ついに日本でも、エボラ出血熱の脅威が現実のものとなりました。リベリアに滞在していたカナダ国籍の男性ジャーナリストが、羽田空港で発熱し、国立国際医療研究センターに搬送されたのです。
結果的には陰性で済んだものの、「日本でもエボラ出血熱!?」と戦慄した方は多いのではないでしょうか。日本が西アフリカからの渡航者を「入国拒否」にせず、エボラ出血熱への対策を「検疫体制の強化」で乗り切ろうとしている以上、日本でまん延するのも時間の問題かもしれません。
ところで、エボラ出血熱とは、どのような性質の病気なのでしょうか。ここで改めて確認しておきましょう。
・エボラ出血熱とは
エボラ出血熱とは、「エボラウイルス」に感染して発症する疾患です。主な症状としては、発熱や頭痛、嘔吐、下痢、発疹などがあります。インフルエンザに似ていますね。そのため、感染しているかどうかをサーモグラフィーや検温によって調べます。(基準では、38℃以上で指定医療期間に入院)
病名に「出血」とありますが、必ず出血するわけではありません。2日~21日間の潜伏期間を経て発症し、悪化した場合には歯ぐきや目、消化器官など、体中から出血します。そのため、止血が難しい状態に陥ってしまうことが多く、高い致死率を記録しています。(以下の「致死率について」参照)
患者の血液や吐しゃ物、汗、排せつ物に触れ、その手で傷口や目、備考の粘膜などにさわったりすると感染します。そのため、空気感染はしないとされていますが、飛沫(せきやくしゃみ)感染はするとの見解が一般的です。
・致死率について
エボラ出血熱は、その高い致死率によって大きな脅威とされています。ウイルスの型で異なるのですが、致死率は25%~90%と高く、世界中の感染者数およそ1万人に対して死亡者数は約5千人(世界保健機関 2014.10.25時点)。2人に1人が亡くなっている状況は、国ごとの衛生管理の違いはあるとしても、深刻な被害と言えるでしょう。
アメリカの疾病対策センターが発表した指標によると、感染のリスクは以下の順に高くなっています。
- 「エボラ患者の血液などに接触」→経過観察対象。旅行や移動の制限。
- 「エボラ患者の約90センチ以内に接近」→経過観察対象。状況によって、旅行や移動の制限。
- 「感染が拡大している国に滞在」→経過観察対象。移動の制限はなし。
- 「症状が出る前のエボラ患者と接触」→経過観察不要。移動の制限なし。
・現在の被害状況
世界保健機関(WHO)の発表によると、10月23日までの合計で、エボラ出血熱の感染者数が(疑わしい人も含めて)1万141人に達したとのこと。うち死者数は4922人。集計は感染者を確認した8カ国が対象です。
主に、西アフリカに位置するリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国で感染が拡大しています。最近では、米国でも感染が確認され、入国時のチェック体制を強化するなど、対策が急がれています。
ただ、国際社会がリベリアなどの3カ国を支援しようしている状況で、不必要な制限ができないのも事実。強制隔離などが人権侵害にあたるとする批判の声もあがっており、先進国ほど過剰反応を控える傾向にあると言えそうです。
・入国制限する国も
一方で、オーストラリアのように、西アフリカからの入国制限をしている国もあります。具体的な内容は、①西アフリカからの移民の受け入れ中断、②非永住ビザと短期滞在ビザでの入国を拒否、③永住ビザ保有者は渡航前に現地で21日間の隔離などです。
また、アフリカ内においても、モーリアニアが隣国のマリで感染者が死亡したことを受け、マリとの国境を封鎖しています。ケニアや南アフリカ、中南米のコロンビアやマリでも、ビザ発給の停止などで入国制限に踏み切りました。
現時点では、水際対策をしっかりやることが重要と話す日本の外務省も、今後は方針を変えるかもしれません。
・日本の対応とまん延の可能性
日本国内での感染を防ぐこともそうですが、問題はそれだけではありません。たとえば、情報公開のあり方について。厚労省は、プライバシー保護や混乱防止のため、感染疑いの段階での公表は想定していませんでしたが、今回、一転して疑いのある患者を搬送したことを認めました。
加えて、水際対策の限界も指摘されています。国際線の旅客便が就航するのは、羽田空港をはじめとする検疫体制の整った大規模空港だけではありません。すべての空港で対応できるだけの人員不足も懸念されています。さらに、滞在の自己申告制、隔離の説得について、医療機関の対応に関する研修など、課題は山積しているのです。
ただ一方で、万が一感染が拡大した場合の防護策も整えているとのこと。厚労省の発表によると、エボラ出血熱への治療効果が期待されている『アビガン錠』を、2万人分備蓄しているそうです。アビガン錠は抗インフルエンザ薬であり、エボラ出血熱の治療薬としては未承認ですが、ウイルスの増殖を防ぐ効果があるとされています。
まとめ
・エボラ出血熱は、「エボラウイルス」による感染症
・インフルエンザと似た、発熱や頭痛、嘔吐、下痢、発疹などが主な症状
・致死率は最高で90%と高い
・空気感染はしないが、患者の血液などの体液に触れると感染する
・2日~21日の潜伏期間があるため、経過観察が対策として重要
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