「児童サービス論」合格レポート(近畿大学図書館司書)

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本稿では、近畿大学図書館司書コースの「児童サービス論[’19-’20]」における、合格レポートを紹介しています。

※内容をそのままコピー&ペーストするのは厳禁です。あくまでも、解答例および書き方の参考にしてください。

設題

設題は次のとおりです。

児童サービスのもつ意義について述べなさい。また調べ学習や読みたい本を探している子どもに、司書としてフロアワークでどのような働きかけをすればよいかを述べなさい。さらに、子どもたちが将来の図書館のファンになるために、司書としてどのように取り組むかを述べなさい。(2,000字)

レポート作成上の留意事項・ポイント

・1900字以上書くこと。
・まずテキストをよく読み、その後、参考文献で肉付けすること。
・必要以上のコメントや感想は避ける。
・参考文献は必ず挙げること。

総評基準についてのメッセージ

・設題の趣旨を十分に理解して書いているか。
・テキストや参考文献をよく読んで書いているか。
・構成をきちんとしているか。(筋道を立てて書けているか)
・テキスト以外の参考文献等の学習ができているか。

合格レポート

1.序論

 公共図書館の利用者は老若男女さまざまであり、事実上、すべての市民に門戸が開かれている。一方で、急速な少子高齢化が進む日本において、子どもが安心して暮らせる社会の実現および子どもの成長を社会全体で支えていくことの意義は、疑いようがない。そのような状況において、司書を含む図書館職員が子どものためにできることは何か。とくに本論では、児童サービスの意義、フロアワーク、未来の図書館ファンをつくる取り組みといった点から論じていく。

2.児童サービスのもつ意義

 公共図書館は、場と本と人をつなぐ役割を担っている。とくに児童に対しては、適切な書籍や読書環境の提供に加えて、本を主とした直接活動としての「フロアワーク」「読み聞かせ」ストーリーテリング」や、間接的に本をつなぐための「子どもの本の分類と配架」「書架整理(シェフリーディング)」「展示・掲示」など、幅広い活動を行っている。
 こうした児童サービスの意義は、図書館を通じて読書の喜びを知ってもらうとともに、社会との接点を体感(意識)してもらうことにある。とくに、「大人の世界との接点を見出し、さまざまな人々と接触し、自分の将来にせって曲的なイメージをもつことができる」(赤星,荒井,2010,p.14)という点が、子どもの成長にとって重要だ。
 また、子どもたちに自分の居場所を見つけてもらうことも、児童サービスの意義となる。くり返し図書館に通うことで、ここを自分の居場所だと認識するようになった児童は、その場所を大切にするために、自然と規則や決まりを守れるようになる。自分の場所であり、みんなの場所である図書館を大切にしようとする意識が、公共性につながるのだ。

3.司書としてのフロアワーク

 司書としてのフロアワークは、カウンターワークにとどまるのではなく、カウンターから出て一人ひとりの児童と接することが求められる。具体的には、図書館の利用方法が分からない児童には丁寧にレクチャーし、困っていることがあれば傾聴によって聞き出し、さらに資料を紹介することで解決できる問題を有しているのならレファレンスすることが必要だ。
 とくに資料を案内する際には、大人に対するレファレンスとは異なり、一緒に書架をまわるなどのひと手間がほしい。図書館に慣れていない児童は、どこにどのような本があるのかすら理解しておらず、それを聞くこともできない可能性があるためだ。どのような悩みを抱えているのかを聞き出すことも、フロアワークの一環である。
 さらに、読書に親しんでいる子どもには、本の内容を要約して解説する「ブックトーク」をしたり、より小さい子どもには読み聞かせをしたりなど、読書をサポートすることも大切である。司書は、そうしたサポートを通じて、児童が何を求めているのかを知ることができる。ひいては、児童サービスを含む図書館サービス全体の向上に寄与することが期待される。また、地域の児童と信頼関係を構築することにもつながるだろう。
 また、ヤングアダルトに対しては、課題の解決につながる資料や図書を案内したり、学習、学校、家庭などさまざまなシーンの問題解決につながるレファレンスを提供したりしたい。パソコン利用やパスファインダーを案内するのも効果的だ。その際には、子ども扱いするのではなく、カウンセリングマインドをもって丁寧に接するよう心がけたい。

4.将来の図書館ファンをつくるために

 将来の図書館ファンをつくるために必要なのは、子どもたちへのPRである。児童に直接うったえられるようなPR活動に加えて、子育て世帯の目に留まるイベントやプログラムなどを開催し、伝えていくことが必要だ。
 同時に、子どもにとっての「よい本」を提供する努力も求められる。Lilian(2016)は「その子がその本によって、一つの貴重な体験を得た場合」(p.9)に、ただの本がよい本になると定義している。本によって自らの成長を実感できるのが望ましい。
 子どもがいる施設という意味においては、学校、学校図書館、保育園・幼稚園、児童館、保健所、病院、文庫、学童保育、障害者施設などとの連携・協力も効果的だ。とくに学校や学校図書館との連携・協力については、図書館資料を通じた調べ学習の援助や資料の団体貸出、相互訪問、図書館見学などの実施により、図書館に関心をもってもらえる可能性がある。
 司書としては、こうした活動の前提となる子どもたちへの理解はもちろん、年代や関心事、流行を含む背景を知らなければならない。

5.結論

 本論では、多種多様な利用者を対象とした図書館サービスのうち、とくに児童サービスに着目して論じてきた。児童サービスの意義をふまえつつ、児童のニーズに応えることの重要性に加えて、児童サービスの成果が大人を対象とした図書館サービスにつながるという視点も忘れないようにしたい。点としての児童サービスではなく、線や面としての図書館利用にまで視線を向けることができれば、その根幹にある児童サービスのさらなる充実に貢献するだろう。

文字数 2066文字

参考文献

赤星隆子・荒井督子(2010)『児童サービス論』理想社
リリアン・H・スミス(2016)『児童文学論』(石井桃子ほか訳)岩波書店


レポート作成のヒント

レポートを作成する際には、以下の点に留意しています。

1.構成を決める

レポートの構成は、「序論」「本論」「結論」が基本となるため、次のように組み立てています。

1.序論: 子どもと図書館について考えることの意義
2.本論:「① 児童サービスのもつ意義」「 ②司書としてのフロアワーク」「③将来の図書館ファンをつくるために」について
3.結論: 本論でまとめた内容に対する、筆者の主張や批判

2.テキストの該当箇所を自分の言葉でまとめる

設題にもあるように、「① 児童サービスのもつ意義」「 ②司書としてのフロアワーク」「③将来の図書館ファンをつくるために」の3点をまとめました。

いずれも、詳細な内容に踏み込んで記述することが求められます。

3.参考書等を必ず参照する

本レポートは、わりと細かいところまで突っ込まれます。私も3回目でようやく合格になりました。

そのため、参考書等を必ず参照し、「児童サービス」「フロアワーク」「子どもたちを図書館ファンにする方策」などについて確認しておきましょう。

参考までに、1回目と2回目のレポートでいただいた指摘を転記しておきます。下記の点に注意してください。

このレポートには3つの設題があります。最初の設題は児童サービスの意義ですが、ここはこれでもよいですが、もう少し詳しく述べるとよかったですね。二つ目の設題はフロアワークの役割や働きかけですが、ここではフロワーワークの持っている大切な要素はだいたいよいので、ヤングアダルトに対するフロアワークの配慮も述べてください。最後の設題は将来の図書館のファンをどのように育てるかですが、ここでは司書としての資質の向上、直接サービス、間接サービス、イベントなどの重要性はこれでよいので、普段、図書館を利用している子どもたちにどのように公共図書館に足を向けさせるかについても述べてください。

(1回目)

二つ目の設題は前回指摘した内容が改善改善されています。これでよいです。ヤングアダルトへの対応は図書館によっても取組の温度差があります。最後の設題は学校図書館との連携について述べることで、公共図書館の利用に結びつけることが必要ですね。

(2回目)

キーワード

本設題の場合、次のようなキーワードが挙げられます。これらの言葉に着目しつつ、まとめていく必要があるかと思われます。

・児童サービス
・フロアワーク
・ヤングアダルト
・学校図書館との連携

参考文献

児童サービス論 (JLA図書館情報学テキストシリーズ 3-6)

児童図書館サービス論

心の扉をひらく本との出会い―子どもの豊かな読書環境をめざして

児童文学論 (岩波現代文庫)

子どもと本の世界に生きて―一児童図書館員のあゆんだ道

新編 子どもの図書館〈石井桃子コレクションIII〉 (岩波現代文庫)

幼い子の文学 (中公新書 (563))

感性を磨く「読み聞かせ」―子どもが変わり学級が変わる

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