チャレンジできる土壌が、徐々に構築されているのだろうか。
今、日本では、面白いベンチャー企業が次々に誕生している。
もはやベンチャー企業とは呼べないかもしれないが、「オイシックス株式会社」もそのうちのひとつだ。ご存知の方も多いと思うが、インターネットで農産物を販売する企業のさきがけである。
創業13年、売上高145億、会員数7万3千人、従業員数170名。これでまだ、成長の道半ば、いや、道を歩み始めたばかりだと言うのだから末恐ろしい(「ライフ・イズ・ベジタブル―オイシックス創業で学んだ仕事に夢中になる8つのヒント」本文より)。
ただ、ここまで成長する過程は、必ずしも順風満帆ではなかった。孤独な資金調達。倒産の危機。「売れない・買えない・金ない」の三重苦。そういった苦難を乗り越えて、成長してきた。
特筆すべきなのは、そういった危機を、社員一丸となって“楽しんで”乗り越えてきたことだろう。
そして、その道程から、「スタートアップを成功させるための3つの秘訣」が読み取れる。
目次
熱意
最悪のできごとに見舞われても、信念を失わないこと。私は、自分の仕事を愛してやまなかったからこそ、前進し続けられたのです。皆さんも大好きなことを見つけてください。仕事でも恋愛でも同じです。仕事は人生の一大事です。やりがいを感じることができるただ一つの方法は、すばらしい仕事だと心底思えることをやることです。そして偉大なことをやり抜くただ一つの道は、仕事を愛することでしょう。
これは、かのスティーブ・ジョブズが行った伝説のスピーチの一節だ。熱意があれば、苦難を乗り越えることは辛くない。むしろ、楽しめるものである。オイシックスも、そのようにして成長してきた。
もし熱意がなかったら、どうしてベンチャーキャピタルに思いを伝えられようか?
もし熱意がなかったら、どうしてインターネットを知らない農家の人に、利便性を伝えられようか?
もし熱意がなかったら、どうしてあきらめない気持ちを持ち続けることができようか?
熱意があることは、スタートアップを成功させるための重要な秘訣などではない。スタートアップを成功させるための“必須事項”なのだ。そして、その熱意こそが、人の心を動かすのだ。
『考えただけで、ワクワクして興奮した』
チーム
「経営管理の96%は、ルーティーン的な定例反復業務であることを、ゆめ忘れてはならない」
成功し、真に効果性を発揮できる有効なチームを社内で数多く形成することは、決して一朝一夕でできるものではない。 何年もかかるのに、チーム・ビルディング演習をやればインスタントにチームができると勝手に思い込んでいる。
(『ドラッカー名言録』より)
スタートアップの頃は、資金も、人脈も、実績もノウハウもない。そこのあるのは「チーム」だけだ。だからこそ、チームが最大限の力を発揮できるように行動しなければならない。
時間の使い方、生産者への対応、ユーザーとのコミュニケーション。そういったすべてのことを、チームが一丸となって行なう。そのなかで、成長していく。
最近では、「絆」という言葉が多用されているむきもあるが、本当の絆とは、苦楽をともにし、乗り越えていくなかで、少しずつ醸成されるものなのだろう。一朝一夕ではなく、徐々に、だが確実に、生まれてくるものを大切にしたい。
『チーム全体が背伸びすることで、チーム全体が成長する』
挑戦
かつて私も、何度か人生の岐路に立った。
どっちの道が正しい道かは、判断できた。
いつも判断できた。だがその道を行かなかった。
なぜか。それが困難な道だったからだ。
(『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』より)
人は、目先のリスクを避けることはできても、「挑戦しなかったことに対するリスク」には鈍感なものだ。しかし、かぎられた人生のなかで、挑戦しないことこそ、もっとも“無念”なことではないだろうか。
たとえ挑戦し失敗しても、あきらめなければ道は続く。何かを失っても、得られたものを大切にして、また獲得するべく行動すれば良い。それが、望むべく人生の姿なのではないだろうか。
そのことは、本文にある次の言葉に集約されている。
『人生における最大のリスクは、何も夢中にならないまま人生が終わること』
まとめ
成功とは、とてもシンプルな法則のもとにある。読後は、そのことにあらためて気付かされた。
- 「熱意」
- 「チーム」
- 「挑戦」
この3つの言葉を、いつまでも自分に、そして仲間に、問い続けたいと思う。
お付き合い、ありがとうございました。多謝。
※オイシックスの企業理念(抜粋)※
<存在価値>
より多くの人が、豊かな食生活を簡単に送れるようなサービスの提供を行なう(豊かな食生活とは、安全なものを安心して食べ、美味しさに感動し、それを家族や友達と楽しく共有でき、結果健康なからだになる食生活のこと)
<経営姿勢>
- お客様一人一人の食生活のシーンを細部までイメージし、常にお客様視点(not生産者、not専門家)にたち繰り返し利用していただける価格で、豊かな食生活になくてはならないサービスを設計し提供する
- お客様が食べる時点での美味しさの実現のプロフェッショナルを目指し、流通過程のあらゆる面を改善する
- 社員がお互いを信頼・尊敬し、自分たちの仕事・サービス・会社に誇りをもち、エキサイティングな日々を過ごせるようにする
- 常識を疑ってどんどんチャレンジし、決してあきらめることなく解を探し、進化しつづける
- たゆまぬ仕組み改善、及び、新しい付加価値の開発により、食品小売業としては最大レベルの利益率を実現する
<行動規範>
- 強さの源泉は成長力
- お客様を裏切れ
- ベストを尽くすな、Missionを成し遂げろ
- 早いもの勝ち、速いもの価値
- サッカーチームのように
- 前例なない。だからやる