プロの文章家として稼ぐための心がまえとは|『<不良>のための文章術』永江朗

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「プロ」とは何であろうか?

プロの作家、プロのゴルファー、プロの棋士にプロの料理人。資格試験が必要なものもあれば、名乗ったその瞬間からプロになれるものまである。さまざまだ。ただ、名実ともにプロと呼ばれるために、必要なものがひとつだけある。

「それで対価を稼いでいる」こと。つまり、お金をもらっているかどうか、だ。


プロのライターと作家の違い

ここでハッキリしておかなければならないことがある。それはプロのライターと作家の違いだ。

作家もたしかに文章で対価を稼いではいるが、プロのライターとは明確に違う。商業的なカメラマンと芸術家としての写真家との違いと同じだ。両者は「求められているもの」が違うのだ。

なるほどたしかに、プロのライターが文学賞をもらえることは無いかもしれない。しかし、大衆に問題を提起することはできる。作家が特定のラーメン屋を批評することは難しい。しかし、物語として心に残る作品を生むことはできる。

いずれにしても、ここで述べているプロとは前者であることを肝に銘じてほしい。

プロの文章家として稼ぐための心がまえ

『<不良>のための文章術』には、プロの文章家として稼ぐための心がまえが記載されている。以下にポイントをまとめた。

1.読者最優先

プロの文章は「読者最優先」で書かれなければならない。

対価を払うのは出版社かもしれないし、編集事務所かもしれない。しかし、最終的な消費者はユーザーである読者だ。だからこそ、スーパーや家電量販店が掲げているように、顧客(読者)を最優先に掲げる必要がある。

ただ、読者を最優先に掲げるというのは、読者に媚びたりすり寄ったりすることではない。ときに挑発的な文章で反感を買うことも必要だ。すべては「読者を楽しませるため」なのである。

観客を魅了しないプロゴルファーはプロとして一流だろうか? お客様に舌鼓をうたせるような料理を提供できない料理人はプロとして大成するだろうか? 文章もまた同様である。

2.読まれなければ意味がない

プロの文章は読まれなければ意味がない。

もっと言えば、読まれない文章はインクの無駄、紙の無駄である。それぐらいの気持ちで取り組まなければならない。読者は、プロの文章を対価を払って閲覧している。たとえ直接的に費用を支出していなくとも、プロの仕事には代償がともなうことを忘れてはならないのだ。

正論が歓迎されない理由はそこにある。 「そんな分かりきったことを再確認するために私は対価を払っているのではない」 そう読者に思われてしまったら、クレームは来ないかもしれないが、少くとも仕事は減るだろう。プロ失格である。

学校で習ったことは忘れていい。正しい文法よりも読者に伝わる言い回しを。目を見張るような知識よりも読者が食いつくテーマを。それがプロ文章家の仕事である。

3.自分を押し殺す

プロの文章においては、自分を前面に出してはいけない。

個性、主張、自己実現、表現。もし文章にそれらを求めているのなら、プロの文章家ではなく作家を目指すべきだ。それにしても、名指しで読まれない限り、個性というものが求められているかどうかは不確かだが。

第一に読んでもらえること。第二に内容が伝わること。そこに個性は無用である。基本ができていないのにオリジナルを求める人は多いが、それは順番が違うというものだ。自分が好きな野菜しか並べない青果店の店主は、果たしてプロと呼べるだろうか?

まずは自分を押し殺す。主張すべき場所は他にもたくさん用意されている。少なくとも、商業的な文章において私情を挟んでしまうことは避けなければならない。

ヒトコトまとめ

プロの文章家がもつべき心がまえとは

仕事上では、サービス業としての文作に徹すること。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

1 「不良」になるための心がまえ
「不良の文章」ができるまで
投稿上手とプロはここが違う ほか

2 本の紹介文を書こう
イントロダクション―本を紹介するための5つの鉄則
『窓ぎわのトットちゃん』を例に
・切り口を考える
・地図的感覚と年表的感覚
・文章をどう読みやすくするか ほか

『帝国』を例に
・「むずかしい本」を紹介するには
・補助線を導入する
・読者層と文章の関係
・若者向け雑誌の原則)  ほか

3 取材して書く
イントロダクション―「まずい店」をどう紹介するか
グルメ記事を書くための鉄則
B級グルメ篇「とんかつ屋」を書く―味覚をどう表現するか ほか

4 コラム・エッセイを書く
イントロダクション―署名原稿の7つの鉄則
「モノ」コラム―自由作文型への取りくみ方
辛口人物評―課題作文型への取りくみ方

<著者>

永江朗
1958年、北海道旭川市生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。洋書店勤務の後、雑誌編集を経てフリーライターに。「哲学からアダルトビデオまで」を標榜し、幅広い媒体で取材・執筆を行っている。

<類書>

誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)
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上阪 徹
ミシマ社
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