公務員試験において、作文・小論文は「人物評価」の最重要科目です。
学力試験が同点の場合、作文の出来が最終的な合否を決めることも少なくありません。実際、某政令指定都市の採用担当者は「作文で受験者の思考力・人間性・適性の8割が見える」と語っています。
この記事では、過去10年分の出題傾向分析をもとに、頻出テーマ、高得点を狙える構成法、そして実際に合格者が書いた例文を詳しく解説します。
採点官が見ている「5つの評価軸」
評価配点の目安(100点満点)
評価軸 | 配点 | チェックポイント | よくある減点理由 |
---|---|---|---|
課題把握力 | 20点 | テーマを正確に理解し、論点がズレていないか | 「○○について」を無視して自論を展開 |
論理構成力 | 25点 | 序論→本論→結論の流れが明確か | 唐突な話題転換、結論の欠如 |
具体性・説得力 | 20点 | 具体例やデータで裏付けているか | 抽象論に終始、「頑張ります」の連発 |
公務員適性 | 25点 | 公共性・中立性・奉仕精神が表れているか | 個人的価値観の押し付け、偏った主張 |
文章表現力 | 10点 | 誤字脱字、適切な敬語・文体か | 話し言葉の混入、「~的な」の多用 |
合格ライン:65~70点以上(自治体により異なる)
2025年度 頻出テーマ完全リスト
【最重要】出題率70%以上のテーマ
1. デジタル化・DX系
- 「行政サービスのデジタル化について」
- 「AIを活用した業務効率化」
- 「デジタルデバイドへの対応」
出題例(2024年 東京都):
デジタル技術の進展により、行政サービスも大きく変わろうとしています。一方で、高齢者などデジタルに不慣れな方への配慮も必要です。あなたが公務員として、どのようにバランスを取りながら施策を進めるか、800字以内で述べなさい。
2. 地域課題系
- 「人口減少社会における地域活性化」
- 「空き家問題への対応」
- 「地域防災力の向上」
3. 社会的包摂系
- 「多様性(ダイバーシティ)の推進」
- 「子育て支援の充実」
- 「高齢者の社会参加」
【重要】出題率40-60%のテーマ
カテゴリ | 具体的テーマ | 最近の傾向 |
---|---|---|
環境・SDGs | 脱炭素社会、循環型社会、持続可能なまちづくり | ESG視点を含む出題増加 |
協働・連携 | 官民連携、住民参加、NPOとの協働 | 具体的な連携方法を問う |
危機管理 | 感染症対策、自然災害、情報セキュリティ | 複合災害への対応 |
働き方改革 | ワークライフバランス、業務効率化、職員育成 | 公務員自身の働き方 |
【注目】新傾向テーマ(2023年以降急増)
- 「生成AIの行政利用における倫理的課題」
- 「孤独・孤立対策」
- 「関係人口の創出」
- 「グリーントランスフォーメーション(GX)」
高得点を狙える「黄金の構成テンプレート」
基本構成(800字の場合)
【序論】100-150字
├─ 現状認識(データや事実を含める)
└─ 問題提起(なぜ重要な課題なのか)
【本論】500-550字
├─ 原因分析(200字)
│ └─ 背景にある要因を2-3点指摘
├─ 解決策提示(250字)
│ ├─ 短期的施策
│ ├─ 中長期的施策
│ └─ 具体例(他自治体の成功例など)
└─ 予想される効果(100字)
【結論】100-150字
├─ 公務員としての決意表明
└─ 目指す社会像・ビジョン
【重要】構成の黄金比
- 序論:本論:結論 = 1:5:1
- 課題提示:解決策 = 1:2
- 抽象論:具体例 = 1:1
合格レベルの例文(3パターン)
例文1:デジタル化推進【評価点:85/100】
テーマ:「誰一人取り残さないデジタル化」(800字)
我が国では、行政手続きのオンライン化率が約60%に達した一方、65歳以上の高齢者のうち約30%がインターネットを利用していないという現実がある。デジタル化による利便性向上と、デジタルに不慣れな方への配慮をいかに両立するかが、今後の行政サービスの重要な課題である。
この課題の背景には、三つの要因がある。第一に、急速なデジタル化に対する不安や抵抗感である。第二に、機器操作の複雑さや専門用語の難しさである。第三に、対面でのサポート機会の不足である。これらが複合的に作用し、デジタルデバイドを生んでいる。
解決策として、私は「段階的デジタル化」と「伴走型支援」の組み合わせを提案する。まず短期的には、デジタル窓口と従来窓口の並行運用を維持しつつ、職員が積極的にデジタル機器の操作を支援する「デジタルコンシェルジュ」を配置する。中長期的には、地域のICT企業やNPOと連携し、公民館等でのスマートフォン教室を定期開催する。実際に、福岡市では高齢者向けスマホ教室の参加者の80%がオンラインサービスを利用できるようになったという成果がある。
これらの施策により、デジタルサービスの利用率向上だけでなく、高齢者の社会参加促進や世代間交流の活性化も期待できる。
私は公務員として、技術の恩恵を全ての住民が享受できる社会を目指したい。デジタル化は手段であり、目的は住民の幸福度向上である。この視点を忘れず、一人ひとりに寄り添った行政サービスの実現に尽力する決意である。
【採点者コメント】
- ◎ データを用いた現状分析が的確
- ◎ 短期・中長期の施策が具体的
- ◎ 他自治体の成功例を効果的に活用
- △ もう少し独自性のある提案があるとなお良い
例文2:地域活性化【評価点:82/100】
テーマ:「持続可能な地域づくり」(800字)
全国の約半数の自治体が2040年までに20~39歳の女性人口が5割以上減少する「消滅可能性都市」に該当するという衝撃的な推計がある。人口減少が避けられない中、いかに地域の活力を維持・向上させるかが喫緊の課題となっている。
この問題の本質は、単なる人口減少ではなく、地域の「つながり」の希薄化にある。若者の流出、高齢化、産業の衰退という負の連鎖が、地域コミュニティの基盤を揺るがしている。従来の定住人口増加策だけでは限界があることは明らかである。
私は「関係人口」の創出と「地域資源の再定義」による活性化を提案する。具体的には、ワーケーション環境の整備により都市部企業との接点を作り、地域の課題解決に外部人材を巻き込む。例えば、徳島県神山町では、IT企業のサテライトオフィス誘致により、10年間で約30社が進出し、200人以上の雇用を創出した。また、地域の伝統産業や自然環境を「学びの資源」として再定義し、教育旅行や企業研修の受け入れを推進する。島根県海士町の「島留学」は、全国から生徒を集め、地域に新たな活気をもたらしている。
これらの取り組みにより、人口は減少しても地域への関わりを持つ人々が増え、イノベーションが生まれる土壌が形成される。
公務員として、私は地域の「コーディネーター」の役割を果たしたい。内と外、伝統と革新、様々な要素をつなぎ、地域の新たな価値を創造することで、真に持続可能な地域づくりに貢献する所存である。
【採点者コメント】
- ◎ 問題の本質を的確に捉えている
- ◎ 具体的な成功事例を複数提示
- ◎ 公務員の役割を明確に定義
- △ 予算や実現可能性への言及があるとより説得力が増す
例文3:災害対応【評価点:80/100】
テーマ:「災害に強いまちづくり」(600字)
近年、気候変動により「100年に一度」と言われた災害が毎年のように発生している。ハード面の防災対策には限界があり、ソフト面での「災害レジリエンス」の構築が急務である。
課題は、住民の防災意識の風化と地域防災力の低下である。災害直後は意識が高まるものの、時間とともに薄れ、自主防災組織の活動も形骸化しがちである。また、高齢化により避難行動要支援者が増加する一方、支援の担い手が不足している。
解決策として、「日常と防災の融合」を提案する。防災訓練を地域イベントと組み合わせ、楽しみながら防災スキルを身につける機会を創出する。静岡県掛川市の「防災キャンプ」では、参加率が従来の3倍に増加した。さらに、中学生を「防災ジュニアリーダー」として育成し、高齢者のデジタル避難支援を担ってもらう。平時はスマホ教室の講師を務め、顔の見える関係を構築する。
公務員として、私は「つなぐ」ことを使命としたい。行政・住民・企業・学校をつなぎ、オール地域で災害に立ち向かう体制を構築する。一人ひとりの命を守り、安心して暮らせるまちの実現に全力を尽くす決意である。
【採点者コメント】
- ◎ 現代的な課題設定
- ◎ 「日常と防災の融合」という視点が独創的
- ○ 具体例が効果的
- △ 600字という制限の中でもう少し深掘りできる部分あり
よくある失敗パターンと改善策
❌ 失敗例1:抽象論の羅列
Before:
公務員として頑張りたいと思います。住民のために全力を尽くし、より良い社会を作りたいです。
After:
公務員として、まず現場に足を運び、住民の生の声を聞くことから始めたい。月1回の地域懇談会を開催し、課題を可視化した上で、優先順位をつけて解決に取り組む。
❌ 失敗例2:個人的価値観の押し付け
Before:
私は○○が絶対に正しいと考える。反対する人は理解が足りない。
After:
○○という考え方もある一方、△△という視点も重要である。多様な意見を踏まえ、最大多数の利益となる施策を検討したい。
❌ 失敗例3:実現不可能な理想論
Before:
全ての問題を1年以内に解決する。予算は無限に使えるはずだ。
After:
限られた予算と人員の中で、費用対効果を検証しながら、優先度の高い施策から段階的に実施する。
作文力を劇的に向上させる「7日間集中メソッド」
Day1-2:インプット期
- 志望自治体の総合計画・施政方針を読む
- 過去3年分の出題テーマを分析
- 模範解答を10本以上読んで型を体得
Day3-4:構成練習期
- テーマを見て5分で構成メモを作る練習(1日10テーマ)
- 序論だけ、結論だけを書く部分練習
Day5-6:実践期
- 時間を計って800字作文を2本/日
- 異なるテーマカテゴリから選択
Day7:仕上げ期
- 書いた作文を音読して推敲
- チェックリストで自己採点
- 改善版を作成
直前対策チェックリスト
試験1週間前
- [ ] 頻出テーマ10個の構成をすらすら言える
- [ ] 志望自治体の重点施策を3つ以上挙げられる
- [ ] 時間内に800字書き切れる
- [ ] 具体例を5つ以上ストックしている
試験前日
- [ ] 筆記用具の確認(消せるボールペンは使用不可)
- [ ] 時間配分の最終確認(構成5分、執筆35分、見直し5分)
- [ ] 定型表現の最終チェック
試験当日
- [ ] テーマを正確に把握(「○○について」を見落とさない)
- [ ] 構成メモを必ず作成
- [ ] 結論を先に決めてから書き始める
- [ ] 5分前には見直しを開始
まとめ:合格への3つの鉄則
鉄則1:「型」を徹底的に身につける
作文は創作ではありません。評価される型があります。まずは型を完璧にマスターし、その上で独自性を出しましょう。
鉄則2:具体例とデータで差をつける
抽象論では評価されません。具体的な数字、他自治体の事例、実体験を必ず含めることで、説得力が格段に上がります。
鉄則3:公務員としての視点を忘れない
個人の意見ではなく、公共の利益を第一に考える姿勢を示すこと。中立性、公平性、奉仕の精神を文章全体に織り込みましょう。
追加リソース
📚 推奨参考書
🔗 有用なWebサイト
- 各自治体の総合計画(必読)
- 総務省「地方自治体の課題と取組」
- 内閣府「Society5.0」
💡 練習用テーマ集(50題)
[別紙参照:頻出順に整理された50のテーマと解答のポイント]
無料プレゼントPDF「頻出50テーマと解答ポイント」には以下の特徴があります:
主な特徴
1. 実用的な分類
- 6つのカテゴリーに整理(デジタル化、地域課題、福祉、防災、環境、公務員資質)
- 出題率を★の数で表示(★★★最頻出、★★頻出、★要注意)
- 優先順位が一目でわかる構成
2. 各テーマの充実した解答ポイント
- 3-4個の具体的な論点を提示
- キーワードや具体例を併記
- 成功事例や関連データを追加
3. 即戦力となる情報
- 最新トレンド(生成AI、GX、関係人口など)を網羅
- 2024-2025年の重要キーワード集
- 汎用的な結論テンプレート3パターン
4. 学習計画の提示
- 3段階の練習方法(テーマ別→横断的→実戦)
- 50日間での完全マスタープラン
- 時間配分まで含めた具体的指示
5. 実践的な付加価値
- STAR法など回答テクニック
- 具体的な数値目標(2050年カーボンニュートラル等)
- 関連法規や制度名を明記
この資料があれば、受験生は体系的かつ効率的に作文対策を進められます。各テーマの解答ポイントを押さえることで、どんな出題にも柔軟に対応できる力が身につくはずです。
最後に: 作文は練習量に比例して必ず上達します。この記事の内容を実践すれば、合格レベルの作文が書けるようになります。諦めずに練習を続け、夢の公務員合格を掴み取ってください!
#公務員試験 #作文対策 #小論文 #公務員になりたい
コメント