アマチュアを脱却するための3つの文章テク『プロを目指す文章術』三田誠広

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プロを目指す文章術

プロを目指す文章術

書くことが自己満足であるのなら、文章術など気にする必要はない。

思い思いの文章を書けばいいのだ。好きな時間に、好きな場所で。気が向かなければ書かなくてもいいし、書くことよりも楽しいことがあればそれを優先させてもいい。スポーツ、交流、セックス。楽しいことはたくさんある。

だが、ひとたび「プロの文章家」を目指す決心をしたのならば話は違う。アマチュアのように書くことは許されない。


プロの世界

プロの世界は厳しい。厳しいという言葉が陳腐に聞こえるぐらいに。

文章家を目指す理由はさまざまだ。小説が好き、文章が好き、サラリーマンに向かない、必要に迫られてなど、多種多様だ。あるいは小遣い稼ぎのために片手間でプロを目指す方もいるだろう。それでもプロはプロである。

プロの文章家である以上、文章で「対価」を得なくてはならない。報酬という意味では「お金」がもっともイメージしやすいと思うが、次の仕事の依頼や文章家としての名声も対価のうちである。こう言うと語弊があるかもしれないが、プロにとって文章は「商品」となる。

農家にとっての野菜、陶芸家にとってのつぼ、営業マンにとってのセールストーク。それがプロの文章家にとっての文章である。こだわりを持つのは結構だが、「マニアっぽさ」にこだわりすぎて売れない文章ばかり書いている人はプロではない。文章が(あるいは小説などの作品)が好きなアマチュアだ。

アマチュアを脱却するための3つのポイント

『プロを目指す文章術』 にはアマチュアを脱却するための文章術について書かれている。ポイントは以下の3つだ。

1.新しさに意識を向ける

新しいものは注目を浴びやすい。

それが必ずしも良い作品に結びつくとは限らない。しかしチャンスにはなる。チャンスがなければ書き続けることは難しいし、評価されないこだわりはただの自慰だ。プロには、歯を食いしばって書きたくないものを書かなければならない時がある。

また、文芸賞を狙うときにも新しさが盛り込まれていたほうが可能性が広がる。真新しさがエンターテイメント性を生み、読者に斬新さを提供できるのだ。そこから自分のスタイルが生まれるかもしれない。

もちろん闇雲に新しさを追求するだけではいけない。過去の良作をしっかりと読み込み、その技術を理解したうえで独自の手法を考案しよう。試行錯誤は必ず無駄にはならない。

2.奥深い文章を

新聞はなぜ捨てられるのか?

そこには「最新の情報」しか載っていないからだ。情報を淡々と伝えるだけでは、次の最新の情報が出た瞬間に古いものは価値を失う。使われるとすれば、過去の事件を振り返るアーカイブとしてだろう。

巷にあふれる小説の中にも、「新聞のような」作品がある。ためしに「ブックオフ」などの古本屋に行ってみると良い。そこに「痛々しい価格で」平積みされている小説たちは、捨てられたも同然だ。1クールのドラマみたいなものである。

売れれば良い。売れた後に平積みされるのなら構わない。なるほどそれもそうだ。だが、はたして次も続くかどうかは甚だ疑問である。少なくとも、心ある読者は「がっかりさせられた」という気持ちでいっぱいだろう。

大切なのは文章に「奥深さ」をもたせることである。奥深さとは重層的な意味、伏線、仕掛けのことだ。一読しただけでは理解されない奥深さにこそ、読者を惹きつける魅力が、時代を越えて読まれる理由がある。

3.主人公と対峙する

主人公の魅力は小説の魅力である。

生きた人間の心情をとらえ、読者の興味と共感を得ることができれば、小説は半分成功したと言っても良い。そのためには、客観的な視点で主人公を眺め、適切な距離を保ちつつ描写する必要がある。

近づきすぎてはいけない。自分が主人公そのものになってしまえばただの日記になってしまう。小説の世界は現実とは違う。たとえモチーフが自分や知人だったとしても、視点の違いや趣向を凝らさなければ魅力的な主人公にはなりにくい。

自分の分身のような、大切な友人のような、グチや屁理屈ばかり言う恋人のような。そんな一定の距離を保てる関係性を構築したい。あなたが日常生活で行っているように。スマートに。

主人公が勝手に動き出すようになれば、筆はどんどん進む。

ヒトコトまとめ

プロの文章術とは

新しさに意識を向け、奥深い文章で、魅力的な主人公を描ききる、こと。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

第1章 「はじめの一歩」で必要なこと
第2章 文章から「小説」への旅立ち
第3章 「名作・名文」のワザに学ぶ
第4章 「エンターテインメント」は技術の宝庫
第5章 狙い目ありの「流行ジャンル」
第6章 「プロ作家」への道

<著者>

三田誠広
1948年、大阪生まれ。早稲田大学文学部卒業。1977年、『僕って何』を「文藝」に発表し、芥川賞受賞。以後、小説、評論、エッセイと幅広く活躍している。日本文藝家協会副理事長。日本文藝著作権センター理事長。

<類書>

小説講座 売れる作家の全技術  デビューだけで満足してはいけない
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