【原稿公開】無事、慶應義塾大学70期試験(法学部)に合格したので、合否をわける「志望理由書(小論文)」について解説します

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先日、慶應義塾大学通信科の受験結果が送付されました。無事合格し、はれて4月から慶應義塾大学70期の大学生(慶應ボーイ)となります。大学生になるなのは実に10年ぶりのこと。ちゃんと卒業できるかしらん。

ところで、これから慶應義塾大学の通信科を受けようと考えている方ならご存知かと思いますが、受験のポイントは「小論文(志望理由書)」です。つまり、小論文のできが合否をわけることになります。

そこで今回は、実際にわたしが作成した原稿をもとに、「慶應義塾・志望理由書対策(小論文)」を考えてみたいと思います。これから受験される方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

論文の詳しい書き方についてはコチラ:論文の書き方


提出する小論文はぜんぶで3つ

まず、「学生募集要項」および「志望理由書」に書かれている問題文を確認してみましょう。次のとおりです。

下記の項目について記入してください。出願者本人の自筆、横書き、黒か青のペンまたはボールペン使用のこと

(1)大学で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習経験、②将来の展望、に触れながら、志望した学部(類)に関連させて述べなさい(720文字以内)

(2)自分の学びたい学問領域にかかわる書籍を一冊選び、概要をまとめた上で、自身の視点から論評しなさい。(720文字以内) ※著者名、本のタイトル、出版社名も記入してください。

(3)なぜ、慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのかを述べなさい。(150字以内)

大きく3つの質問があり、「①大学で何を学ぶ気なの?」「②どんな書籍読んでるの?(入学するだけの下地はあるの?)」「②なんで慶応の通信なの?」に答える内容となっています。

つまり、「あなたが慶応に入学するのにふさわしいと思う理由を論じてね」ということです。

ネット上の情報を拝見するかぎり、上記のポイントから大きくハズレていなければ、まず合格できるかと思います。公表されてはいませんが、合格率もかなり高いようですし。

ただし、どんな試験でもそうですが、ルールは絶対に守ること。「出願者本人の自筆、横書き、黒か青のペンまたはボールペン使用のこと」と書かれているのに、黄色のマッキーで記載しないこと。まあ、そんな人はいないと思いますが。

1.大学で何を学ぼうとしているのか

(1)大学で何を学ぼうとしているのか、①過去の学習経験、②将来の展望、に触れながら、志望した学部(類)に関連させて述べなさい(720文字以内)

すでに、問題文にポイントが記載されています。「①過去の学習経験」と「②将来の展望」です。この2点について述べつつ(根拠)、志望した学部(類)への応募理由を論じることになります。

簡単に論理展開をまとめると、「わたしはこんな経験をしてきて」「将来はこうなりたいから」「慶応義塾大学の◯◯部◯◯科を志望しています」となります。

わたしの原稿(初稿)

私は法学部乙類(政治学科)を志望している。そこでは、政治学そのものだけでなく、社会学、法律学、経済学などの社会科学についても、広く学びたいと考えている。その理由を、過去の学習経験および将来の展望にからめて、ここに論じる。

私はこれまで、フリーランスのライターとして、数多くの取材および執筆業務に従事してきた。その過程で感じた課題は、共通言語の少なさによる無理解である。橋渡しとなる言語力が乏しいために、コミュニケーションに支障をきたしているのは大きな問題だ。

とくにそれは、政治の場において顕著だと思われる。民主主義社会において、本来、権力への監視という役割を担うべき国民が、理解できないあるいは理解したくないという理由から、政治と距離をおいている。しかも、意図的にではなく無意識的に。その溝を埋めるために、今の私はあまりに無力である。

私が政治学のみを学んでも、日本における政治への理解は進まないであろう。しかし、社会のあらゆる側面を伝える側の人間として、政治学および他の関連する学問を真摯に学び続けることが、社会貢献につながるのは間違いない。そう確信したとき、大学卒業から十余年ほど経過している私が行き着いたのは、慶応義塾大学通信教育過程であった。

「真理は間違いから逆算される」と言ったのは哲学者の鶴見俊輔だが、そもそも間違いが生じるであろう状況を放置するのは、今を生きる人の怠慢である。私たちメディアの人間は、つねに学び続け、間違いの芽をあらかじめ摘まなければならない。それが、政治学および他の学問をあわせて学ぼうとする、私の動機である。

わたしの原稿(推敲後)

私は法学部乙類(政治学科)を志望している。そこでは、政治学だけでなく、社会学、法律学、経済学などの社会科学についても、広く学びたいと考えている。その理由を、過去の学習経験および将来の展望とあわせて、ここに論じる。

私はこれまで、フリーランスのライターとして、数多くの取材および執筆業務に従事してきた。その過程で感じたのは、他分野および異業種間における、共通言語の少なさである。橋渡しとなる言語が乏しいために、コミュニケーションに支障をきたしているのだ。

たとえば同じ会社内においても、営業部と企画部では異なる考え方をしている。企業の発展には、相互の連携を図ることが何よりも重要だが、実際には建設的な議論ができていない。

とくに顕著なのが政治の現場だ。本来、権力への監視という役割を担うべき国民が、共通言語が少ないために、政治と距離をおいている。結果、民主主義の根幹がゆらいでいる。こうした現状に対し、メディア関係者としていたたまれない思いがある。

社会のあらゆる側面を、伝える側の人間として、政治学および他の関連する学問を真摯に学び続けることが社会貢献につながるのは間違いない。そう確信したとき、大学卒業から十余年ほど経過している私が行き着いたのは、慶応義塾大学通信教育過程であった。

「真理は間違いから逆算される」と言ったのは哲学者の鶴見俊輔だが、間違いが生じやすい状況を放置するのは、今を生きる人の怠慢である。メディアの人間は、つねに学び続け、間違いの芽をあらかじめ摘まなければならない。それが、政治学および他の学問をあわせて学ぼうとする、私の動機である。

2.書評

(2)自分の学びたい学問領域にかかわる書籍を一冊選び、概要をまとめた上で、自身の視点から論評しなさい。(720文字以内) ※著者名、本のタイトル、出版社名も記入してください。

次に書評です。こちらもポイントは問題文に記載されています。選ぶ本は「学びたい学問領域にかかわる書籍(ex.法学部甲類(法律学)なら憲法の本など)」になります。ちなみにわたしは、法学部乙類(政治学)を志望したので、丸山眞男の『日本の思想』を選びました。

小論文では、「概要をまとめ」て、「自分の視点から論評」することになります。

論評とは、「論じて批判する」ことですが、あまり神経質にならなくてもいいかと思います。「本書の論旨はこうだが、私は賛成だ(反対だ)。なぜなら~(論拠を示す)」といった流れで構成すれば、自然と論評になります。

ただし、論文である以上、事実に基づいた明確な記載が必要となります。「本書にはこう書かれているが、わたしの経験では違うので賛同できない」では、ただの感想文になってしまいます。論じる対象を明らかにし、根拠を示すことが大切です

また、「批判」という言葉は、一般的に「非難・悪口」といったマイナスの使われ方をしていますが、学問的には「評価する」「吟味する」といった意味になります。カントの『純粋理性批判』 などは、「理性に対する考察」ぐらいな意味ですよね。

わたしの原稿(初稿)

『日本の思想』丸山真男/岩波新書

本書は「日本の思想」「近代日本の思想と文学」「思想のあり方について」「『である』ことと『する』こと」という、四つの文章から成り立っている。総じて日本における思想の変遷および歴史的背景を論じたものだ。

たとえば「日本の思想」では、開国前後の日本思想に焦点をあてることで、当時の日本人における思考のクセを鮮やかに描いているし、「近代日本の思想と文学」では、「政治―科学―文学」の各分野におけるマルクス主義の影響を比較することで、それぞれの変化および特徴を浮かび上がらせている。

とくに留意したいのは、「異質的な思想が本当に『交』わらずにただ空間的に同時存在している(71項)」という言葉だ。著者の主張は、現代においても的を射ているように思う。

議論により、それぞれのイデオロギーが弁証法的に高められることもなく、外来思想は新しいという理由だけで評価され、堆積されるだけ。思想における寛容さと不寛容さとの境界があいまいなために、過敏症と不干渉が交互にただ反動的にくり返される。それぞれの分野に閉じこもり、相互のコミュニケーションは希薄だ。

ただし、対策としては、「異なった価値基準でものを考えていた知的サークルが交通し会話すること(72項)」だけでは不十分だろう。それは、2010年ごろに巻き起こった「サンデルブーム」が、一過性の盛り上がりだけで収束してしまった事実をみれば明らかだ。

必要なのは、各分野の垣根を越えた共通言語の整備ではないだろうか。なぜなら、理解を背景としない会話は、無理解と反発を生むだけだからだ。そして、共通言語を提供するのは、次代を担うメディアや政治の責務である。

わたしの原稿(推敲後)

『日本の思想』丸山真男/岩波新書

本書は「日本の思想」「近代日本の思想と文学」「思想のあり方について」「『である』ことと『する』こと」という、四つの文章から成り立っている。総じて日本における思想の変遷および歴史的背景を論じたものだ。

たとえば「日本の思想」では、開国前後の日本思想に焦点をあてることで、当時の日本人における思考のクセを鮮やかに描いている。

とくに留意したいのは、「異質的な思想が本当に『交』わらずにただ空間的に同時存在している(71項)」という言葉だ。現代においても通底している指摘だと言えよう。

議論により、それぞれのイデオロギーが弁証法的に高められることもなく、外来思想は新しいという理由だけで評価され、堆積されるだけ。思想における寛容さと不寛容さとの境界があいまいなために、過敏症と不干渉が交互にただ反動的にくり返される。それぞれの分野に閉じこもり、相互のコミュニケーションは希薄だ。

もっとも、こうした現状を打開するには、「異なった価値基準でものを考えていた知的サークルが交通し会話する(72項)」だけでは不十分だろう。それは、2010年ごろに巻き起こった「サンデルブーム」が、一過性の盛り上がりだけで収束してしまった事実をみれば明らかだ。

必要なのは、各分野の垣根を越えた共通言語の整備ではないだろうか。なぜなら、理解を背景としない対話は、無理解と反発を生むのみだからだ。そして、理解の潤滑油となる共通言語を提供するのは、次代を担うメディアや政治の責務である。

3.なぜ、慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのか

(3)なぜ、慶應義塾大学の通信教育課程を選んだのかを述べなさい。(150字以内)

最後に、慶応義塾大学の通信教育課程を選んだ理由です。上記2題にくらべて150文字と短いですが、短いだけにまとめるのに苦労します。

ここでポイントとなるのは、「慶応義塾大学」の「通信教育課程」を「選んだ理由」です。法政大学の通信でもなく、慶応大学の通学課程でもなく、なぜ慶応義塾大学の通信教育課程を選んだのかを簡潔に述べる必要があります。

「なんとなく良さそうだから」「人から勧められたから」という人は、ここで明確な理由を述べることができません。説明会に足を運び、資料を読み込み、書籍やネットその他の媒体で情報収集を重ねる。それでもやっぱり行きたい。なぜなら……といったことを述べます。

過度にヨイショする必要はないと思いますが、慶応義塾大学の通信ならではの優れているところ(強み)、他にはないところ(特徴)などは押さえておきたいですね。「わたしのどこが好きなの?」「いや、なんとなく……」では困ります。

わたしの原稿(初稿)

慶応義塾大学を選んだ理由は、政治学だけでなく、法律学、経済学などをあわせて履修できる点にある。政治学の特性上、これらの学問をあわせて学ぶことは、習熟度を高めるために必須である。

とくに私は、それぞれの専門家がそれぞれの専門知識(あるいは専門用語)を用いて議論していては、建設的な議論ができないと考えている。必要なのは「橋渡しとなる」知識であり共通言語だ。私は慶応義塾大学でそれを学びたい。

一方、通信教育を選んだ理由は2つある。1つは消極的な理由から。フリーランスとして仕事をしているので、安定的な時間の確保が困難なためだ。2つ目は積極的な理由から。書籍をベースとした独習こそ、自立した人間として政治を学ぶのにもっともふさわしい体系だと考えたためである。

わたしの原稿(推敲後)

慶応義塾大学を選んだ理由は、政治学だけでなく、法律学、経済学などもあわせて履修できるためだ。加えて歴史も実績もある。

一方、通信教育を選んだ理由は2つだ。フリーランスなので安定的な時間が確保できないこと、および書籍をベースとした独習こそ、自立した人間として政治を学ぶのに最適だと考えたためだ。

まとめ

全体をとおして「初稿のほうがいいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。実は、そこがもっとも苦慮するところです。いくら満足のいく論文を書けたとしても、字数(ルール)を超えて提出することはできません。

だからこそ、ひととおり書き終えたら、早めに字数合わせをしておくことをオススメします。「さあ清書しよう」と思ったときに、字数が多すぎて調整に時間がかかってしまったというのは、ありがちなことです。

入学試験の小論文は、まさに、大学へのラブレターのようなもの。好きな理由と、将来どうなりたいのかを述べて、想いを伝えましょう。ただし、論理的に。小論文を執筆するうえで、なにかご相談したいことがあれば、遠慮なくお問い合わせいただければと思います。

 

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コメント

  1. 橋田 より:

    参考にさせていただいています。
    書評の学術書について、より詳しくお話をお伺いすることは可能でしょうか。

    • 山中 勇樹 より:

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