日々ものを書いたり、習慣的に執筆したりしている人は、「いかにして執筆スキル・文章力を高めればいいか」という課題を抱えていることでしょう。文章に限らず、自分が携わっている仕事のスキルをいかに高めるかという命題は、すべての人に共通かと思います。
こと文章を書く場合、執筆スキルを高める工夫が求められるわけですが、文章というのはそれだけではとらえどころがなく、また求められるものも多岐にわたるため、「どのようにして鍛えればいいか」というのは悩ましいところでしょう。
もちろんベースとなるのは、たくさん文章を書くこと。そして、そのために執筆を習慣化することですが、必ずしもそれだけで文章力が高まるとは限らず、さまざまな視点で学びを得ながら、文章力・執筆力を鍛えていく必要があります。
では、具体的に、どのようにして文章力・執筆力を高めていけばいいのでしょうか。文章を書くのに必要な基本的な事柄から確認しつつ、日々の生活に落とし込める「トレーニングメニュー」について考えていきましょう。
■文章を書くために必要なこと
そもそも、文章を書くためにはどのようなもの・ことが必要なのでしょうか。基本について検討してみると「①書くべき事柄があること(テーマ)」「②そのテーマに関連するネタがあること(情報)」「③書ける立場にあること(経験)」の3つが挙げられます。
「①書くべき事柄があること」というのは、内容というよりは、土台となる「テーマ」があるということです。文章を書くには一定のテーマ(題材)が必要です。テーマがなければ、井戸端で行われる世間話のように、まとまりのない文章になってしまいます。
「②そのテーマに関連するネタがあること」というのは、まさに内容についてです。テーマをもとに、具体的に書くべきことを考えていくのですが、そのときに必要なのがネタです。情報と言い換えてもいいのですが、それがなければ文章は書けません。
「③書ける立場にあること」というのは、テーマに沿った書くべきことに関して、一定の知識や知見、経験があるということです。まったく何も知らないことも書けなくはないですが、それでは表面的な事柄しか書けず、結果的に文章が浅くなってしまいます。
このように、文章を書くには「①書くべき事柄があること(テーマ)」「②そのテーマに関連するネタがあること(情報)」「③書ける立場にあること(経験)」の3つが欠かせません。そこに、文章力・執筆力を高めるヒントがありそうです。
■文章力・執筆力はいかにして高められるのか?
そのうえで、文章力・執筆力を高めるために何が必要なのかについて考えてみると、素直に分解すれば「①テーマ設定力(企画力)」「②情報収集力(取材力)」「③経験スキル(学ぶ力+行動力)」の3つであるとわかります。
「①テーマ設定力(企画力)」というのは、いかにおもしろいテーマを設定できるかということ、つまり「企画力」のことを指します。どのようなテーマを設定し、企画できるかによって、文章全体の方向性やそこからもたらされる価値も決まってきます。
「②情報収集力(取材力)」というのは、その企画に沿った文章を書くために必要な資料や情報を収集するためのスキルです。「取材力」と表現してもいいのですが、情報を集めることができなければ、中身のある文章を書くことはできないでしょう。
「③経験スキル(学ぶ力+行動力)」というのは、そのテーマについて書くための土台を形成する「学ぶ力」と「行動力」です。特定の分野に関する文章を書くのに必要な知見と経験を身につけられれば、自ずと文章力・執筆力は高まっていくことでしょう。
これら3つのスキルを高めながら文章を書いていけば、テーマ・内容・経験という文章に欠かせない要素のレベルが増していくため、結果的に、文章力・執筆力が向上すると考えられます。そしてそれが、スキルの底上げになるのです。
■文章力・執筆力を高めるために必要な3つのメニュー
具体的に、文章力・執筆力を高めるためのメニューについて考えてみましょう。先ほどのテーマ・内容・経験という3つの要素に即して検討してみると、それぞれを高めるための行動が日々のプラクティスになるとわかります。
具体的には、「発想」「取材」「学習」という3つの側面から、必要な行動を集約していきます。
1.テーマ設定のスキルを養う(発想)
テーマ設定のスキルを養うには、豊かな発想やアイデアを生み出す訓練をしなければなりません。そのためには日々、たくさんのアイデアを考案しながら、それを客観的に評価し、精度を高めていく必要があります。
土台となるアイデアについては、方法論としての「マインドマップ」や「フレームワーク」などの活用とともに、ヒント集として使える『アイデア大全』などの書籍を用いるといいかと思います。そのようにして、まずはたくさんアイデアを生み出していきます。
日々、アイデアの数をきちんと稼げていれば、そこから精度を高めていけばいいでしょう。最初からいいアイデアを生み出すなどと考えるのではなく、まずは数を稼ぎ、そのうえでアイデアの質を向上させていくのが王道かと思います。
2.情報収集力を養う(取材)
情報収集力については、大きく「①必要な情報を見極めるスキル」「②情報の質を判断するスキル」「③必要な情報を手に入れるスキル」の3つに分類できます。これら3つのスキルが組み合わさって、情報収集力となります。
まず、特定のテーマについて文章を書くときに、必要だと思われる情報をピックアップしてみます。そのうえで、最初はランダムに情報収集し、得られた情報の質を精査してみましょう。その情報を正しい方法で入手できれば、文章作成に活用することができます。
これらのスキルも経験におうところが多いのですが、たとえば「知識のつながり」「エビデンス」「学問領域」「ジャンル」などを意識しながら情報にふれ、実際に文章を書いてみると、情報の本質が見えてくるかと思います。情報を“使う”習慣を養いましょう。
3.経験スキルを養う(学習)
さらに「経験スキル」を養うには、日々の学習と行動が欠かせません。この場合の学習とは「机上の学び」を意味し、行動とは「体験の学び」を指します。どちらも学習にはかわりありませんが、偏ることなく、それぞれの学びを深めていくことが大切です。
机上の学びは、テキストや書籍、辞典などのレファレンスブック、さらには動画や授業(講義)などがあります。それらのうち、大切なのは自分に合ったものを選択するということ。人によって、学び方やもたらされる成果は異なります。
学校での学びは授業や講義を主体としていますが、中には、自分で本を読んだり動画をみたりしたほうがよく学べる人もいるでしょう。大人の学びは、そのような自分の特性をふまえたうえで、最適なものを選択するのが基本となります。
このように、テーマ設定のスキル、情報収集のスキル、学習のスキルを高めていくことによって、文章を書くための基礎が養われていきます。執筆のサイクルにこれらの修練を加えることで、自然に文章力・執筆力が高まっていくのです。
■継続してトレーニングしていくためのメンタルケアについて
最後に、これらのトレーニングを継続していくためのメンタルケアについてもふれておきましょう。実は、どのような修練も、それを続けていかなければ意味がありません。なぜならスキルというのは、一朝一夕で身につかないためです。
そのときに重要なのは、方法論よりもメンタルです。いくら優れた方法論でも、メンタルが追いついていなければ、いずれ断念してしまうものです。そのため方法論は、最低限のメンタルケアがあってこそ意味があります。
では、最も重要なメンタルケアとは何でしょうか。答えは「動機の確認」です。つまり、「何のために文章力・執筆力を高めなければならないのか」を規定する、自分なりの強固な動機をもち、それを再確認できる状態をつくることが大事なのです。
動機は何でも構いません。ただし、ときには辛い修練を経なければならないことを考えれば、自らの、根源的な、それこそ心の奥底にある信念に根ざしている必要があります。そのような動機をもっていてこそ、自らメンタルケアを行えるようになるのです。
自分の信念とは何か。ここであらためて、考えるようにしてください。それは生きる意味といってもいいかもしれません。あなたは人生に何を求めるのか。何を大切にし、何が譲れないのか。そのような問いが、厳しいトレーニングを支えるメンタルケアにつながります。
■まとめ
・文章力・執筆力を高めるには修練が必要
・執筆スキルは「①テーマ設定力(企画力)」「②情報収集力(取材力)」「③経験スキル(学ぶ力+行動力)」の3つに集約される
・「発想」「取材」「学習」の観点からトレーニングを行う
・トレーニングは執筆とともに継続していくこと
マインドケアにも配慮しながら、自分のペースで続けられるトレーニングを実施していきましょう。