成長意欲が高い人ほど、日々、さまざまな事象から学びを得ていることでしょう。人から学ぶ、本から学ぶ、人から学ぶなど、学ぶ方法はたくさんあります。あるいは、経験や体験から学びを得ている人もいるでしょう。
その中に、「自分から学ぶ」という方法があることをご存知でしょうか。自分から学ぶとはつまり「省察」のことです。省察とは、自分自身をかえりみて、過去の行動や思考のよしあしについて考えることを指します。
省察の試みはまさに自分から学ぶ行為なのですが、自らの過去と対峙することで、多くの学びを得ることができます。単純に反省することだけに留まらず、自分と向き合う姿勢から、得られるものが多いのかと思います。
孫氏の言葉にも、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」という言葉があります。他人を知ることも大切ですが、自分自身を知ることによって、見えてくる境地も多いものです。何より、自分を知らなければ、人間を深く理解することはできません。
とくに創作に携わる人は、自分を深く掘り下げることによって、人間心理への理解を向上させていくことが大切です。なぜなら創作とは人間を描くことであり、程度の差はあれど、人間を理解していなければいい作品はつくれないからです。
あらゆる創作が人に向けられたものである以上、そこには何らかのかたちで人間が描かれている必要があります。「生命」という言い方をしてもいいかと思いますが、人間もまた生命の一部である以上、描かれるべき対象となります。
その人間を深く掘り下げ、理解していないと、表面的な情報や誰もが知っている常識を並べただけの、つまらない作品になってしまいます。そのような作品には普遍性や真理がなく、どこにでもあるものとなってしまうのです。
その点において、優れた創作家というのは、ジャンルを問わず人間理解に長けている人であると言えそうです。人間を深く理解していれば、そのエッセンスを応用し、さまざまな視点から作品を生み出すことができるでしょう。
もちろんそこには、綺麗事や倫理的なものだけでなく、目を覆いたくなるような真実も含まれています。人間がもつ汚さ、冷酷さ、残酷さなど、信じたくない要素が盛り込まれることもあるでしょう。しかし、そこから目をそらすことはできません。
自分のことを本当に知るとは、自分の汚さや弱さとも向き合うことだからです。そしてそれは、特定の人だけに存在するものではなく、すべての人に存在しています。だからこそ普遍的であり、真理に近いものなのです。
そのため自己省察においては、自分自身を客観視し、できる限りフラットな視点でとらえることが大切です。良い面も悪い面も含めて、自分のことを第三者の目で見てみること。そこから、自己省察がはじまります。
もっとも、ただ自分のマイナス面を責めることが自己省察なのではありません。自分の良い面も悪い面もフラットに見て、そこから冷静に分析・判断していくこと。まさに、自分自身の振り返りです。それこそ、自己省察の本質でしょう。
見たくない自分を振り返るとき、苦しい思いや嫌な感情を抱くこともあるでしょうが、それもひとつの冒険です。自らの過去を振り返ることで生じる喜怒哀楽からも目をそらさずに、たのしむことによって、新しい視座が得られます。
そのような経験は、自分を成長させる大きな糧となるはずです。日常的に自己省察をしている人は、自分の内側をえぐり出すことによって、自分を成長させています。それは、誰をも傷つけない、尊い行為と言えます。
そのようにして成長している人は、心身ともに強くなります。自分の強さも弱さも知り尽くしていれば、他人に対しても優しくなり、また器が大きくなることでしょう。そうした効果もまた、自己省察の恩恵です。
時間をかける必要はありません。1日のうち5分でも10分でも、時間をつくって自己省察をしてみてはいかがでしょうか。自分に向き合い、自己の内面に何があるのかじっくりと観察してみる。そこから、何らかの発見が得られるかもしれません。
逆説的ではありますが、自己の理解から、他者への理解が進むこともあるでしょう。そのきっかけになるのも自己省察のメリットであり、日々、習慣として自己省察する意義となるのです。
■まとめ
・自己省察とは自分を振り返ること
・自分を振り返ることによって、自分と向き合える
・自分と向き合えば、他者への理解も深まる