過去の記事において、自らの専門性を高めるために“研究”することの重要性について述べました。実際に研究を行うためには、「テーマ」を選ばなければなりません。
研究テーマを選ぶのは、そう簡単なことではありません。とくに、その対象に多大な時間と労力をかけざるを得ない研究であればなおさらです。
では、どのようにして、自分にとって最適な研究テーマを見つければいいのでしょうか。そのためのヒントを、いくつかの書籍から紹介します。
自分にあった最適な研究テーマを見つける方法
たとえば、研究・論文・レポートに関する書籍には、自分にあった最適な研究テーマを見つける方法として、次のような記述があります。
自分でうろうろしなさい
『創造的論文の書き方』(伊丹敬之)
どこから探したらいいかよくわからないというところから始まって、うろうろと悩みながら歩く。その悩みとそのプロセスで蓄積するものが人を育てる
悩みつつ、うろうろとさまよい歩く過程から、研究はスタートしていると考える。そうなると、テーマを探してさまようこと自体が、研究の第一歩であるとわかります。
また、次のようなポイントも列挙されています。
うろうろ効率化の原理
1.入り口は狭く、奥行きは深く
2.思考実験をスピーディに多く
3.不動点を意識する「いい」テーマとはなにか
1.不思議なこと、せめて面白いこと
2.一言で言える
3.少しの無理
4.10年はもつ
まずは調べよう
『社会科学系論文の書き方』明石芳彦
研究テーマを決める際には、事実・実態や既存文献を徹底的に調べ、何が未解決かを探り当てることが大事です。そのために、まずは、先行研究レビューを通じて関心事への理解を深めることが望まれます。
まずは、既存の文献や先行研究レビュー等を徹底的に調べること。そのうえで、何が未解決なのかを探ることが大事なのですね。
また、テーマを選ぶ基準もあるようです。
その基準は、自分が単に興味を持ったことだけでなく、他の人、とくに学術的な関心を持った人にも興味深いことでなければなりません。
好きこそ物の上手なれ
『論文の書き方マニュアル』花井等、若松篤
何に関心があるのかという点をはっきりさせておかなければならない。関心を持てる側面から取り組むよう心掛けることが大切である。
自らの関心からスタートするというのは、研究において重要です。関心がなければ、モチベーションもあがりません。
そして、自らの関心がどこにあるのかを探るための方策は、次の通りです。
「何に興味があるかといわれても……」という人には、今すぐ大きな書店か図書館に出かけてみることを勧める。どこの書店、図書館でも、ある程度、さまざまな分野別、著者別に本が棚に収められている。時間をかけてひと通り見てみよう。
自分から主体的に探しに行く
『思考を鍛えるレポート・論文作成法』井下千以子
素朴な疑問を大切に、資料を徹底して調べ、テーマが決定するまで、広げては絞り込む往復運動を繰り返す。
素朴な疑問から出発し、資料を徹底して調べていくこと。そして、テーマを広げては絞り込むという作業をくり返します。
また、よいテーマの基準は次の通りです。
よいテーマとは?
1.明確な動機づけがある
2.先行研究がある
3.明確な問いの形式で示すことができる
テーマ探しと文献探しは同時に
『卒業論文・修士論文作成の要点整理 実践マニュアル』滝川好夫
みなさんは「テーマを決めてから文献を見つける」と考えがちですが、実際の作業では、「文献を見つけながらテーマを決める」に近いかもしれません。テーマと文献はワン・セットです。
テーマを決めてから文献を探すのではなく、文献を探しながらテーマを見つけていくこと。テーマと文献は不可分ということですね。
そして、テーマ探しの出発点については次のように書かれています。
卒論・修論のテーマを設定するための出発点は「問題意識」です。みなさんは、きっと「もっと深く知りたいと思う疑問点」や「心を惹いた問題」をもっているはずです。
自分は何に関心があるのか?
『はじめての論文作成術―問うことは生きること』宅間紘一
それこそ思いつくままでよいのです。関心領域を言葉で表現してみましょう。じっとしていては何も浮かばないという人は、図書館(大きい書店でもよい)の書棚を巡って見ます。
じっとしているだけで、自分にあったテーマがひらめくということは少ないでしょう。やはり、自ら積極的に動くことが大切です。
また、関心領域は、いくつかピックアップしたうえで絞り込んでいきます。
選択した三つ程度の領域について基本資料を探し、これを仮読みして若干の知識を得た上で、最終的に一つの関心領域に絞ります。研究領域の決定です。
小さなトピックを見つけること
『はじめての研究レポート作成術』沼崎一郎
図書館へ行って、どの新聞社のものでも、何年のものでもいいですから、1年分の縮刷版12冊を閲覧用の机の上に並べ、1月1日から12月31日まで、すべてのページのすべての記事見出しを眺めていきます。
過去の新聞を1年分読むのは大変ですが、そうした過程を経て、テーマとすべきトピックが見つかるということもあります。
そして、知らないことを知りたいと思う気持ちが、研究意欲につながるのです。
1.知らないことを見つける
2.記事の数が多い順に並べる(社会的な重要度)
3.小さな2~3個選ぶトピックを選ぶ
4.社会全体にとって大事な大きなテーマに結びつける
5.テーマに関する
まとめ
各書籍の内容をまとめると、自分にあったテーマを見つけるためのヒントは次の通りです。
- 自らの興味・関心にフォーカスする
- 大型の書店や図書館に行き、徹底的に資料を調べる(+ネットでも)
- 小さなトピックと大きなテーマを意識する
- 学術的な研究価値(未解決の分野・社会的意義など)に着目する
- 主体的に行動する
このようなポイントをふまえたうえで、ぜひ、自分にあったテーマを見つけてみてはいかがでしょうか。