映画『マネー・ショート』は痛快である!日々、悶々と仕事をしているビジネスパーソンは絶対に見るべき理由

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世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち

映画『マネー・ショート』を見ました。一言で言うと、とっても“痛快”な映画でした。

舞台はリーマン・ショックから遡ること3年の2005年アメリカ。ある4人のトレーダーが予見した金融危機(リーマン・ブラザーズの破綻に端を発する世界同時株安)にまつわる人間ドラマとなっています。

こうした内容から、「よし! リーマン・ショックについていま一度、勉強しなおそう!」と考えて見る方もいるかもしれません。しかし、それはあまりオススメできません。なぜなら、『マネー・ショート』を見ても、「リーマン・ショックとはなんぞや」への理解は深まらないと思うからです。

※リーマン・ショックについて勉強しなおしたい方は、以下の書籍をオススメします。

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上)追いつめられた金融エリートたち

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下)倒れゆくウォール街の巨人

『マネー・ショート』はむしろ、ある程度の知識がある方が、裏側で何が起こっていたのかを知るために見るほうが合っていそうです。

※リーマン・ショックについてさらに理解を深めたい方は、以下の書籍がオススメです。

12大事件でよむ現代金融入門

リーマン・ショック 5年目の真実

ただ、見終わったいまだからこそ言えるのは、「いずれにしても、勉強のために見るのはもったいない」ということです。それよりも、見どころは他にあります

では、それはどこか。ズバリ「仕事に対する姿勢」です。映画のなかでは、実にさまざまな職業の人がでてきますが、それぞれ、仕事に対する姿勢は異なります。オフィスを裸足で動き回る人、いつもカリカリしている人、他人をバカにしている人、淡々と仕事をこなす人……。

ただし、見た目や態度は、仕事において(とくに成果をあげるために)必ずしも重要ではありません。それよりも重要なのは、「いかに真摯に取り組めるか」ということ。そういった視点で『マネー・ショート』を見ると、なぜこの4人が破綻を予測できたのか、わかる気がします。

わたし自身、ときに仕事に対してシリアスになりすぎてしまうときがあります。「なぜ目の前のこいつはヘラヘラしているんだ」と、心の底から、憎悪に近い感情が湧いてくることもある。それを他人は「気持ち悪い」「深く考えすぎ」「ついていけない」といった目で見ます。

でも、いいじゃないですか。真剣になりすぎても。いつもカリカリして、周囲に迷惑をかけてしまうのはどうかと思いますが、怒るときは怒ってもいいと思う。怒鳴るときは盛大に怒鳴ってもいい。そして、たとえ成果があがっても、裏側にいる人のことを考えてヘラヘラしないこと。

ブラット・ピット扮する伝説のトレーダー、ベン・リカートのセリフに、次のようなものがありました。

「億万長者になりたいんだろ?」

自分の仕事について、「理解されなくても構わない。ただ、自分の正義さえつらぬければ」といった気持ちがなければ、でてこない言葉だと思います。

世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)

目次

【序章】カジノを倒産させる
サブプライム・ローンの破綻に端を欲する世界同時恐慌。それを予測していた一握りの男たちのリスト私は入手する。彼らはカジノの裏をかいたのだろうか
【第一章】そもそもの始まり
住宅ローンを債券にして流通させる。市場の効率化に資するはずだったその発明は悪用され始める。サブプライムを草創期から分析していたのがアイズマンだ
【第二章】隻眼の相場師
モーゲージ債に疑いの目を向けたもう一人の男、バーリは医師だった。バーリはどうしたらば、モーゲージ債を空売りできるかを考え、ある保険に目をつける
【第三章】トリプルBをトリプルAに変える魔術
トリプルBの債券を集めれば、あーら不思議、トリプルAになってしまうCDO。その暴落への保険CDSを買うことがサブプライムをショートする方法だった
【第四章】格付け機関は張り子の虎である
ウォール街に就職できない人間が格付け機関に就職する。投資銀行にとって彼らの裏をかくことは朝飯前。アイズマンらはそのカラクリの究明に着手することに
【第五章】ブラック=ショールズ方程式の盲点
ノーベル経済学賞を受賞したそのモデルはしかし、オプションの期間が長くなればなるほど、結論の不合理性が増す。それに気がついた第三のグループが登場
【第六章】遭遇のラスヴェガス
サブプライム業界の人間が全員集合したラスヴェガスで、アイズマンも初めて買い方の人間とあいまみえる。信じられない虚飾の宴の只中で、正気なのはどちらか
【第七章】偉大なる宝探し
潮目が変わり始める。これまでCDSを気前よく売ってくれた投資銀行の態度が微妙に変わる。が、そこにいたっても格付け機関もSECも現実を見ようとしない
【第八章】長い静寂
ローンの債務不履行件数が記録的に増大したにもかかわらず、CDSは最安値を更新、バーリは投資家たちに責められる。が、やがてその「静寂」を破る鐘の音が
【第九章】沈没する投資銀行
モルガン・スタンレーのエリート部隊と目されていたハーウィーの部は、特注のCDSをつくって売りまくっていた。が、潮目が変わった今、それは死の財産だ
【第十章】ノアの方舟から洪水を観る
預言者たちは、ついにその大洪水を見る。栄華をほこったウォール街が沈没していく。が、預言者の敬われざるはその故郷のみ。バーリは、静かに退場していく
【終章】すべては相関する
そして私は、かつての上司、あの栄光のソロモンを率いたグッドフレンドに会う。すべてはあの決断、責任を外に求めることになるあの決断から始まっているのでは

著者

ルイス,マイケル
1960年ニューオリンズ生まれ。プリンストン大学から、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに入学。80年代のマネーカルチャーを創造した投資銀行ソロモン・ブラザーズでの体験を書いた『ライアーズ・ポーカー』で作家デビュー。

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