「想像力がない!」「アイデアが出てこない!」。そのような悩みを抱えている人は多いです。とくに論理的な思考が得意な人ほど、物事を論理や常識で考えてしまい、斬新なアイデアや発想を生み出せずに苦労しています。
考えても考えてもアイデアが出てこないとき、「自分には想像力(創造力)がないんだ……」と落ち込むこともあるでしょう。しかし、ちょっと待ってください。あなたには本当に、想像力がないのでしょうか。
そもそも想像力とは、ものごとを想像しようとする能力や、それに伴う心の動きのことです。カント哲学では、「感性と悟性を媒介する能力」などと表現されていますが、要するに感覚と思考をつなぐスキルのようなイメージでしょうか。
子どもの頃は、誰もが豊かな想像力を発揮していたかと思います。なぜなら経験や知識が乏しく、知らないことが多いため、左脳ではなく右脳でものごとをとらえていたからです。それはまさに、想像することに他なりません。
しかし、成長にともなってさまざまな経験や知識が積み重なっていくと、発想はどんどん論理的になり、生み出されるものは事実や常識がベースとなります。それは、創作だけでなく、普段のコミュニケーションでも同様です。
それはすなわち、現代人のごく一般的な成長過程と言えるのですが、こと創作や想像力という観点からすると、必ずしも「成長」とは言えません。むしろ、経験や知識が蓄積された結果、想像力が発揮されるシーンは限られていくでしょう。
その結果、ものごとを想像するのではなく、経験や知識をベースにした既存のもので置き換えようとする。それでは、想像力が養われるわけはなく、また常識的・一般的な思考しかできなくなるのも無理はありません。
そこで、想像力を発揮するには、意識的に想像する必要があります。何ら努力をしなければ、いつまで経っても想像力が養われる(戻ってくる)ことはなく、知識や経験を積み重ねたように、想像力もまた訓練によって積み重ねていく必要があるのです。
手っ取り早い方法としては、「もし、◯◯だったら」と考えてみることが挙げられます。強制的に想像力を発揮させるために、とくに日常では起こり得ない(確率が低い)「もし、◯◯だったら」を考えてみるといいでしょう。
たとえば、「もし明日、地球が滅亡するとしたら」というのはわかりやすいかと思います。あり得ないことではありますが、明日、地球が終わることを真剣に考察し、想像力を発揮して「何が起こるか」「自分はどうするか」を考えてみるのです。
事実、例を挙げるまでもなく、「もし明日、地球が滅亡するとしたら」という発想から生まれた作品はたくさんあります。映画でも、小説でも、それこそドラマでも、似たような発想から優れた作品が生まれています。
当然、その裏側には作者の想像力があるのですが、その想像力を生むきっかけが「もし明日、地球が滅亡するとしたら」という問いにあることは間違いありません。幼稚な発想などとバカにしていたら、いつまで経っても想像力など養われないのです。
応用すればするほど、「もし、◯◯だったら」という問いは万能だとわかります。「もし、過去にタイムスリップしたら」「もし、あの人と入れ替わったら」「もし、空を飛べたら」「もし、超能力を使えたら」など、問いのバリエーションは無限に存在します。
つまり、「もし、◯◯だったら」という問いをあらゆる角度から検討し、日々、自分の頭で考えていくと、それが想像力を養う土台となるでしょう。シンプルな方法論ではありますが、効果は絶大です。少なくとも、固くなった頭をほぐす効果は間違いなくあります。
さらに、「もし、◯◯だったら」という問いをどのように発展させるかも、想像力を発揮する訓練になります。ありきたりの問いでも構いませんが、くり返しているうちに、「あれはどうだろう」「これはどうかな」と発想が広がっていきます。
想像力の訓練もまた、こうした地道な繰り返しをベースにしています。単純な作業をどれだけ繰り返せるかによって、その後の成果も変わってきます。ぜひ、想像力を養うために、日々、「もし、◯◯だったら」の問いを繰り返しましょう。
■まとめ
・想像力は知識と経験で衰える
・想像力を養うには日頃の訓練が大事
・「もし、◯◯だったら」の問いが想像力を育む