「小説家になって悠々自適な生活をおくりたい」。文章を書くことが好きな人にとって、それこそまさに究極の夢でしょう。小説家の生活が悠々自適かどうかはさておき、では、どうしたら小説家になれるのでしょうか。
こちらの記事では、小説家になるための過程について紹介しつつ、呼んでおくべき必読書について解説しています。ぜひ、小説家になるという夢を実現するために、参考にしてみてください。
「小説家」とは
まず、小説家の定義ですが、ここでは「小説を書いて生計を立てている人」としておきます。つまり、趣味で小説を書いている人は、本記事では小説家とは呼びません。あくまでも、プロの小説書きを小説家と定義しておきます。
では、どうすれば小説を書いて生計を立てられるのでしょうか。それは、「自らが執筆した小説の売上によって報酬を得られること」が条件となります。いくら優れた小説を書くことができても、それを売り、対価を得られなければ生活はできません。
最近でこそ、Amazonなどのサービスを利用して、Kindle本を自ら販売している人もいます。ただ、まだまだ少数派です。やはり、自分が書いた小説を売るためには、「出版社」の力を借りる必要があるのです。
絶大なる“編集者”の力
出版社の力を借りるとは、どういうことでしょうか。具体的には、出版社がもつ小説を販売するためのノウハウや販売網を駆使して、自らの小説を売り、ファンを獲得し、安定的に収益を得るということに他なりません。
たとえば、書店での展開やプロモーションに関しては、関係の構築やマーケティングの知識が必要となるため、素人では難しいのが実情です。その点、出版社は、すでに小説を販売するためのノウハウをもっています。
また、忘れてはならないのが「編集者」の存在です。編集者という“読むプロ”がいるおかげで、小説家の小説は高いクオリティを維持できるだけでなく、時勢にあった支持されやすい作品を生み出すことができます。
小説家になるために必要な二つのこと
上記の話をまとめると、小説家になるために必要なものは以下の二点となります。
1.一定の質が担保された小説を、コンスタントに書くことができる「スキル」
2.出版社から能力を買われ、販売するための関係性を構築している「状態」
どんなにスキルがあっても、出版社にその小説を販売してもらえなければ、小説家としてやっていくことは難しい(固定ファンがいる作家を除き)。一方、出版社が協力してくれても、コンスタントに執筆できなければ作品を発表することはできません。
つまり、「執筆スキル」と「出版社との関係構築」は、小説家として活躍するための両輪というわけです。そのため、この二つをどうすれば得られるかということが、小説家になりたい人にとっての課題となります。
デビューしなけりゃはじまらない
「優れた作品が執筆できる人なら、自然と出版社から能力を買われるのでは?」と思う方がいるかもしれません。たしかに、その確率は高いと考えられます。ただ、正しいアプローチをしなければ、出版社との関係が構築できないのも事実です。
たとえば、『超・戦略的! 作家デビューマニュアル 』には、「作家になる」ための方法として以下の5つがあると紹介されています。
- 自費出版
- ネットに作品を発表。その後、本として出版される
- 出版社の知り合いを通じて(コネを使って)デビューする
- 持ち込み
- 新人賞を獲ってデビューする
ただし、「1.自費出版」については相当額の資金がかかること、「2.ネットでの発表」は競争が激化していること、「3.コネを使って」や「4.持ち込み」については再現性がなく、現実的でないことなどの問題が指摘されています。
そのような理由から、あらゆる「小説家になるための指南書」において、「5.新人賞を獲ってデビューする」という方法が、小説家になるための最短距離であると紹介されています。あらためて、小説家に“なるため”に必要なものを再定義してみましょう。
1.新人賞をとれるだけの実力を身につける
2.自身の作品にあった賞を見極めて、応募する
文量は「長編」、ジャンルは「ミステリー」
次に、どんな小説を書けるようにすればいいのか、あるいはどんな賞に応募すればいいのかを考えていきましょう。ポイントは「差別化」であり、「優位性」です。つまり、どうすれば有利に戦えるのか、ということです。
結論から言うと、文量としては「長編」、ジャンルとしては「ミステリー」が狙い目のようです。ちなみに、文量とジャンルについては以下のような区分があります。
<小説の文量(目安)>
長編小説 200枚以上
中編小説 200枚前後
短編小説 50~100枚前後
掌編小説 30枚以下
<小説のジャンル>
純文学、ミステリー、恋愛、歴史・時代、経済、SF、ホラー、ファンタジー、その他エンタメ、ライトノベルなど
では、なぜ「長編」が狙い目なのでしょうか。その理由はズバリ、「本になりやすい」ためです。短編の場合、それだけではなかなか本になりません。ビジネスにしたい出版社からしてみれば、長編の方が選びやすいのは必然と言えるでしょう。
また、長編の場合、そもそも書ける人が少ないという事情があります。実際に書いてみればわかりますが、本当に小説家になりたいという人でなければ、200枚を超えるような小説を継続的に書くことは難しいのです。
ちなみに……。「ミステリー」が狙い目であると主張している本には、五十嵐貴久氏の『超・戦略的! 作家デビューマニュアル 』や若桜木虔氏の『プロ作家養成塾』などがあります。その理由についてはぜひ、それらの本を読んでみてください。
また、大塚英志氏の『キャラクター小説の作り方』や校條剛氏の『スーパー編集長のシステム小説術』のように、広義のエンターテイメント小説を勧めているものもあります。これらもぜひ参考にしてみてください。
※個人的には、ジャンルは自分が好きなものを書くべきだと思います。なぜなら、続かないからです。また、探求も不十分になる可能性があります。森博嗣氏は著書『夢の叶え方を知っていますか?』で「あくまでも仕事として小説を書いている」と言い切っていますが、本当のところはどうなんでしょうね。
小説家になるための必読書
小説家になるための道のりがぼんやりと見えてきたところで、オススメの必読書について紹介していきましょう。なにぶん、このカテゴリーの書籍は山のようにあります。私が読んだものだけでも3桁に近いかもしれません。
だからこそ、良書の中からとくに、自分に合った指南書を見つけるようにしてください。結局のところ、小説家の仕事は孤独との戦いです。その戦いを乗り切るために、メンターとしての書籍を見つけることをオススメします。
<総合書>
東邦出版
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河出書房新社
売り上げランキング: 241,558
ベストセラーズ
売り上げランキング: 28,114
PHP研究所
売り上げランキング: 73,784
秀和システム
売り上げランキング: 508,434
<ストーリー(物語)の作り方>
朝日新聞社
売り上げランキング: 145,644
水声社
売り上げランキング: 396,149
白水社
売り上げランキング: 1,184,850
<ジャンル別>
集英社
売り上げランキング: 228,725
講談社
売り上げランキング: 148,881
ベストセラーズ
売り上げランキング: 818,226
順番に、「純文学」「ミステリー」「時代」「キャラクター」ではありますが、テクニックとして共通する部分も多いです。自分はどのジャンルを書きたいのかを、知るためにも読むことをオススメします。
<著名作家が書いている本>
最後に、世界的にも著名な作家が書いている指南書を紹介します。ただ、私見を述べさせていただくのなら、これらの本はあまりオススメできません。なぜなら、「何を言っているのかわからない」ためです。(僕のアタマに問題があることは否めませんが……)
「小説を書きたい!」と思っている人に対し、「小説とはつまり人である」のような言葉をかけることは、あながち無意味とは言いませんが、抽象的すぎてピンとこないと思います。それでは、いつまで経っても書けません。
その中でも、日本人作家の書いたものでオススメなのは、高橋源一郎氏の『一億三千万人のための小説教室』ぐらいでしょうか。まあ、この本を読んでも小説を書けるようにはならないと思いますが。勉強にはなりますけど。
その他、保坂和志氏の『書きあぐねている人のための小説入門 (中公文庫)』や、村上春樹氏の『職業としての小説家 (新潮文庫)』など、読み物としてはおもしろいのですが、参考にするのはちょっと難しいと思います。
しいて言えば、『井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室』ぐらいでしょうか。参考になるのは。あとのいわゆる「文章読本」系のものは、あくまでも読み物として楽しんだ方がいいでしょう。書く気がなくなっても困りますので。
一方、外国人作家が書いた本のなかには、参考にできるものがいくつかあります。たとえば、以下の書籍などは読んでおいても損はありません。
小学館 (2013-07-05)
売り上げランキング: 9,587
原書房
売り上げランキング: 405,192
朝日新聞社
売り上げランキング: 19,915
まとめ
まとめとして、いま一度、小説家になるための方法を定義しておきましょう。次の通りです。
1.小説を書く(できれば長編)
2.書いた小説で新人賞に応募する
このシンプルな作業をくり返すことができた者だけが、小説家になれます。才能次第によって、早い人もいれば遅い人もいるでしょう。しかし、どうせいつ死ぬのか分からないのですから、早くても遅くても、あまり関係ありません。
そして、いくら早くデビューできたとしても、二作目以降が続かないとやっていけません。だからこそ、本記事で紹介している書籍を読み、内面から小説家になるための姿勢について学んでいただければ幸いです。