ビジネスの現場ではよく、「全体を俯瞰することが大切だ」と聞く。しかし、そのやり方にまで言及していることは少ない。
たとえば、ビジネスモデルを俯瞰することによって、その企業が「どのように利益をあげているか」が見えてくるという。それを知ることで、自社の事業展開の参考にしようというわけだ。
なるほどたしかに、それは勉強になりそうだ。けど……どうやって??
そこで本書『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』 である。
ビジネスモデルを俯瞰するには
『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』には、ビジネスモデルを俯瞰するための“見える化”の手法がわかりやすく掲載されている。
具体的には「ヒト・モノ・カネ」それぞれの関係性を図で示し、そこに時間軸を加えるというものだ。そうすることによって、ビジネスモデルが手に取るようにわかるようになる。
たとえばプリンターを販売しているキャノンやエプソンの場合、印刷機そのものよりも、くり返し購入してもらえる「インクジェット」で利益をあげている。通常は、キャノンやエプソンを「印刷機を販売している会社」と単純に理解してしまいがちだ。そこで、その企業が販売しているものをすべて羅列し、そこにヒトとカネの流れを時系列で並べてみると、ビジネスモデルが見えてくる。
本書で紹介してるのは「ピクト」という図を活用している。詳しくは内容を確認してもらいたい。
ビジネスモデルを“見える化”する
ビジネスモデルを俯瞰する場合に、押さえておきたいポイントが3つある。それは
- ビジネスモデルは「交換」である
- 「ヒト・モノ・カネ」の“関係”を図で表す
- 「誰が、誰に、何を、いくらで」に落とし込む
である。順番に解説していこう。
1.ビジネスは「交換」である
そもそもビジネスは「交換」で成り立っている。
「なにを当たり前なことを」と思うようであれば問題ないが、以外にこの点を見逃している人が多い。
企業は商品やサービスを提供する代わりに対価を得ている。ここが大前提にあるわけだ。それに比べたら、人材の育成や社会貢献や成長や経営戦略は二の次だ。いくら立派な人材が揃っていようとも、いくら社会に貢献しようとも、「交換」というかたちで対価を得ていなければそれはビジネスではない。
シンプルな原則だけに忘れないようにしたい。
2.「ヒト・モノ・カネ」の関係を図で表す
ビジネスは交換により成り立っていることを前提に、「ヒト・モノ・カネ」の関係を図で表す。そうすることでビジネスモデルが俯瞰できる。
ヒト・モノ・カネに加えて、最近では「時間」や「情報」なども要素として加えられている。ビジネスモデルを俯瞰する際には、時間軸を加えることが必要だ。しかし情報はサービスとして提供しているので、あくまでも「モノ」として取り扱う。
ビジネスモデルを見える化する場合には、その点に気をつけてほしい。
3.「誰が、誰に、何を、いくらで」に落とし込む
そして、さらに細かくビジネスモデルを分解する際には、「誰が、誰に、何を、いくらで」に落とし込んでいく。
ビジネスモデルを俯瞰するだけでは、大きな戦略やビジネス展開の仕方は見えてくるが、個々の活動までは見えにくいものだ。そこに「3W1H(誰が、誰に、何を、いくらで)」を加えることで、日々の事業についても細かく把握することができるようになる。
先ほど紹介したプリンターを例にとると、販売会社(誰が)が、販売先(誰に)に、プリンターそのものだけでなく、設置やアフターケアなどのサービスを提供しつつ(何を)、機器だけでなく継続的にインクジェットも購入してもらえる(いくらで)。といった具合だ。
このように分解してみると、携帯電話やスマートフォン本体を売る携帯各社が、本体だけでなく通信料を継続的に得られる、というビジネスモデルに似ていることに気づくだろう。
ヒトコトまとめ
ビジネスモデルを“見える化”するには
ビジネスは「交換」であることを念頭におき、「ヒト・モノ・カネ」の関係性を図で表しつつ、「誰が、誰に、何を、いくらで」に落としこんで俯瞰する。
お付き合いありがとうございました。多謝。
<目次>
Part-1 ビジネスモデルを見抜く
Chapter-1 ビジネス想像力クイズ
1 ビジネス想像力クイズ(1)——“仲間探し”に挑戦!
2 ビジネス想像力クイズ(2)——“微妙な違い”はなに?
3 ユニクロ、『ドラクエ9』の成功の裏にビジネスモデルあり!
Chapter-2 ピクト図解とは
1 ピクト図の描き方
2 ピクト図はビジネスの「レントゲン写真」
3 ピクト図解の3つのメリット
Chapter-3 ビジネスモデルを解読する
1 代表的な8つのビジネスモデル
2 「ビジネスモデル」と「収益モデル」
3 ビジネスモデルを解読する(1)——居酒屋
4 ビジネスモデルを解読する(2)——100円ショップ
5 ビジネスモデルを解読する(3)——雑誌の広告
6 ビジネスモデルを見抜くトレーニング法
Part-2 ビジネスのアイデアを発想する
Chapter-4 ダイアグラム発想法
1 ビジネスモデルを次々と生み出す「ダイアグラム発想法」
2 ビジネス事例からダイアグラム発想法を学ぶ
3 新聞記事からダイアグラム発想法を学ぶ
Chapter-5 アナロジー発想法
1 ビジネスモデル応用力がつく「アナロジー発想法」とは
2 アナロジー発想のためのトレーニング
3 アナロジー発想で業績を改善させたA社
Chapter-6 アイデアの風呂敷をたたむ
1 OBゾーンに入っていないかを考える
2 目標数字に照らして考える
3 実現可能性を考える
4 3つの軸から風呂敷をたたむには?
<類書>