過去の研究結果を俯瞰する!「文献レビュー(文献研究)」のやり方

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自身の専門性を高めるために。研究を行うことは意義があります。

ただ、こと学術的な研究を行うためには、その前提として、これまでの研究結果について理解し、その全体を俯瞰しなければなりません

そうしなければ、過去の研究結果をふまえた研究ができず、また、すでに結果が出ている研究をしてしまい兼ねません。

では、どのようにして過去の研究を俯瞰すればいいのでしょうか。そこでオススメなのが、「文献レビュー(文献検討)」です。

本書『文献レビューのきほん―看護研究・看護実践の質を高める 』から、文献レビューの具体的なやり方について学んでいきましょう。

文献レビュー(文献検討)とは

そもそも文献レビューとは、過去に行われた研究結果を再検討し、批評し、その概観をまとめ上げることを指します。端的に言えば、「過去の研究のまとめ」となるでしょうか。

文献レビューを行うことで、既存の知識体系および研究者の共通認識について理解し、未知の研究課題を見つけ、さらには将来の展望まで提言できる可能性があります。

ただし、文献レビューは単なる“まとめ”ではありません。本書でも言及されているように、優れた文献レビューは、それ自体がひとつの研究(論文)となります。

そしてそのための方法論について、とくに海外では、確立されている(※)と言っていいでしょう。その日本版として紹介しているのが、まさに本書の内容というわけです。

※システマティック・レビュー(系統的レビュー)など

文献レビューにおける5つのステップ

次に、文献レビューを行うための具体的なステップについて見ていきましょう。流れとしては、次の5項目を経ることとなります。

1.研究テーマの決定(課題設定)
2.テーマに関する文献の検索・入手(文献検索)
3.文献の読み込み(内容検討)
4.検討結果の整理・統合・解釈(文献統合)
5.全体の文章化(論文執筆)

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

1.研究テーマの決定(課題設定)

まずは、研究テーマを決定(課題設定)するところからはじめます。

具体的には、興味や関心がある「トピック」を書き出し、それらを学術的な専門用語を用いて「研究テーマ」に変換。さらに、文献を用いて回答が出せそうな「研究疑問」にします。

研究テーマを決める際には、一定の情報や知識が必要となるため、さまざまな本を読んだり、予備的な文献検索を行ったりする必要があります。

2.テーマに関する文献の検索・入手(文献検索)

研究テーマが決まったら、文献検索に移ります。

具体的には、文献データベースを用いて文献検索をし、レビューする候補となる文献をリストアップ。必要な文献を選定し、入手します。

また、入手した文献に掲載されている引用文献や、その他の専門誌、著者情報などをもとに、さらに文献検索を進めていきます。

3.文献の読み込み(内容検討)

次に、入手した文献を読み込みます(内容検討)。

内容検討の際には、不明点を学習しつつ、クリティカルに読み、最終的に読んだ結果をまとめていきます。

内容検討を通して目指すのは、①研究疑問に対する解答に関連するか、②優先度に合致するか、③内容を信頼できるか(品質)を明らかにすることです。

4.検討結果の整理・統合・解釈(文献統合)

内容検討の次は、文献統合です。

文献統合は、内容検討とは異なり、複数の文献に対して行います。個々の文献を評価するのではなく、検討した文献全体で何がわかったのか、わからなかったのかをまとめます。

その前提として、個々の文献についてまとめた内容を一覧できるよう要約表を作成し、それぞれの文献を比較・対比しておくことが大切です。

5.全体の文章化(論文執筆)

文献統合を終えたら、論文執筆に入ります。

具体的には、これまでに行ってきた課題設定、文献検索、内容検討、文献統合の内容を、IMRAD形式に沿って文章化していきます。

※IMRAD:Introduction, Materials and methods, Results, And Discussion

初心者へのアドバイス

また本書では、とくに初心者の方に呈して、以下のポイントをふまえて文献レビューに着手するべきとアドバイスされています。

  1. 文献レビューの手順に沿って進めていくこと
  2. 原著論文を中心とした、入手しやすい一次資料を検討対象にする
  3. 検証する論文は1つのテーマにつき10~20編程度にする
  4. 場合によっては、検討する論文を「量的研究」か「質的研究」に絞る
  5. 日本語で書かれた論文に限定する

いずれも、膨大な資料に悪戦苦闘しがちな文献レビューにおいて、スムーズに進めていくための的確なアドバイスと言えるでしょう。

まとめ

あらためて、文献レビューの流れてについて確認しておきましょう。次の5ステップとなります。

1.研究テーマの決定(課題設定)
2.テーマに関する文献の検索・入手(文献検索)
3.文献の読み込み(内容検討)
4.検討結果の整理・統合・解釈(文献統合)
5.全体の文章化(論文執筆)

ただし、順番としてはこのような流れとなりますが、必ずしも、まっすぐ進むわけではありません。行きつ戻りつしながら、少しずつ、文献レビューが進められていきます

それは、通常の研究でも同様と言えるでしょう。

その他にも本書では、文献レビューの詳しい内容や、研究に関するわかりやすい解説が記載されています。研究について知りたい方は、ぜひ、手にとってみてはいかがでしょうか。

参考:「研究方法論としての文献レビュー―英米の書籍による検討―

(本書のベースとなっている文献レビューの参考です)

※あわせて読みたい

文献レビューのきほん―看護研究・看護実践の質を高める

目次

Book-1
第1章 文献レビューに必要な予備知識
1.レビューって何だろう
2.研究の世界の約束ごと…研究,文献,論文に関する基礎知識
1)文献とは
2)一次文献・二次文献とは
3)学術雑誌とは
4)論文とは
5)学会発表と抄録(会議録)とは
6)査読(ピア・レビュー)とは
(参考) レビュー論文
(参考) 灰色文献
3.学術論文の基本的な構成
4.研究の種類とデザイン
1)研究の種類
2)研究デザイン
3)研究デザインを分類する難しさ
5.文献レビューが重要になった背景
1)根拠に基づく医療(EBM)から根拠に基づく実践活動(EBP)へ
2)EBMと文献レビュー
3)文献レビューの目的に応じたエビデンスの階層
(コラム) レビューの対象となる文献は看護学に関する研究だけではありません
(ジグソーパズル1) 文献レビューはジグソーパズルみたいなもの
第2章 文献レビューの概要
1.文献レビューとは
1)文献レビューの目的
2)文献レビューの定義とプロセス
3)文献レビューは感じた疑問に答える研究方法の1 つ
2.文献レビューの特徴
1)文献レビューと文献検討の違い
2)文献レビューの利点
3)文献レビューの5 つのキーワード
4)文献レビューと調査研究
3.文献レビューの簡単な流れと5 つのstep
1)5 つのstep
2)5 つのstepは一方的ではなく双方向的・相互補完的
3)実際の文献レビューは「探す」「読む」「書く」のサイクル
4.いろいろな文献レビュー
1)高度な文献レビュー-システマティック・レビューなど
2)伝統的なレビューあるいは物語風のレビュー
3)系統的でないレビューの危険性
4)ビュー論文を読むときの注意事項
(参考) 出版バイアスと言語バイアス
5.文献レビューを始めるにあたって
1)初心者に向いている文献レビュー
2)レビューの対象とする文献
3)好ましくない文献レビューとは
(コラム) 文献レビューをすることで研究者に必要な基礎的な能力が高まります
(コラム) 抄録の羅列では文献レビューにはなりません
6.文献レビューに役立ついくつかの日常習慣
1)メモをとる習慣を身に付けること
2)クリティカルに読み,書き,考えること
3)情報を記録すること
4)図表を使って考えを整理すること
5)計画的に進めること
6)文献レビューのプロセスを意識してみること
7)優先順位を考えること
(ジクソーパズル2) 全体像を見る必要性
Book-2
第1章 Step 1 課題設定─研究テーマを決める
1.課題設定のプロセス
1)研究につながる素朴な疑問
2)トピック,研究テーマ,研究疑問
3)研究テーマを決めるための知識量・情報量
4)知識の増加(情報収集)と課題設定プロセスの循環
(コラム) 研究疑問に対する「正解」を求めているわけではない
(コラム) 論文の読み方
2.研究テーマと研究方法
3.研究疑問を絞り込む方法
1)良い研究疑問とは?
2)研究疑問の変化と深化
3)発散と収束
(コラム) 制限をつけてテーマを絞り込んでみましょう
4.良い研究疑問を設定するためのヒント
1)興味や関心,強い研究動機のあるテーマを選ぶこと
2)研究疑問は適度に焦点を絞ること
3)研究疑問は明確で,曖昧さの残らないものにすること
4)研究疑問は決められた時間内で解答可能で現実的なものにすること
5)重要な1 つ(多くても2 つ)の疑問に絞ること
6)文献を用いて解答できること
5.課題設定を有効にするために
1)研究疑問の設定プロセスの記録
2)いつでも頭の中に研究疑問を
(ジグソーパズル3) 研究疑問の絞り込みとジグソーパズル
Book-2
第2章 Step 2 文献検索─文献を検索・入手・管理する
1.探索的な文献検索と系統的な文献検索
(参考) 書誌データベースと検索システム
2.文献の選択基準
1)選択基準とは
2)適切な選択基準の例
3)選択基準をつくる理由
4)研究疑問と選択基準
(注意! ) 文献の種類による絞り込みはしない
3.文献検索の方法
1)キーワード検索
2)主題検索とシソーラス
3)キーワード検索と主題検索
(コラム) 適切なキーワードを見つけ出すコツ
4.検索結果のとらえ方
1)ノイズと見落とし
2)検索実験のすすめ
(注意! ) 重要文献の見落としは致命的になることがある
5.文献検索の実際
1)文献検索システム
2)検索手順の記録
3)文献の入手
4)コア文献(キー文献)に目星をつける
5)対象文献を確定するまでのプロセス
6)文献データベースによる系統的検索の問題点
(参考) 医中誌Web
(コラム) 文献の著者と検索した者の興味や関心が異なる場合
(コラム) 文献検索は量的研究と似ています
6.文献の管理
(参考) 文献を管理する方法の例
(ジグソーパズル4) ノイズ・見落としをジグソーパズルに例えると
Book-2
第3章 Step 3 内容検討─入手した文献を読み,内容を検討する
1.批判的吟味ないしクリティークについて
2.文献を読む力
1)情報収集のための読み方
2)読みにくい文献の理由を考える
3)情報リテラシー
(コラム) 効率よく論文を読む
3.内容検討の方法
1)内容検討の目的
2)クリティカルな内容検討
4.内容検討の実際
1)チェックリストを用いた品質評価
2)文献内容の要約と判定
(参考) 量的研究の評価の基本
(参考) 文献の間違いを見つけた場合にどうするか
Book-2
第4章 Step 4 文献統合─検討した結果を整理し統合・解釈する
1.要約表の作成
1)要約表の体裁
2)要約表に記載する情報量
2.文献統合の方法
1)要約表の概観
2)文献の引用・被引用のマッピング
3)文献統合の基本的な考え方
4)初心者向きの統合の方法
3.文献統合の実際
1)文献全体を1 つのデータと考える
2)叙述的にまとめる
3)質的に統合する
4)結果の精査
5)統合した内容のストーリー作り
(参考) コードとカテゴリの例
(ジグソーパズル5) 文献統合とジグソーパズル
Book-2
第5章 Step 5 論文執筆─全体のプロセスを執筆する
1.なぜ論文を書けないのか
2.論文執筆に際しての心構え
1)「理解するために書く」から「理解してもらうために書く」へ
2)読み手を想定した執筆
3)必要最小限の記述
4)学術的な文章を書く練習
3.論文執筆の方法と実際
1)執筆計画
2)IMRAD形式による論文執筆
3)図表の整理
4)引用文献の取り扱い
5)結論と提言に挑戦
(コラム) どの文献のどの箇所に引用する事項があるかを同定するための工夫
(注意! ) 引用に関して
4.結果と考察の関係と議論の進め方
おわりに
FAQ 文献レビューについて よくある質問
付録 文献レビューの実例 本書の執筆にあたって行った文献レビューの概要
参考文献
索引

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