なぜ起業には「社会のために」という大義が必要なのか?

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 起業の成功要因のひとつに、“大義があるかどうか”が挙げられます。

 大義とはつまり、「理念」や「ビジョン」と言い換えてもいいでしょう。それらを掲げることが、起業の推進力となるわけです。

 しかもその大義は、大きな方向性として、“社会のために”といった要素が含まれているべきとされています。つまり、起業が社会貢献につながっているべき、ということです。

 では、なぜ起業の大義には、“社会のために”という要素が含まれているべきなのでしょうか。本書『次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説』より学んでいきましょう。

起業家にとっての壁

 環境の変化にともない、私たちは常に、変化していかざるを得ません。ダーウィンの言葉にもあるように、生き残るのは強い者ではなく、“変化に対応できる者”です。

 その変化をもたらす者こそ、起業家と言えるでしょう。起業家は、現存する問題に取り組み、課題解決を目指します。そしてその先には、社会的な変化があるわけです。

 ただ一方で、社会を構成するすべての人が、変化を望んでいるとは限りません。現在の状態を守りたいと考えている「保守層」も、数多く存在しています。

 そしてその保守層の中には、現在の体制や仕組みによって安定的な利益を得ている人も少なくありません。そのような人々は、変化を望むどこか、むしろ大いに反対します。

 起業家にとって、その保守層(体制側)を納得させられるかどうかが、事業の成長を阻む壁となっており、またそれが、大きな成功をつかむ鍵でもあるのです。

なぜ起業には「社会のために」という大義が必要なのか?

 ここであらためて、冒頭の問いに立ち返ってみましょう。

 起業にするにあたり、「社会のために」という大義が必要な理由は、本書で次のように説明されています。

1.保守層と折り合いをつけるため

2.ゲートキーパーに出会うため

3.成功の果実を分けてもらうため

 それぞれの項目について、さらに詳しく見ていきましょう。

1.保守層と折り合いをつけるため

 どんなに優れた技術を開発しても、それを社会に浸透させるためには、人々から一定の支持を得なければなりません。

 とくに保守層からは、受け入れてもらうか、あるいは真正面から抵抗されないよう、折り合いをつける必要があるのです。

 そのときに、「社会のために」という大義があれば、起業家としての才能をつぶされることなく、活動を継続することができます。

2.ゲートキーパーに出会うため

 起業はひとりではできません。内部・外部とわず、協力者が必要です。

 そして、その協力者を獲得するためにも、「社会のために」という大義が大きな役割を担うこととなるのです。

 とくに、ゲートキーパーと呼ばれる有力者と出会い、強力してもらうためには、「社会のために」という大義があるかどうかが、ひとつのポイントになります。

3.成功の果実を分けてもらうため

 起業家として、成功の果実を得るためには、「社会のために」という大義を有している必要があります。

 そもそも、「自分のために」「お金のために」という人に対して、社会は協力してくれません。むしろ、忌避されてしまう可能性すらあるでしょう。

 その点、起業家がもつべきスタンスとしては、社会をよい方向へ導き、革新を果たした結果として「せめてこれくらいはくださいよ」という姿勢が求められるのです。

まとめ

 あらためて、本書で説明されている、起業家に「社会のために」という大義が必要な理由は、次のとおりです。

1.保守と折り合いをつけるため

2.ゲートキーパーに出会うため

3.成功の果実を分けてもらうため

 これらは、TEDでも有名なサイモン・シネック氏の動画「優れたリーダーはどうやって行動を促すか(Whyからはじまるゴールデンサークル)」に通ずるものがありそうですね。

 また、これらの理由以外にも、辛さや苦しさを乗り越えるために、原動力となる大義が必要である、とも言えるかもしれません。

 そもそも起業というのは、失敗の連続です。それこそ、七転び八起きが通常です。ファーストリテイリングの柳井社長でさえ、『一勝九敗』という本を出しているぐらいですから。

 ただ、自分の内側から湧き出てくる動機があり、それが社会的な大義と関連していれば、周囲の強力を得つつ、辛さや苦しさを乗り越えられるかもしれません。

 その他にも本書では、社会の仕組みについて深く理解するためのエッセンスがあふれています。興味のある方は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説

目次

01 社会とは何か
02 社会はどのように発展していくのか
03 経済とは何か
04 四つの階層のコーン
05 マダルの虎――人間の常識が及ばない世界
06 価値観とは何か
07 政治とは何か
08 社会の価値観を作っているのはだれか
09 社会を変革するのはだれか
10 仕事とは何か
11 起業家になろうとする君へ
12 科学者、技術者になろうとする君へ
13 企業や役所などの大組織で働こうとする君へ
14 教育、メディア、宗教で働こうとする君へ
15 政治家になろうとする君へ(1)
16 政治家になろうとする君へ(2)
17 世界で一番のトマト――幸せな生き方への手がかり

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