本政策・キャリア形成~

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リアル・オプション

独断と偏見でたいへん恐縮なのですが、ボクは安部総理にカリスマ性があるとはちっとも思えません。強いリーダーシップや外見的な魅力もほとんど感じられない。それでも、2期目の安倍政権は評価しています。何より継続していること自体が素晴らしい。

では、安部総理が安定した政権を維持できている理由はどこにあるのか。そこに、起業や独立を成功に導く“強くてニューゲーム”の方法論があると考えます。

参考:日本に必要なのは、簡単な「キャリア倒産」だ|日経ビジネス


リアル・オプションとは

投資の世界には「リアル・オプション」という理論があるそうです。リアル・オプションとは、

「事業環境の不確実性が高い時には、慎重に計画をたててから巨額の投資をするよりも、まずは早く部分的に投資をして、その後で必要なら段階的に追加投資したほうが良い」という考え方。

です。会社が成長するかどうか、市場が拡大し続けるかどうかが不確実である。このような状況で投資するのはリスクですね。通常であれば、リスクを回避するために様子見する人は多いと思いますが、そこでリスクをとるのが投資家です。リターンを得るためにリスクを許容するのです。

ただ、たとえ投資家と言えどもみすみす損はしたくない。判断が遅れるとチャンスを逃してしまう可能性がある。だからこそ、「早く」「部分的に」投資するのが良い。そのような考え方がリアル・オプションです。

リアル・オプションのメリットは2つです。

  1. 事業環境が悪化したときのリスクを減らせる
  2. 事業環境が好転したときのチャンスを逃さない

つまり、不確実性のリスクを加味しつつ、チャンスを得られる体制を整えるために、段階的に投資するのです。

起業や独立への応用

リアル・オプション理論は、起業や独立にもそのまま応用できます。

経営戦略論の権威であるユタ大学のジェイ・バーニー教授は論文で次のような仮説をたてています。

『失敗事業のたたみやすさ』の違いが、世界各国の起業の活性化の違いに影響しているのではないか?

その根拠は次のとおりだと推察します。

①起業はほぼ失敗する(=リスク)

アメリカの起業家養成スクール「Yコンビネーター」の創業者、ポール・グレアム氏によれば、スタートアップの成功は7%ほどだそうです。他にも、10年後も存在している創業企業は6%ほどというデータもあります。大成功する確率は0.3%とも……。さらに、成功するかどうかの不確実性も高い。これは起業や独立にはリスクがあるということを意味しています。

②成功すれば大きい(=リターン)

それでもなぜ起業に挑戦しようとする人がいるのか。大きなリターンがあるからですね。何もないところからスタートして、既存の大企業に勝るとも劣らない勢力へと成長した企業はたくさんあります。お金の部分でも、社会的な地位としても、自己実現としても、そして社会貢献としても、起業の成功は大きな恩恵をもたらしてくれます。

③成功するには何度も挑戦するしかない(=人生における資源の段階投資)

起業の不確実性は高い。それがそのままリスクとなっている。ただし、成功すれば大きなリターンがある。だから挑戦する。あとは、何度も挑戦するしかないじゃないですか。正解がないのだから。起業や独立をギャンブルに例えるのはもっての外ですが、自分の数字が出るまでダイスを振り続けるしかない。

だからこそ、失敗事業のたたみやすさが重要なのです。

起業の失敗=倒産・廃業

何度も挑戦することで、失敗から学べる。経験が得られる。人脈、スキル、ノウハウの蓄積。そして何より、ダイスを振る回数が増える。テレビゲームで例えるなら、何度も何度もプレイしているうちに、つまづくポイントが明らかになり、徐々にゴールへと近づける。それと同じです。

ただし、ここで重要なのは、「起業の失敗=倒産・廃業」ということです。社内の事業であれば「撤退」ですむかもしれませんし、ゲームだったら無駄にした時間を後悔しながらリセットボタンを押せばすむかもしれません。しかし、起業や独立の失敗には倒産がつきまといます。

倒産について知ろうとしないばかりに、無意味に恐れ、借金を重ね、「損切り」できずに抜き差しならない状況まで追い込まれてしまう人がどれだけ多いことか

倒産はこの世の終わりではありません。しっかりと精算し、次に進むためのステップです。再チャレンジのための制度と言ってもいい。それなのに、倒産を恐れて焼け石に水の努力をしてしまうのは、存在するかどうかもわからないお化けを恐れて逃げ続けるのと同じです。

リアル・オプション起業3つのポイント

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。ポイントは次の3つです。

  1. 「倒産」について知る
  2. そのうえで、資本政策を練る
  3. キャリア形成は中長期的な視点で

倒産について知ることで、倒産処理、つまり再チャレンジへの準備が的確に行えます。難しいことではありません。できれば避けたい「自己破産」を含めて、「倒産法」や倒産のしくみ、実務的な部分までの流れを把握しておくだけです。入門書および専門書をそれぞれ数冊ほど読み込んでおけば十分かと思います。

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倒産について知ることの大切さについては、こちらの記事でもご紹介しています。

『倒産を知れば起業のリスクはゼロになる』

次に資本政策ですが、右肩上がりの成長が見込める“はず”の、ごく一般的なベンチャー企業であればこちらを読み込んでおけば当面は問題ないかと思います。

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加えて、すでに倒産の知識を得ていますので、「倒産・廃業にかかる費用」や「再チャレンジに必要なお金」を考慮しつつ、どの段階で撤退するか、あるいはピボットするかを“あらかじめ”検討できます。損益分岐点やキャッシュ・フローの状況とは異なる判断材料をもつことは、冷静な思考力を担保してくれるはずです。

そして、倒産後に備えたキャリア形成。「前職は社長をやってました」というような人を、欲しがる企業はありません。言うまでもありませんが、「具体的に何をやってきたのか?」「そこで学んだことをどう仕事に生かしてくれるのか?」「どんな利益をもたらしてくれるのか?」「他の人よりもどこが優れているのか?」が大事で。少なくとも自身が所属している業界では、胸をはってキャリアを主張できるようにしたいものです。

「強くてニューゲーム」の起業論

結論です。倒産というexitも含めた事業計画・人生設計をすることで、リスクを交わしながら確実にチャンスをつかむ可能性を増やすことができる。必要なのは次の3つ。

①「倒産」について知る ②そのうえで、資本政策を練る ③キャリア形成は中長期的な視点で

安部総理が余裕をもって2期目の公務を行っているように、トラブルや罠などの展開が読めている2回目以降の挑戦は、ゲームにおける「強くてニューゲーム」と呼べるのではないでしょうか。

強くてニューゲームの起業論 (1)

参考

『スタートアップが失敗する確率は93%「僕らはゆっくり40年間働く代わりに、4年間限りなくハードに働く」』

『ベンチャー失敗の法則』

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