なぜ、好きなことを仕事にすると面白くなくなってしまうのか?|期待理論と内発的動機づけ

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趣味や好きなことを仕事にしてしまうと、やがて、これまでのような楽しさやおもしろさを感じられなくなってしまう。そのような経験をされたことがある方もいるかもしれません。

では、なぜ好きなことを仕事にするとおもしろくなくなってしまうのでしょうか。その背景にあるのは、“金銭的報酬”がもたらすモチベーションの変化です。

こちらの記事では、とくに金銭的報酬という観点から、「モチベーションの期待理論」「内発的動機づけ」について考えてみましょう。

「モチベーションの期待理論」とは

1964年にビクター・H・ブルーム(V.Vroom)が提唱した「モチベーションの期待理論」。その内容は、“どのような要因が従業員のモチベーションに影響を与えるのか”を明らかにしたものでした。

具体的には、モチベーションは次の公式で求められるとされています。

努力に対する報酬への期待(主観確率)×報酬に対する価値観(誘意性)

つまり、「①どれほどの努力によって報酬が得られるか」と、「②その報酬に対してどれだけ価値を感じているか」の2点によってモチベーションが変化するということです。

ポイントは、いずれも“主観的な判断である”ということ。人によって努力の度合い(大変さ)は異なりますし、報酬に対する感じ方(魅力度)も違います。

仕事ひとつとってみても、熟練者にとっては簡単かもしれませんが、初級者には難しい。また、お金が欲しい人は金銭的報酬のために頑張れますが、そうでない人もいます。

「内発的モチベーション理論(内発的動機づけ)」とは

次に、「内発的モチベーション理論(内発的動機づけ)」についてみていきましょう。これは、1975年にアメリカの心理学者エドワード・L・デシが提唱したものです。

まず、モチベーションを「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」とに分けて考えます。それぞれのきっかけは次のとおりです。

・内発的モチベーション:有能感・自己決定感
・外発的モチベーション:金銭的報酬や賞賛など

有能感とは、「自分には能力がある」と感じられること。自己決定感とは、「自分で決めている」という感覚です。これらを得られるものが、内発的モチベーションにつながります。

一方で、外発的モチベーションは、金銭的報酬や他人からの賞賛など、外的要因がきっかけとなるモチベーションです。つまり“外発的”な動機、というわけです。

金銭的報酬がモチベーションに及ぼす影響

上記をふまえたうえで、金銭的報酬がモチベーションに及ぼす影響について考えていきましょう。

まず、趣味や好きなことというのは、内発的モチベーションと深く関係しています。つまり、有能感を得られたり、自己決定感があるために行っている可能性が高いものです。

このことを、期待理論に当てはめて考えてみると、次のとおりです。

◯◯をすると努力を感じずに楽しめる(有能感・自己決定感)

×

もっと楽しいことがしたい(有能感や自己決定感を得たい)

つまり、「◯◯(趣味や好きなこと)をすると高確率で楽しめる(有能感や自己決定感を得られる)。だからやりたい」となるのです。

ここに、金銭的報酬が入り込むとどうなるでしょうか。次のとおりです。

◯◯をするとお金がもらえる(金銭的報酬)

×

お金がほしいからやる(外発的動機)

金銭的報酬のインパクトは強烈です。それまでは内発的モチベーションによって行っていたことも、金銭的報酬が発生することで、目的そのものが金銭へと移行してしまいます。

そうするとどうなるのか。金銭的報酬がもらえなかったり、あるいは満足のいく水準でなくなってしまえば、モチベーションが低下してしまう(やる気がなくなる)ことになります。

まとめ

本来であれば、行動そのものが目的であったにも関わらず、そこに金銭的報酬が発生することによって、結果的に内発的なモチベーションが削がれてしまう。なんとも皮肉なことです。

では、どうすればいいのでしょうか。やはり、外発的モチベーションだけに頼るのではなく、内発的モチベーションを得られるような工夫をすることが大切でしょう。

もちろんお金は必要です。しかし、必要以上にお金を得てしまうと、やがてそれ自体が目的になってしまう。要は、適切なバランスを意識することが大事だと思います。

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コメント

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