起業を志す者にとって、至上命題となるのは「成功できるかどうか」に尽きます。最初から失敗するであろうことを見越して起業する人などいません。
※純粋な「起業」の場合。節税対策など特殊な事案は除く
では、起業における成功および失敗とは何を意味するのでしょうか。また、起業を成功させるために必要なものは何でしょうか。考察していきます。
起業における「成功・失敗」とは
起業の成功を定義すると、大きく次の3つの段階に集約できます。
成功1.立ち上がる
成功2.最初の利益がでる
成功3.継続できるorスケールする
同様に、どの段階においても次のような失敗の可能性があります。
失敗1.立ち上がらない
失敗2.利益がでない
失敗3.継続できないorスケールしない
ただ、一般に「起業の成功・失敗」と言われるとき、成功および失敗の定義は「3.継続できるorスケールする」に焦点がおかれています。
このことは、成功or失敗と判断されるもとのデータが「開廃業率」「継続率」「生存率」「利益率」などということからも明らかです。
立場の違いから考える起業の成功
次に、立場の違いから起業の成功について考えてみましょう。
起業当事者にとっての成功
起業当事者が「何を求めているのか」によって、成功の定義は異なります。
たとえば、単純に社長という地位に就きたいのであれば「1.立ち上げ(会社の設立)」が成功になりますし、事業という観点からは「2.最初の利益」も大きな成功体験になるでしょう。
一方で、「大きく稼ぎたい」「社会にインパクトを与えたい」のであれば、やはり、「3.継続できるorスケールする」ことがいわゆる起業の成功となります。
ステークホルダー(投資家・取引先・従業員)にとっての成功
投資家の目的は、究極的には出資に対するリターンです。つまり、「1.立ち上げ(会社の設立)」も「2.最初の利益」も単なる経過にしかすぎず、「3.継続できるorスケールする」ことが本来の意味における成功となります。
取引先あるいは従業員にとっても、会社が継続し、スケールすることでメリットが得られるため、成功の定義は「3.継続できるorスケールする」となります。
社会(行政)にとっての成功
行政が起業を推進する理由は、おもに「経済の活性化」「雇用の拡大」「イノベーションの創出」にあります。とくに、働き方の多様化や地方の活性化を促進させるために、起業がカンフル剤になる可能性があるので。
そうなると、定点的な数値として「1.立ち上げ(会社の設立)」もひとつの成功と言えそうですが、最終的な目的を達成するには「3.継続できるorスケールする」が欠かせないということになります。
起業の成功者が増えない理由
実は、「起業のハードルが下がっている」という言葉の根拠になっているのは、「1.立ち上がる」という部分が規制緩和されているだけなのです。
具体的には、2006年2月に施行された新会社法により、これまで最低資本金が1,000万円必要であった株式会社が資本金1円からつくれるようになりました。
ただ、一向に「起業の成功確率が高まっている」とは言われません。なぜなら、起業の成功は会社を立ち上げることではなく、「継続orスケール」にあると認識されているからです。
そして、すべての段階に言えることですが、起業の成功を妨げるものは起業家自身が「あきらめてしまう」ことに他なりません。起業における失敗の本質はここにあるのです。
どうすれば起業の成功者を増やすことができるのか?
では、どうすれば起業の成功者を増やすことができるのでしょうか。ポイントは、各ステージごとに必要となるものを、スムーズに提供できる土壌を整備することにあります。
起業のステージ、およびステージごとに必要なものは、おおむね次のとおりです。
ステージ0.起業に無関心
・きっかけ
・原体験
・注目、興味
ステージ1.起業を意識(ニュートラル)
・マインドセット
・経営知識(基礎)
・事例集(成功・失敗)
ステージ2.意識してから起業まで(アイデア)
・問いと仮説
・ビジネスモデル
・事業計画書
ステージ3.起業時(立ち上げ、シード)
・仲間
・ファイナンス
・資金調達①
ステージ4.最初の利益まで(アーリー)
・グロースハック
・資金調達②
ステージ5.継続と発展(ミドル、レイター、IPO)
・経営学(MBA)
・マネジメント体制の整備
ヒト・モノ・カネ・ジョウホウの流れをつくること
御覧いただいたとおり、どの段階にも必要な知識やツール、人脈があります。ですので、大切なのは「自分たちは今どこにいるのか」「どこを目指すのか(なぜやるのか)」を意識することです。
そもそも独立・起業における究極的な失敗は、起業家自身が「あきらめてしまう」ことです。たとえ事業がうまくいかなくても、方針転換やピボットにより再起は可能。
だからこそ、それぞれのステージにおいて「ヒト・モノ・カネ・ジョウホウ」の流れをつくることが欠かせないのです。