本稿では、近畿大学図書館司書コースの「図書館情報資源特論[’19-’20]」における、合格レポートを紹介しています。
※内容をそのままコピー&ペーストするのは厳禁です。あくまでも、解答例および書き方の参考にしてください。
設題
設題は次のとおりです。
灰色文献とはなにか。灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。(2,000字)
レポート作成上の留意事項・ポイント
参考文献の著者名、書名、発行所、ページ等を本文の末尾に記述すること。
総評基準についてのメッセージ
・「レポート作成上の留意事項・ポイント」が守られているかどうかを判断する。
・問題についての基礎的知識があるか、論文の構成がきちんとなされているか、自己の言葉で書かれているかなどを判断する。
合格レポート
1.序論
図書館司書として図書館業務にあたる際、資料の収集・整理・保存の中身について深く知っておくことは重要である。ここで言う資料(図書館資料)には、図書や書写資料、地図資料など紙媒体のものだけでなく、映像資料や静止画資料などのデジタル資料も含まれる。このうち本論では、図書館資料を収集する際に導入されている「灰色文献」という考え方について、その定義や意義、特性、さらには具体的な資料名とその特徴について論じていく。
2.灰色文献の定義、意義、特性
灰色文献(Gray Literature)とは、配布先が限定されていたり、発行が少部数であったりするため、入手が困難な文献のことである。いわゆる自費出版や非売品の本や雑誌など、正規の流通ルートにのらないものが灰色文献に該当する。
灰色文献という名称は、一般的に市販されて誰でも入手(購入)できる資料のことを「白」、一方で政治上・軍事上の機密事項等に該当するため特定者以外は閲覧できない非公開の機密文書を「黒」とした場合に、その中間に位置する文献として「灰色」と表現されている。
具体的な資料名については後述するが、灰色文献に該当する資料には「政府刊行物」「地方公共団体が作成した資料(白書など)」「学位論文(Dissertation)」などが含まれる。これらは一般の流通過程にのらないものの、資料的な価値が高いものも多く、図書館に収集・管理する意義があるとされている。図書館業務において、灰色文献の収集・管理が重要なのはこの点にある。
どのような種類の灰色文献が存在しているのかを調査するには、国立国会図書館が発行している『日本全国書誌』が使用される。国立国会図書館には、納本制度により、国や地方公共団体の刊行物や国内刊行の民間出版物が納入されており、それらの資料をリスト化したものが『日本全国書誌』である。加えて、国立国会図書館のホームページでも灰色文献に関する情報が閲覧できるため、あわせてチェックしておく必要がある(井上,2004)。
3.灰色文献の具体的な資料名とその特徴
以下、代表的な灰色文献の具体的な資料名とその特徴である。
・政府刊行物
政府が発行する文献のことで、国家機関による立法、行政、あるいは広報のために作成・発行されている資料である。具体的には、政府発行の「官報」や国会の「議事録」、法令などを記した政府刊行物などが含まれる。
・地方自治体が作成した資料
国や政府だけでなく、地方自治体で作成した資料も灰色文献に含まれる。地方自治体が作成した「白書」や、その他の行政内部資料など、各部・各課で作成・管理されている行政刊行物にはさまざまな資料のものがある。
・民間の機関が作成した資料
民間のシンクタンクや調査機関、専門研究機関などが作成・発行している資料のうち、「プロジェクトレポート」や「市場調査報告書」、「研究成果報告書類」などが灰色文献に該当する。
・学位論文
学位(博士号)を取得するために書かれた「学位論文」も灰色文献に含まれる。学位論文は、その一部を審査大学に、もう一部を国立国会図書館におくることとされている。流通を目的としていないため入手は困難であるが、資料的な価値は高い。
・会議録
学会などにおいて使用された発表論文と、そこで行われたディスカッションの内容をまとめた「会議録」は、学術的な価値が高い資料である。ただ、学位論文と同様に、流通を目的としていないため入手は困難である。
・展覧会カタログ
展示会に出された作品についてまとめた「展示会カタログ」は、作品について深く知るために有用な資料である。また資料性も高く、図書館においても収集・管理の対象となるものは少なくない。
・企業の社史
企業が作成している「社史」のうち、とくに日本や業界を代表するような企業のものは、会社の業績だけでなく業界の変遷をも表していることから、資料性が高い。ただ、非売品のものも多く、図書館で収集・管理する意義がある。
・追悼録
故人の「追悼文集」や「遺稿集」など、いわゆる饅頭本と呼ばれる資料も灰色文献の一種である。著名な人物のものであれば、学術研究の資料に用いられることもあり、大学図書館等の重要な収集対象資料となっている。
・研究成果報告書
学者や研究者が、文部科学省・日本学術振興会から補助金を受けて行った研究成果をまとめたものが「研究成果報告書」である。研究期間終了後の作成が義務付けられており、一部はその機関や大学で、もう一部は国立国会図書館で保存される。
4.結論
本論では、図書館資料の収集において用いられる灰色文献という考え方について、その定義と意義、特性、さらには具体的な資料名とその特徴について論じてきた。灰色文献の中には、流通ルートにのらないため入手困難なものも多い一方、高い資料的価値を有するものも含まれている。そのため、図書館司書として図書館業務に従事する際には、こうした灰色文献への配慮も欠かせないと言えるだろう。また、そのための知識や手腕も求められているのである。
文字数 2074文字
参考文献
高山正也・平野英俊編著『図書館情報資源概論』樹村房,2012
山本順一編著『情報の特性と利用―図書館情報資源概論』創成社,2012
井上真琴『図書館に訊け!』ちくま新書,2004
レポート作成のヒント
レポートを作成する際には、以下の点に留意しています。
1.構成を決める
レポートの構成は、「序論」「本論」「結論」が基本となるため、次のように組み立てています。
1.序論: 灰色文献の背景について
2.本論:「①灰色文献の定義、意義、特性 」と「②灰色文献の具体的な資料名とその特徴」について
3.結論: 本論でまとめた内容に対する、筆者の主張や批判
2.テキストの該当箇所を自分の言葉でまとめる
灰色文献について、テキストや参考文献を参照し、まとめました。とくに、意義、定義、特性を中心に記述しています。
このとき、自分の言葉で記述することが重要かと思います。
3.必要に応じて参考書等を使用する
参照した参考書については、末尾に記載しています。
また、引用する場合は「」でくくり、出典を記載してください。内容の参考にしただけの場合でも、参考文献に記載します。
キーワード
本設題の場合、次のようなキーワードが挙げられます。これらの言葉に着目しつつ、まとめていく必要があるかと思われます。
・灰色文献(Gray Literature)
・政府刊行物、地方公共団体が作成した資料(白書など)、学位論文(Dissertation)
・日本全国書誌