創作活動をしている人の中には、必死に努力して作品を生み出しているのにもかかわらず、なかなか認められずに苦労している人も多いでしょう。応募する度に落選し、「なぜ自作の価値をわかってくれないんだ!」と、辛い思いをしている人も多いかと思います。
ただ、そこで「社会が悪い」「見る目がない」と考えてしまうと、思考が停止してしまいます。そうならないよう、自作に対する情熱からちょっと距離をとり、「なぜ受け入れられないのか?」を、客観的に考えてみることが大切です。
冷静になって考えてみると、分析的に思考することができます。分析的とはつまり、主観ではなく客観、感情ではなく論理で検討することを指します。そうすることで、熱くなっていたときには見えなかった視点が得られます。
たとえば、「マーケットの動向」などはまさに、客観的・論理的な思考によって得られます。自分の好きなものや普段から親しんでいるものではなく、社会で何が流行っているのかを知ることで、言わば「売れ筋」がわかります。
その売れ筋をふまえたうえで、自分の作品と照らし合わせてみると、真逆の方向性を有している場合もあるでしょう。それでは、どれほど優れている作品でも、受け入れられることはありません。少なくとも今は、求められていないからです。
このような発想は、必ずしも「流行に沿った作品を書くべし」ということを意味しません。そうではなく、「社会の空気を読んだうえで自らの創作に活かす」のが目的です。なぜならそれが、読まれる作品の要諦であるからです。
情報があふれている現代社会において、娯楽コンテンツもまた豊富に存在しています。そのような現状において、自分が発信する情報を見てもらうことは容易ではなく、また娯楽におても、注目してもらうのには工夫が必要です。
その工夫のひとつが、社会の空気をつかむことに他なりません。社会の空気をつかんだうえで、人々が注目しやすいエリアを意識しながら作品をつくると、最初の接点であるファーストコンタクトが得やすくなるのです。
たとえば、書店であれば手にとってもらいやすくなり、ネット上であれば検索されやすくなる。このファーストコンタクトをいかに醸成できるかが、知ってもらい、さらには中身を見てもらう(読んでもらう)ことにつながるのです。
どれほど優れたコンテンツでも、手にとってもらえなければ日の目を見ることはありません。ファーストコンタクトが得られないばかりに、埋もれている優秀なコンテンツはたくさんあるはずです。まずは、そのような事態を避けることが大切です。
売れ筋を知り、社会の空気を読む行為は、ある意味「魚がいる池」を探す行動と言えるかもしれません。魚がいない池に釣り糸を垂らすより、魚がいるとわかっている池に釣り糸を垂らしたほうが、たくさん釣れる可能性が高まります。
同様に、どんなコンテンツを提供する場合でも、最初の出会いを創出できるよう、「魚がいるのはどの池なのか」と考えておくことが求められます。初期の段階で、そうした視点を得ておけば、有利に戦いを展開することができます。
このような戦略的な発想は、創作活動をする人に欠かせません。「良いものを作れば売れる」という考え方もありますが、時代が変化するとともに、必ずしもそうでないことが証明されています。やはり、変化に対応しなければなりません。
「マーケティング」というと身も蓋もないように感じられるかもしれませんが、「読者を理解する」のは、あらゆる創作活動の基本です。あるいは「読者に向き合う」「読者を理解する」「読者と対話する」と表現してもいいでしょう。
いずれにしても、コンテンツの受け手である読者を無視して創作することはできません。自分自身も含めて、あるいは出版社や編集者も含めて、あらゆるシーンに読者が存在しています。それを知るヒントが「売れ筋」にあります。
売れ筋を知っていればヒット作を生み出せるわけではありませんが、ヒット作を生み出せる人は、意識的・無意識的に売れ筋への理解があるものです。社会の空気を読むためにも、売れ筋をチェックするようにしましょう。
■まとめ
・売れている作品のヒントはマーケットにある
・売れ筋から現代の流行が見えてくる
・「魚がいる池」に釣り糸を垂らそう