執筆のような高度な集中力が求められる活動には、「環境整備」が欠かせません。環境整備とは、その活動を行う場をより良いものにすること。環境を整備することによって、集中力が高まり、生産性向上につながります。
たとえば文章を書く場合であれば、普通、静かな環境を求めるかと思います。なぜなら、余計な音があることによって気が散り、集中力が途切れてしまうからです。それでは、納得のいく執筆はできないでしょう。
ただ一方で、音の有無については個人差があります。これは、実際に試してみないとわからないのですが、まったく音がしない環境を好む人もいれば、わずかな雑音があった方がいいという人もいますし、雨音なら許容できるという人もいるでしょう。
いずれにしても、自分がどのような音の環境を好むのか理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。普段は静かな環境を好む人も、執筆するのではなくアイデア出しをするときは、あえて雑音がある場所を選んでみるのもひとつの手です。
そうすることによって、脳が普段とは異なる状況になります。周囲の雑音が刺激となり、いつもとは違う発想が生まれやすくなるのです。場合によっては、それが集中力の向上につながり、作業がはかどるということもあるでしょう。
このように、環境に左右されるのは執筆業だけではありません。クリエイティブな発想が求められるあらゆる創作活動に加えて、手作業や細かい業務、日々の事務作業まで、集中力をいかに高められるかが求められています。
たとえばメガネのJINSでは、「世界で一番集中できる場所」というコンセプトのワークスペース「Think Lab」を開発し、一般にも提供しています。このような取り組みはまさに、「集中×場所」を追求した結果と言えるのではないでしょうか。
・Think Lab
https://thinklab.jins.com/jp/ja/
とくに現代は、個々人が自分の集中できる環境について知らなければなりません。環境整備という文脈で言うと、どのような作業をするときに、どのような環境が最適なのかを、具体的に、掘り下げておく必要があるのです。
無音と雑音の違いなどはまさにそうで、どちらが向いているということもあるのですが、作業内容による違いや生産性、時間、求める成果など、あらゆる視点から「最適な環境」について検討しておくことが大切です。
また、可能であれば、その裏側にある理論についても知っておくといいでしょう。たとえば、「なぜ雑音があると集中できるのか」を調べてみると、ホーソン実験から最新の研究結果まで、幅広く入手することができます。
そのような理論をふまえたうえで、自分自身の身体でどのような変化が生じるのかを実験してみること。理論だけでなく、個体差をふまえた実感地としてとらえることによって、より良い環境へと近づいていけるはずです。
確固たる実験や数値に裏付けされた理論を知ることも大事なのですが、それだけで満足し、実践してみないことには本当にいいかどうかは判断できません。無音も騒音も、個人差があり、また何をするかによっても変わってきます。
そうした前提があることを理解し、知ることと行動することをくり返していきましょう。ときには、思わぬ発見があるかもしれません。自分にとっての最高の環境というのは、そのようにして構築されていきます。
また、探求には終わりがありません。なぜなら、年齢や職業などシチュエーションによって、良し悪しが変わってくるからです。過去の経験から判断しようとする人も多いのですが、自分自身もふくめてあらゆるものが変化している以上、経験はすべてではありません。
裏付けとなる理論も、自らの心身も変化しています。そうであるなら、常に身体感覚を研ぎ澄ませて、ゼロベースで「良い環境」と「悪い環境」を判断したほうが良さそうです。その習慣が、環境整備を洗練させます。
より良い作業環境を求めて、日々、改善していきましょう。
■まとめ
・集中力は環境に左右される
・良質な環境は人や作業によって異なる
・ゼロベースで最適な環境を追求しよう