誰にでもやる気が出ないときはあります。「今日はなんだか調子がわるい」「思うように体が動かない」「なんだか気分が優れない」。そのようなときは、思い切って休息をとってしまうのもひとつの手です。あるいは体が「休みなさい」と言っているのかもしれません。
しかし、たとえそうだとしても、休めない人もいるでしょう。締切が間近に迫っており、どうしても片付けなければならない人は、思い切って休むこともできません。たとえやる気が出なくても、どうにかして仕事を処理してしまわなければなりません。
では、やる気がでないときに、どうすればやる気を出すことができるのでしょうか。やらなければならないのに、どうしてもやる気が出ない人のために、やる気を出すための方法について具体的に解説していきましょう。
■なぜやる気が出ないのか?
そもそも、なぜやる気が出ないのでしょうか。「体がダルい」「気分が優れない」など、理由はいくつかありますが、大きく分類すると「身体的なもの」と「精神的なもの」に分けることができます。
身体的な理由としては、単純に、体に疲労が蓄積していることが考えられます。前日までに十分休息をとれておらず、疲れがたまっているために、思うように体が動かない。そのようなとき、やる気を引き出すのはむずかしいものです。
一方で、精神的な原因としては、取り組まなければならない仕事に対するネガティブな思想が挙げられます。わかりやすく表現すると「その仕事が嫌い」「その業務について考えたくない」などの感情があると思われます。
このように、やる気がでない理由を「身体的なもの」と「精神的なもの」に分け、それぞれの原因んいアプローチしていくと、やる気は自然とわいてきます。大切なのは、意味もなく悩み続けるのではなく、原因に対処することです。
■肉体的な原因への対処法
まずは、肉体的な原因への対処法について考えてみましょう。先ほど、肉体的な原因について「十分に休息をとれていないため」と述べました。その結果、体に疲労が蓄積しており、全身がダルく感じられ、やる気が出にくい状態です。
このようなときにできる対処法は、主に3つあります。具体的には「①全身をほぐす」「②昼寝を活用する」「③強制的にエネルギーをチャージする」の3つが挙げられます。それぞれのやり方は次のとおりです。
①全身をほぐす
疲労が蓄積している状態は、筋肉が凝り固まっているために、血流が滞っていると考えられます。そのため、全身の筋肉や関節をほぐし、血流を促進させることが大切です。そのときに活用できるのが「ストレッチ」です。
ストレッチにはさまざまな方法があり、負荷もそれぞれ違うため、自分の年齢や普段の運動習慣、あるいは健康状態に応じて最適なものを取り入れましょう。足腰をうまく伸ばせない人は、ラジオ体操でも構いません。
大切なのは、無理に他人が実践しているストレッチや体操を真似しないこと。それぞれ、自分に合ったものは異なります。簡単な屈伸運動や伸びだけでも構いません。今、自分ができるストレッチや体操で、全身をほぐしてみましょう。
②昼寝を活用する
ストレッチや対象など、ゆるめの運動で血流を促進しても疲労が抜けない場合は、思い切って寝てしまいましょう。ただし、普通の睡眠と同じようにしっかり寝てしまうのではなく、短い時間で起きる昼寝を活用してみてください。
ポイントとしては、寝る前にカフェインをとること。目を休めること。そして、1回あたりの昼寝を15〜20分で調整してみましょう。そうすることで、短時間の睡眠でもスッキリと起きられ、さらに疲労が軽減します。
とくに睡眠不足によって目の疲労がたまっている人は、ホットアイマスクなどを活用し、目を休めることに注力してください。短時間でもしっかり目を休めると、頭がスッキリして、仕事に対する活力がわいてきます。
③強制的にエネルギーをチャージする
ストレッチや体操、昼寝でも肉体的な不調がある場合は、強制的にエネルギーをチャージしましょう。この場合のエネルギーは、「炭水化物」「カフェイン」「アルギニン」など、活力を引き出す栄養素を含みます。
普段の食事では、このような短期的に活力を生み出すエネルギーを上手に摂取することができません。とくに、ご飯やパン、麺類などの主食は、糖質に偏っているため、エネルギーになるどころかむしろ内蔵疲労を引き起こします。
そこで、栄養ドリンクやエナジードリンクを活用しましょう。栄養ドリンクやエナジードリンクにはさまざまなものがありますが、オススメは「モンスター」です。個人差はありますが、他のドリンクと比較しても、短期的に活力を引き出す効果があります。
■精神的な原因への対処法
次に、精神的な原因への対象法についてもみていきましょう。すでに述べているように、精神的な原因は、取り組まなければならない業務に対するネガティブな心理です。それを排除するか、乗り越えなければ、やる気はでてきません。
そこで精神的な原因への対処法は、3つのステップで行っていきます。具体的には「①対象を見つめる」「②ネガティブな感情を言語化する」「③ポジティブな言葉に変換する」という3つの段階を経て、認識を変えていきます。
①対象を見つめる
ファーストステップは「対象を見つめる」です。取り組まなければならない仕事から目をそらすのではなく、まずはフラットな視点で対峙してみましょう。無理に意気込むのではなく、リラックスして対象と向き合うことが大切です。
心がザワついている状態だと、取り組むべき仕事を冷静に見つめることができません。また、論理ではなく感情で物事をとらえてしまうため、どうしてもバイアスがかかってしまいます。そのバイアスを排除するために、心を落ち着けましょう。
具体的には、背筋を伸ばし、深呼吸をしたうえで、リラックスしてこれからやるべきことについて考えてみます。頭の中で考えるだけでなく、具体的な業務内容を、紙に書き出してみてください。そのようにして、物理的に対面するのが効果的です。
②ネガティブな感情を言語化する
セカンドステップは「ネガティブな感情を言語化する」です。これからやらなければならない仕事に対峙したうえで、どのような感情・気持ちが生じているのか見つめてみましょう。つまり、自分の心に向き合うのです。
先ほどは、これから取り組む仕事と向き合いました。要するに「対象(外側)」との対話です。そこから、今度はその対象に取り組む「自分(内側)」と対話するのです。客観的な視点をもち、第三者の目から自分の心を分析してみましょう。
忙しい日々をおくっていると、静かに自分の内面と向き合う時間をとることができません。ただ、自分の心を無視し続けると、無意識にネガティブな感情が蓄積し、やる気がそがれます。そこで、自分の気持ちと向き合い、その気持ちを言語化してみましょう。
③ポジティブな言葉に変換する
言語化された言葉の多くは、ネガティブなものだと思います。抽象的な言葉としては「面倒くさい」「やりたいと思わない」「別のことがしたい」などがありますが、これらをさらに掘り下げて、具体的な言葉にしましょう。
ポイントとしては、「なぜ面倒くさいのか?」と自分に問うことです。問いを重ねていくと、モヤモヤしていた感情が具体的なものとなり、実は、自分が思っていたほど億劫ではないと気づけます。そのうえで、感情の言葉を変えていきましょう。
たとえば、「やりたいと思わない」という言葉になぜをくり返し、「どうすればやりたいと思えるのか?」と問いながら、「やりたくないけど、自分にはできる。その能力がある。必要とされている。だからやろう!」と変えてみるのです。
■肉体的・精神的なアプローチから見えてくること
このように、やる気が出ない状態を肉体的・精神的な側面からアプローチしていくと、ぼんやりとしていた感覚がクリアになっていきます。そのときに気づくのは、本当の、自分自身の姿であり気持ちです。
どういうことかというと、「やる気が出ない」ということ自体が、現状を正しく認識しようとすることから逃げている状態なのです。つまり、より一般的で分かりやすく、またラクな認識へと逃避しているのです。
原因をきちんと掘り下げるのではなく、なんとなくの感覚と、なんとなく使われている言葉で現状認識をした結果、「やる気が出ない」と表現しているだけ。たしかにそれはラクなのですが、何ら問題解決にはならず、自分を苦しめるだけです。
やらなければならない状態は、たしかに苦痛かもしれません。しかし本来、そのやらなければならない状態を生んだのは自分であり、少なからず、自分が望んでその状況を構築しているはずです。それを忘れてはなりません。
自責ではなく、他責で物事を考えるのは簡単です。それに、自分を追い込む必要がないため、いつでも気軽に行えます。しかし、そのような習慣が自分自身を苦しい立場に追い込んでいるということを、無視し続けることはできないのです。
■そもそも「やる気」の正体とは
ここまでの話をふまえて、あらためて、「やる気の正体」について考えてみましょう。どうやらやる気というものは、単純に肉体的な疲労や精神的なマイナス面が作用しているとわかったはずです。実は、このような認識が何よりも大事です。
つまり、やる気の有無というのはそもそも幻想であり、やらなければならないことをしっかりと見つめ、行動する主体である自分自身を整えることが、問題解決につながります。必要なのは、そのような実践的な対処なのです。
もっと言うと、やる気というのは、やる気がない人によって創造された虚構にすぎません。たとえば、自分が大好きな活動をするのに、やる気の有無を問題にするでしょうか。きっと、やる気のことなど考えずに、まず行動してしまうはずです。
そのように考えると、やる気が出るか出ないかを考えること自体に意味がないとわかります。大切なのは、やりたくないけどやらなければならないことがあり、それをやるのは自分の責任で、そのためにどんな工夫ができるのかを考えるべき、ということです。
あえて「工夫」という言葉を使いましたが、この場合の工夫とは、小手先のテクニックのことではありません。走り出すためにできること、言い換えれば「駆動力」となるでしょうか。「原動力」と言ってもいいかもしれません。
たとえば、スポーツで考えてみましょう。マラソンで10キロ走らなければならない人が、10キロという距離とコースを交互に見て「どうすれば走り切れるだろうか……」と考えるのは、単なる時間の無駄です。
そんなことを考えるより、とにかく走り出してしまったほうがいいでしょう。走っているうちに、1キロ、2キロと進んでいき、やがて10キロに到達するはずです。どうせ走らなければならないのなら、準備体操をしてすぐ走り出してしまったほうがいいのです。
しかも、実際に走り出してみるとわかるのですが、走れば走るほど体が温まっていき、徐々に走るのがラクになっていきます。もちろんペースを乱せば息が切れてしまうのですが、無理なく走れば辛さはやわらいでいきます。
そのようなときに人は「やる気が出ない」などと考えません。すでに走り出していますし、体が温まりながら着実に前へと進んでいます。やる気などすでにどうでもよく、あとは、ペースを守って走り続けるだけです。
このように走り出している人からすれば、スタート地点でウジウジ悩んでいる人を見て、こう思うことでしょう。「早く走り出してしまえばいいのに」と。実は、仕事でも同じです。つまり、悩むよりも、着手してしまえばいいのです。
具体的には、やる気について考えるより前に、手を動かしてしまうこと。パソコンを立ち上げ、ファイルを開き、とにかく小さな一歩を踏み出してしまうこと。そこから、集中力を阻害するものを排除しつつ、一定のペースで仕事をし続けるのです。
それだけで、やる気のことを考えることなく、徐々にエンジンがかかっていきます。そのような状態になれば、あとは自動的に仕事が進んでいきます。駆動力としての第一歩を踏み出すことが、何よりも大事なのです。
■着手すれば自然とやる気が高まっていく
ひとたび仕事を進めてしまうと、自ずとゴールまで近づいていきます。ゴールの目前で仕事をやめてしまう人はいません。たとえ大きな業務を抱えていたとしても、「キリのいいところまで進めよう」と思うはずです。
そのような心理を利用して、「キリのいいところ」をたくさん用意しておくのもひとつの手です。具体的には、大きな仕事を小さく分類し、それぞれにゴールを設定したうえで、並行して作業を進めていくのです。
たとえば、ある書類を作成しなければならないとき。書類の完成を1つのゴールにするのではなく、全体の構成を10に分け、それぞれを書き上げることをゴールにするのです。そのうえで、1つ1つの作業を並行して行います。
作業を進めていくと、10の項目が徐々にゴールへと向かって進んでいきます。そのようなキリの悪い状態が続くと、途中で仕事をやめようという気にはなかなかなりません。やはり、続けていようと思うようになるのです。
しかも、仕事に着手していることによって駆動力が得られているので、仕事をやる前のようにやる気の有無で悩むことなく、とりあえずやっている状態を続けられます。手足を動かすことが脳に刺激を与え、ドーパミンが分泌されている状態です。
その結果、自然とやる気が醸成されていきます。逆説的ではありますが、行動しないで悩むよりも、行動してしまった結果として生じるのがやる気なのであり、気がついたときに高まっているのがやる気の本質なのです。
■次のやる気を引き出す「タイムキーピング法」
行動し続けることによって高まるやる気ですが、いったん行動を止めてしまうと、次の着手がむずかしくなる場合があります。とくに、「やる気が出ない」と悩み、なかなか着手できなかった作業ほど、次にはじめるのもむずかしいものです。
そのときに、キリの悪い状態でやめておくのもひとつの方法なのですが、別の工夫として、次に着手する時間を決めておくのもいいでしょう。具体的には、「①作業時間」「②休憩時間」「③開始時間」の3つを決めておきます。
作業時間とは、その作業をどのくらいするのか、ということです。一日の作業時間が決まっていることはあっても、1つ1つの作業時間を決めていないケースは多いです。しかしそれでは、いつ終わるのかわからず、集中力が持続しません。
そこで、作業単位で時間を決めておきましょう。「何時から何時まで」と時間を指定してもいいですし、「何分(何時間)」やると決めても構いません。いずれにしても、きちんと守れる時間を設定することが大切です。
次に、休憩時間も決めておきます。作業時間と同様に「何時から何時まで」「何分(何時間)」というように、休憩する時間を決めておきましょう。作業時間とのバランスを考慮して設定することが大切です。
また、休憩時間にすることは、軽い体操やトイレなど限られています。それらの時間を計測し、逆算して休憩時間を決めておけば、しっかりリフレッシュできるはずです。目安としては、5〜10分となります。
最後に開始時間も決めておきましょう。この時間に関しては、明確に「何時から」「何分後から」と決めておくようにしてください。もともと人間の意志というのは弱いものです。この時間になったら何が何でもやると決め、着実にルールを守りましょう。
これらの時間設定は、やる気に頼ることなく、仕事を継続させるための方法となります。仕事から勉強まで、あらゆる作業に使える方法なので、自分なりのペースを調整しつつ、積極的に活用してみてください。
■目標設定のポイントについて
やる気を高め、持続させるには「目標設定」も大事です。適切な目標を設定することができれば、やる気は自ずと高まっていき、また途切れることなく持続させられます。その点、目標は必ず設定するべきです。
ただ問題なのは、目標設定そのものがとてもむずかしいということ。「適切な目標」と言うのは簡単ですが、何が自分にとって適切なのかを知るのことは、決して容易ではありません。ここにジレンマがあります。
目標設定の重要性は大抵の人が認識していると思いますが、それをうまく活用できないのはそのためです。そもそも、目標設定そのものがスキルなのであり、適切な目標を設定できる人は、それだけ能力があることになります。
では、どのようにして自分にとっての最適な目標を知ることができるのでしょうか。答えはシンプルで、「対象となる作業のパフォーマンスと時間を計測する」ことに尽きます。つまり、成果と時間を計測するのです。
あらゆる作業は、成果と時間によって計測することができます。たとえば執筆であれば、「1時間あたり◯文字」などとアウトプットを計測できますし、読書であれば「1時間あたり◯ページ」とインプットを計測できます。
このように、自分が取り組む作業の成果と時間を計測し、それを元に目標を設定すれば、自分にとっての最適な目標設定が可能となります。大切なのは、まず計測すること。計測したうえで目標を設定することです。
もちろん、あらかじめ目安となる目標を設定し、そこから計測を重ねて微調整しても問題ありません。同じ作業をしている別の人を参考にしつつ、自分はどのくらいできるのかを確認しながら、目標を変えていく方法です。
ただ、その場合には、他人が設定した目標に流されないよう注意する必要があります。他人が設定した目標は、あくまでも他人軸です。自分軸ではありません。最終的には、自分のスキルに合った目標を設定するようにしてください。
このとき、重要なのは「少しむずかしい目標を設定する」ということです。集中力を高めるには、簡単すぎてもダメですし、むずかしすぎてもダメです。ちょうどいい塩梅を模索し、背伸びすれば届くレベルに設定しましょう。
「フロー理論」の提唱者であるチクセントミハイ氏は、挑戦と能力の釣り合いを保つことによって高度な集中状態がつくられると述べています。具体的には、やさしすぎず、かつむずかしすぎない行為を推奨しているのです。
ここに、目標設定のポイントがあります。自分の能力をきちんと見極めることが前提となりますが、そのうえで、難易度を「少しむずかしい」に設定しておくこと。そうすることで、集中力もやる気も持続させることができます。
ちなみにチクセントミハイ氏は、目標設定の難易度に加えて、フローに入るには次のような条件が必要だと述べています。参考までに、それぞれの要素についてチェックしておきましょう。
・何をどうやってするべきかが明確である(目標)
・ただちにフィードバックが得られる(うまくいっているかがわかる)
・行為と意識が融合している(大きな何かの一部であるという認識)
・集中力を妨げるものがない
・没頭できる状況にある(忘我)
・活動に本質的な価値を感じられる
■ご褒美でやる気は引き出せるのか?
やる気そのものは内発的動機が主体となりますが、「報酬」や「ご褒美」のように、外発的動機によって引き出すことも可能です。「これが終わったら◯◯を得られる」という感覚はまさに、外発的な動機となります。
事実、脳はその構造上、達成したあとに報酬があるという理解によってドーパミンが分泌され、やる気、思考力、決断力が向上します。その結果、高いモチベーションを生み出すことが可能となるのです。
ただし、その場合の報酬は、できる限り具体的でなければなりません。「好きなものが食べられる」「好きなものが買える(お金がもらえる)」など、報酬が具体的であればあるほど、脳への作用が高まるためです。
もっとも、目標設定がむずかしいように、報酬として何を用意するべきなのかもむずかしい選択となります。なぜなら、モチベーションの源泉となる対象は人によって異なりますし、報酬が行為を阻害することもあるためです。
たとえば、「美味しいランチを食べる」という報酬を設定したとき、ランチを食べすぎてしまった結果、午後の仕事に支障がでるようでは本末転倒です。また、その報酬がなければがんばれない自分をつくってしまうことも問題でしょう。
そのため報酬は、他の作業への影響がなく、かつ次の仕事にプラスの影響を与えるものが望ましいでしょう。具体的には、「運動をする」「本を読む」「昼寝をする」など、次の作業を促進してくれるようなご褒美を用意してください。
ご褒美そのものが活力につながるようなものであれば、「仕事→ご褒美→仕事」というサイクルの中で自然とモチベーションが高まっていきます。そのような好循環を生み出せるよう、ご褒美を設定することが大切です。
■内発的動機づけと外発的動機づけの注意点
ただし、報酬やご褒美を用意して外発的動機づけを誘発するやり方には、別の視点からも注意が必要です。具体的には、外発的動機づけによって、内発的動機づけが阻害される、ということが挙げられます。
事実、脳科学の研究によると、もともと内発的動機で取り組んでいた作業に対し、外発的動機づけをしてしまうと、本来の内発的動機が低下することがわかっています。つまり、外発的動機づけによって、内発的動機が損なわれる可能性があるのです。
たとえば、これまで好きで行っていた作業に対し、報酬を与えると、その報酬によって「好きで行っていた」という内発的動機が低下し、「報酬がなければやりたくない」「やる気がしない」となってしまうのです。
このような事象を「アンダーマイニング効果」「過正当化効果」「押し出し効果」などと言います。よくあるのが、趣味で行っていた行為に対し、仕事として報酬をもらうようになると、それまでの情熱が失われるというケースでしょう。
いずれにしても、外発的動機づけが内発的動機を低下させるという事実は、押さえておく必要があります。言い換えると、内発的動機によってモチベーションが引き出されている行為については、無理に報酬を用意するべきではないということです。
もちろん、そもそも「やる気」というもの自体がやりたくない行為を前提としているため、内発的動機に左右されてはいないと思いますが、他方で、自分がやるべきだと思う気持ちを阻害しないよう注意するべきでしょう。
■つねにモチベーション高く活動するには
やる気そのものはかたちがあるわけではなく、発想としての幻想であり、必ずしもそれ自体に意味があるわけではありません。その点において、やる気について考えるより、着手する方法を考えたほうが建設的です
ただ、自分自身のやる気体質を変えることはできなくても、何らかの作業に立ち向かう自分自身を鍛える方法ならあります。それは「体を鍛える」こと。肉体を鍛えることが、精神にも作用し、仕事に向かう気力を養います。
肉体的なアプローチとしてストレッチや体操を取り上げたように、日々、体を鍛えることによって精神力も養われます。人間も動物の一種である以上、体を鍛えて整えることが、日々の活力にもつながるのです。
とくに運動は、習慣化することが大事です。特定の日に思いっきり運動するというよりは、続けられる運動を選択し、続けていくことが大切です。裏を返せば、続けられる運動をいかに選ぶかが問われています。
日常的に運動していれば、自然と血流もよくなり、また体温もあがります。そうすることで、体も疲れにくくなりますし、睡眠や休息の質も高まります。やはり運動は、あらゆる視点から優れた行為であると言えるのです。
ビジネスに限らず、あらゆる活動で結果を出している人ほど、運動習慣を身につけています。マラソン、トライアスロン、サイクリングなど、種目はそれぞれ異なりますが、好きな運動を続けているのです。
自分にあった運動を見つけて続けていれば、それだけで体が鍛えられていき、精神力も養われます。どんな運動でも構いません。続けられる運動を見つけて、モチベーション高く活動できる土台を養いましょう。
■まとめ
・やる気は「肉体」と「精神」からアプローチする
・やる気に頼るのではなく、すぐはじめた方がいい
・時間を活用してやる気を持続させること
・目標設定は「スキル」だと認識するべし
・ご褒美はやる気につながるが注意も必要