今や、インターネットや通信販売の効果的な手法として一般的な「エモーショナルマーケティング」。そのはしりとなるのが、神田昌典さんの「あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ」だ。
これまでの、ガッツや根性で顧客を集める手法は、もはや効果的ではない。むしろ、場合によっては、企業イメージにマイナスに作用することもあるのだ。そこでこれからは、顧客の感情(エモーション)に訴える広告戦略が必要だと、著者は述べている。
実際に、その中身を探ってみよう。
目次
金、商品、人がなくても「客」さえいればビジネスは成り立つ
ビジネスとは、一体何であろうか?ビジネスとは、端的に利益を追い求める活動のことだ。
もっと言えば、利益を求めること以外は、すべてオマケである。 つまり「個人的な感情を交えずに利益の追求のみを目的として進める仕事」こそが、ビジネスと言えるだろう。 いかにもアメリカ式な表現である。
そこで考えるべきなのが、ビジネスに必要な物は何かということだ。 まっさきに思い浮かぶのが「商品」である。 そして、もう少し考えると、資金や人も必要だと気付く。
しかし、実は、これらはビジネスの付随要素でしかない。 なぜなら、利益を与えてくれるのは、商品でも、資金でも、人でもない。 利益を与えてくれるのは「顧客」なのだ。
つまり、本当にビジネスに必要な物は、商品でも資金でも人でもなく、顧客なのである。 ゆえに、集客さえできれば、どんなビジネスでも成り立つことになる。
快楽を求めるか苦痛から逃れるか
どんな生命体でも、行動の動機は、次の二つに大別される。
- 快楽を求める
- 苦痛から逃れる
人によっては、人間なのだからもっと崇高な課題があると言うかもしれない。 しかし、その崇高な課題を解決することこそ、究極の快楽だろう。 また、誰かを救うことが動機だという人もいるかもしれない。 それはまさに、「誰かの苦痛を感じている自分の負の感情」から逃れる行為だ。
この二つの動機を理解することが、ビジネスを制することにつながる。 なぜなら、人は強い動機のもとに、お金を投じるからだ。 思い返してみてほしい。 今までに自分が、どんな動機でお金を使ってきたのかを。
原点は見込み客を集めること
ビジネスに必要なものが顧客なのだとしたら、そのために必要なのは「集客」だ。 これはすなわち、営業行為である。 本書の中で紹介されている集客の流れは、以下の様なものだ。
- 見込み客を費用対効果的に集める
- 成約して既存客にする
- 繰り返しの成約で固定客にする
もちろん、もっとも難しいのは①の見込み客を集めることだろう。 そのために企業はテレビ、ラジオ、看板、チラシ、インターネットなど、様々な媒体に資金を投じている。
ただ、費用をかければ良いというわけでもない。 費用対効果を考慮しなければ、利益を圧迫してしまうだろう。 いくら広告によって購買行動が盛んに行われても、利益を上げなければビジネスとして成り立たないのだ。
すぐにできる集客の3ステップ
そこで、効果的な見込み客獲得法が本書には紹介されている。 以下のものがそれだ。
- 情報ツールで興味のある人を集める(そのうち客)オファー
- 相手から専門家として手を上げてもらう
- 低価格商品などで成約までのスムーズな階段を作る
情報ツールとは、いわゆる無料小冊子やサンプル、pdfやe-bookのことだ。 それを潜在的な顧客にプレゼントすることで、見込み客に育てるのだ。
また、ツールには情報が満載なので、もっと詳しく知りたい人は、自ら質問してくることになる。 そこで、低価格商品をオススメし、最終的には本契約へと至るのだ。
重要なのは、それまでのプロセスが階段状になっていることである。 これによって、心理的ハードルが下がり、違和感なく成約へと至るのだ。
集客というより「創客」に近いだろう。
必要な情報を与えれば、売り込む必要がない
また、情報ツールやチラシ、広告で必要な情報を与えれば、無理に売り込む必要はなくなる。 従来の営業マンは、質問に答えるだけで良いのだ。 これまでの営業方法と比較すると、以下の様なメリットがある。
- 売り込みがないので、顧客が嫌がらない
- 相手に得はあってもリスクがない
- 次の行動を起こしてもらうために、必要な情報はすべて与えているので、迷うことがない
また、言葉の使い方が工夫されているのも面白い。 「無料サンプルをご希望の方は…」ではなく、「無料サンプルを送る「許可を」与えて下さい」としているのだ。この文句なら、自尊心がくすぐられるのも無理ないだろう。
集客は科学
最後に、「集客は科学」という言葉をご紹介しておきたい。
これまでに集客は、「やってみなければ分からない」という風潮があったように思う。 つまり、費用対効果が、非常に見えにくかったのだ。 だからこそ、湯水のように広告費を投下してしまうこともあったし、その成否は問題にならなかった。
本来なら、効果が出ない広告に使う資金など、誰も持ちあわせていないはずだ。 しかし、エモーショナルマーケティングにおいては、効果が計測できることが根底にある。 また、インターネット広告の多くも、効果が計測できるのが一般的だ。(CPA、CPC、CTA、ROIなど)
つまり、集客は、占いや運試しのたぐいではなく、科学であることを肝に銘じる必要があるのだ。 そしてそのことが、ビジネスの成否をわけるリスク回避へとつながる。
まとめ
顧客を前にして何を言うか。 集客のキモは、すべて、そこにかかっている。
それは、対面だけに限らない。 顧客と接触できるすべての場面で、どんなメッセージを配信しているのか。 常に意識することが肝要だろう。
本書ではこれら以外にも
- 認知的不協和
- 緊急性
などを利用して、いかにメッセージを開封してもらうかも掲載されている。 興味がある方は、ぜひ手にとっていただきたい。
あなたの会社が90日で儲かる!―感情マーケティングでお客をつかむ