『クロカン 』や『ドラゴン桜 』で有名な漫画家・三田紀房氏の著書『プレゼンの極意はマンガに学べ 』。本書は、プレゼンの極意というよりも、“マンガの極意”をたっぷり学べる良書です。
そこでこちらの記事では、本書の内容を「理論編」「テクニック編」の2回にわけ、お送りいたします。今回は前編の「理論編」です。
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概論
・マンガの出来不出来を決めるのは、絵やストーリーではなく「演出」である。
→コマ割り、構図、絵と文字のバランス、効果線、キャラクター設定、物語の構成など・「引き」の効果を最大限生かすために、よほどのことがない限り、休載しない
・なぜマンガを読みふけってしまうのか→興味が途切れないから→マンガのもつ構造→買わずにはいられない、ページをめくらずにはいられない
概論では、「なぜマンガは読まれるのか」について解説しています。とくに演出の部分である「引き」や「マンガの構造」については、勉強になる部分がたくさんあります。
マンガの企画(企画立案)
1.企画立案とは「新規出店」である
①世のなか全体の空席を探す→世間の流れ・常識の逆をいく
②その雑誌における「空席」を探す(ニーズの把握)
③人気店を分析する(競合分析)・「不安産業」は必ず生き残る
→銀行、保険。医療、健康。教育。・正論の逆をいく
2.流行とは「残像」である
3.どでかいゴールを用意しろ
4.アイデアが降りるのを待つな・そのジャンルの王道を徹底的に分析し、盗めるものを盗み、自分のものにする
→王道と市場の分析。空席の発見。そのうえで、王道になにかをかけあわせる5.結論から先に考えろ
・新連載の第1話は引きのコマ、つまりいちばん最後のコマから考える
→だれが登場するのか、そのキャラクターになにを語らせるのか・最後にどでかいゴールを設定して、そこから逆算するようにプランを練る。世のなかの空席を探しあて、ありえないほど大きなゴールを打ち立てる
→企画が思い浮かばないのは空席が見えていないから。企画が動きださないのはゴールが見えていないから
次にマンガの企画についてです。世の中の空席を探し、雑誌の空席を探し、競合を分析する。ウケるマンガの企画について、とても理論的に説明しています。
マンガのポイント(資料作成)
1.謎という名のフックをかけろ
・第1話にはさまざまな「気になる謎」をちりばめる。大小さまざまな謎。
2.議論の行き先を明示せよ
・大きなゴールをふまえ、小さなゴールを設定する
→ただし説明しすぎない(マンガの第一話を研究するべし)・連載のどのあたりで大きく話を盛り上げて、どれくらいの速度で急降下し、最終的に何ヶ所のカーブを曲がって終了するのか。ジェットコースター的な設計図が必要。
3.7割のリアリティを守れ
・「勝つための根拠」としての特訓シーン
・非常識は常識の文脈に乗せてこそ光を放つ4.見せ場は3倍オーバーに描け
5.企画の「ビューポイント」を設置せよ
こちらでは、マンガ作成時のポイントについて解説しています。「謎によるフック」や「議論の行き先」、「7割のリアリティ」など、具体的な手法には舌を巻くばかりです。
マンガは省略のメディアである(理解促進)
1.ベタであることを恐れるな
・コマ割り、吹き出しの位置や量など、古典的手法に従う
2.「リズム」をもたせろ
3.要素を引き算で考えろ・「何を入れるか」ではなく「何を削るか」と考える
・コマを削り、絵を削り、セリフを削る→必要な部分は丁寧に、詳細に描き込んでいく(濃淡)4.先に大枠を決めてしまえ
・「大ゴマ」を先に考える。四コマの「起承転結」のようなイメージ
→ex.起は2ページ、承は8ページ、転は12ページ、結は18ページ5.顧客を明確化しろ
→読者の声を聞く、読者を明確化する
売れてるマンガ家だからこそ言える、「ベタを恐れるな」という言葉。つい忘れがちですよね。まずは型にはまること。そのうえで型を破る。やはり基本が大切です。
敵を味方にする(壁とライバル)
1.企画を「ひと言のセリフ」で説明しろ
・マンガのコンセプトを決めるセリフをつくる
→ex.「野球がうまくなりたかったら、俺に金を払え!」「金ならある」「教えてやる! 東大は簡単だ」2.自分だけの「決めパターン」をつくれ
・マンガ家とは芸能プロダクションの社長である
→稼ぎ頭となるキャラクータを見つける、所属タレントを抱えておく ex.マリオ3.ライバルは魅力的に描け
・キャラクターには謎を残しておく。細かな設定は披露しない
4.大きな壁に挑み続けろ
5.自分自身が最大のファンになれ・絶対に締め切りを破らない
・ほかの誰よりも自分自身が楽しむ
最後はライバルについて。主人公と同様に、ライバルもまた魅力的なキャラクターでなければなりません。また、大きな壁を設定する、自分がファンになる、なども言及しています。
まとめ
マンガをビジネスとして割り切ることで、新しい視点が生まれてくる。本書を読むと、マンガ家としてやっていくうえで、勇気をいただけるかと思います。
次回は、「テクニック編」をお送りします。