書くための集中力②−やりたいことにもっと集中する方法−

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やりたくないこと(書きたくないけど書かなければならないとき)への集中について、「」という記事で詳しく解説しました。結論としては、対象への集中を目的にするのではなく、「早く終わらせること=時短=能率向上」を目指すべき、ということでした。

一方で、今回は「やりたいこと(書きたいこと)」についての集中について考えてみます。実は、その方面の知見としてはすでに確立されている方法論があり、ミハエル・チクセントミハイ氏の「フロー体験」がそれです。本稿では、その実践方法について解説します。

<参考文献>
・『フロー体験 喜びの現象学』M.チクセントミハイ
・『フロー体験入門』M.チクセントミハイ
・『グッドワークとフロー体験』M.チクセントミハイ
・『フロー体験とグッドビジネス』M.チクセントミハイ

■「フロー体験」とは

そもそもフロー体験とは、いま取り組んでいるものに対し、自らの心的エネルギーが100%そそがれている状態のことです。集中という観点から考えると、通常の集中よりさらに深く対象にのめり込んでいる状態、つまり「没頭」と表現できます。

「心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉がありますが、フロー体験をしているときは、向かっている対象以外にそうした感覚をもつかもしれません。いい意味での「心ここにあらず」であり、スマホをいじっているときに電信柱にぶつかるのもある意味同じ原理です。

■フロー体験をするための4つの条件+α

では、どのような状態のときにフローを体験することができるのでしょうか。チクセントミハイ氏は、主に以下4つの条件が必要だと述べています。

①適切な難易度
②自己統制感
③フィードバック
④集中できる環境

わかりやすく解釈すると、

①取り組んでいることが(対象者の能力に対して)ちょうどいい難しさで、
②その対象をコントロールできている感覚があり、
③行為や成果物に対する良し悪しがすぐ判断され、
④集中を阻害する要因がないこと(注意の散漫を避けられる)

さらに細かく分類すると、「目標の明確さ」や「活動の本質的な価値」なども必要とされているのですが、特筆すべき事項は上記4つに集約されています。

■具体的な行動に落とし込んでみよう

たとえば、「レポートを書く」という行為に落とし込んでみましょう。

「①適切な難易度」は、自分が知っていること、調べられることを、使える時間(期間)とその範囲内で書き上げられる分量をベースに、自らの能力に応じて難しいこと。

「②自己統制感」は、書くべきこと、求められる内容をよく理解しており、それに合わせて自ら文章をつむぐことができる感覚があることです。当然、語彙力や文章力も含みます。

「③フィードバック」は、書いているレポートの内容が良いものかどうか、判断できること。そのためには、内容、分量、てにおはなど、各評価軸を理解する必要があります。

最後の「④集中できる環境」は、レポートを書くための環境が整っていること。PC、机、椅子、空調はもちろん、騒音の有無や体調管理などにも配慮しなければなりません。

このような条件が満たされていれば、時間感覚や意識が希薄化し、対象に深く没入するフロー状態が体験ができると考えられます。

■フロー体験中は「集中している」ではなく「集中していた」

私自身、文章を書いているときにフロー体験をすることが多いのですが、そのときに感じるのは「時間がすっ飛ぶ」という感覚。気づいたときには時間が過ぎ、あたりは暗くなっている一方で、頭の中は興奮状態のせいか妙にハイになっている。そんな感じです。

その間のことは、取り組んでいた事柄のこと以外よく覚えておらず、しかし充実感があって空腹や疲労感もない。多幸感もあるような気がする。ここで大事なのは、そのときの集中は「さあ、集中しよう」というものではなく、「ああ、集中していたのか」ということです。

つまり、フロー体験中の集中は「行為としての意識的な集中」ではなく、対象に没頭していた「結果としての無意識的な集中」ということになります。そのときに、スキルとしての集中力など意味を為しません。動物たちのように、ただ無心に動いていただけなのですから。

■まとめ:集中は「行為」ではなく「結果」

結論:やりたいこと(書きたいこと)への集中は、行為ではなく結果。

フロー体験では、やりたくないことへの集中のように「集中しなきゃ!」と意識することなく、無意識に集中状態がやってきます。しかもその集中は、時間感覚や生理現象を一時的に麻痺させ、取り組んでいる対象以外のことを忘れてしまうほど深い没入状態です。

フロー体験が優れているのは、それが自己の成長に直結するためです。自己の能力に挑戦し、自ら最適な行為を判断・選択し、評価しながら、集中して成果を生み出していくこと。本当に好きなことを仕事にしている人は、だからこそ、大きな結果を残すのでしょう。

余談になりますが、それにしても、時間の感覚というのは不思議ですね。つまらない時給のアルバイトなどは1分1秒が長く感じられるのに、好きなことをしているときの1時間、1日、1週間というのは本当にあっという間です。

死ぬ間際に、人生、つまり美化された過去があっという間だったと感じるのも、そのせいかもしれません。そう考えると、フロー体験によって深い集中状態を作り続けることも大事ですが、ときには、そこで生み出されたものを見返したり、周囲と共有することも大事なのかもしれません。

<参考文献>
・『フロー体験 喜びの現象学』M.チクセントミハイ
・『フロー体験入門』M.チクセントミハイ
・『グッドワークとフロー体験』M.チクセントミハイ
・『フロー体験とグッドビジネス』M.チクセントミハイ

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