専制政治と独裁政治の違い

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歴史の教科書にも登場する「専制政治」「独裁政治」ということば。それぞれ一見、似ているように思えますが、実は、明確な違いがあるのです。

専制政治と独裁政治の違い

まずは広辞苑の定義を比較してみましょう。次のとおりです。

専制政治(despotism)

支配者層と被支配者層とが身分的に区別されていた前近代社会において、身分的支配層が行った統治。大衆の参加を前提とした独裁政治とは異なる。近世初頭の君主制に顕著。

ポイントは「支配者層と被支配者層とが身分的に区別されていた」という点にあります。また、「大衆の参加を前提とした独裁政治とは異なる」という記述も重要です。

一方で、独裁政治とはどう定義されているのでしょうか。

独裁政治(dictatorship)

単独者・少数支配者・支配的党派が、集中化された権力機構を通して大衆を操作・動員しつつ行う専断的政治。一般に法治主義と政治的自由を否定する。古代ローマのコンスルによる執政、ドイツのナチズム、イタリアのファシズムはその典型。

このようにそれぞれの言葉の定義を比較すると、次のような違いがあるとわかります。

専制政治:区別された身分を前提とした、支配者層が行う独断的な政治。被支配者(国民)の政治参加は認められない

独裁政治:国民が認めた、絶対的な権力を持つ個人、少数者、党派による政治体制。もともとの身分差を前提としていない

教科書にみる「専制」の記述

ちなみに、『もういちど読む山川世界史』で「専制」という言葉が使われているのは、「第1章 古代の世界」です。具体的には、次のように記述されています。

コンスタンティヌス帝<位306~337>はふたたび帝国を統一し、都を東方のコンスタンティノープル(ビザンティウム)に移した。帝は専制君主政を確立し、身分や職業の世襲化をはかった。

「身分や職業の世襲化」というのはまさに、“区別された身分”を表すものと言えそうです。世襲という点もまた、専制政治を象徴するポイントになる、というわけです。

ここで、「君主制」という言葉の定義も見てみましょう。次のとおりです。

君主制(monarchy)

世襲の君主により統治される政治形態。君主の専断に委ねられる絶対君主政体と、制度によって制約される制限君主政体、とりわけ憲法の制限下に置かれる立憲君主政体とに分かれる。王政。

このように、専制政治が身分的な区別や世襲を前提にしているということは、主権が人民にある「民主政治」とは言えそうにありません。

一方で、独裁政治の場合、あくまでも“国民が認める”というプロセスを踏んでいます。そのため、民主政治に含まれるものと解釈されています。

もういちど読む山川世界史

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