DeNAのキューレーションメディアが「信憑性の低い記事や、他サイトからのパクり記事を掲載している」と指摘され、謝罪会見を開く事態となった今回のキューレーションサイト問題。
ネット上でも関心が高く、その波紋は他のキューレーションメディアにまで及びました。スマートフォンの普及とともに、急成長を遂げていた分野だったからこそ、その反響はとても大きいものに。
そこでこちらの記事では、「キューレーションメディアの倫理的な問題」について考えてみたいと思います。
キューレーションメディアの倫理的な問題点
では、キュレーションメディアにはどのような問題があったのでしょうか。
1.中身のない薄い情報
今回問題となったDeNAが運営するキューレーションメディアの記事には、他サイトから画像や文章を盗用したものも。オリジナル性の低いパクり記事は、当然ながら中身のない薄っぺらい情報もたくさんあったようです。
DeNAが運営するサイト「WELQ」では、「肩が痛い」という記事のところに「幽霊が原因かもしれない」といった内容の記事もありました。医療系メディアにも関わらず、専門家の監修もなく、このような記事が編集部のOKをもらって公開されていたことにも驚きでした。
2.テクニックとしてのSEO対策
自分が知りたい情報のワードを検索した時に、ワードの上位になっているサイトで「結局なにが言いたいの?」と思うような記事を見かけたことはありませんか?これは「SEO対策」によって、意図的にその記事が検索上位に表示されていることが原因です。
SEO対策とはGoogleやYahoo!の検索順位をあげるために、ページの表示速度が速くなるような工夫をしたり、記事にキーワードを盛り込んだりすること。自分のサイトが検索の上位になれば、その分ユーザーが自サイトに来訪する可能性が高くなります。
アクセス数を増やすという点で、このSEO対策はサイト運営者側にとっては非常に重要な対策という訳です。
GoogleやYahoo!は「ユーザーに有益になる情報を届けたい」という思いのもと、さまざまな条件をつくり検索上位になるサイトを選んでいます。しかし、一部のキューレーションメディアやアフィリエイトサイトは、このSEO対策のテクニックだけを駆使した質の低い記事を量産しているのです。
結果として信憑性の低い情報がSEO対策をすることによって上位サイトに表示され、ユーザーは「本当に正しいかどうか分からない」記事を読まされることになってしまうことに。このように「質」ではなく、「検索上位に表示されること」が目的の記事が量産されていたのは、大きな問題です。
3.安価な料金での記事の量産
今回のDeNAの会見でも取り上げられたのが、安価な料金で外部のライターを雇い、記事を量産していたことです。クラウドソージングサイトでは、1文字あたりの単価が1円以下の仕事が大量にあり、中には300字で7円という案件も目にしたことがあります。
1記事あたりの単価が低いと、収入をあげるためにはより多くの記事を書かなければなりません。そうした理由により、他サイトからのパクってきた内容に少しアレンジを加えた記事を書いて、短時間でかける記事の数を増やしていたライターもいたでしょう。
WEB媒体の記事作成の単価が低いということは、以前からもいわれていました。今回の件でそれが明るみになりましたが、質の高い記事を求めるのなら、それに見合う対価を支払う必要があります。
信憑性の高い記事は、その根拠をきちんと調べて書かれるので、時間も労力もかかります。雇う側もそれを考慮して、報酬の価格設定をしていくべきですね。
4.ルールやモラルよりも利益追求
結局のところ、こうした問題はルールやモラルよりも、企業の利益だけを追い求めてしまった結果ではないでしょうか。他サイトからの写真や記事内容の盗用は著作権の侵害。また、WELQなどの医療系メディアでは薬事法に触れている記事も山ほどあるようです。
検索上位の記事を書くためだったら何をしてもいいのか。会社の利益は、そのルールを侵してまで求めなければいけないものなのか。今回の騒動がきっかけで、DeNAは大きな信頼を失いました。
その損失ははかりしれず、企業イメージの悪化にもつながりました。DeNAは、「ユーザーに有益となる情報を届ける」というユーザー目線の視点が欠けていたのかもしれません。
まとめ
DeNAをはじめとするキューレーションメディアの問題について、私なりの意見をまとめてきました。急成長していた分野だからこそ、その反響はとても大きく、私のようなライター業をする仲間内でも大きな話題となっていました。
今回の騒動がきっかけで、大手メディアの記事のチェック体制は厳しくなっていくでしょう。今後は情報の正確性が求められた、良質な記事を書けるライターが重宝されるようになると思います。
しかし、そこにお金をかけられないメディアや個人サイトでは同じようなことが繰り返される危険性もある。ネット上に溢れている情報が多すぎて、その全てに目を光らせるのは難しいという面もありますね。
情報を受け取る側のユーザーは、正しい情報を発信しているメディアを探すことが必要になってくるでしょう。そして、記事を書くライター一人ひとりがモラルをもって記事作成にあたるように心がけていかなければいけませんね。
光文社
売り上げランキング: 10,045