名文は「頭」と「心」から生まれる『文は一行目から書かなくていい』藤原智美

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文は一行目から書かなくていい - 検索、コピペ時代の文章術

文は一行目から書かなくていい - 検索、コピペ時代の文章術

「どうすれば名文が書けるのか?」

文章を書くすべての人にとって、最大にしてたったひとつの疑問である。作品の数だけ、文章の数だけくり返されてきた問い。クリエイターにとっては苦しみと至福のとき。

しかしそう楽しんでばかりはいられない。 今すぐに書かなければならない文章もあれば、今すぐに文章スキルを上達させたい人もいる。文章が必要なのはクリエイターだけじゃない。学生も、ビジネスマンも、ときには主婦や子どもにも必要だ。

『文は一行目から書かなくていい ― 検索、コピペ時代の文章術』には、こう書かれている。

「伝わる」文章を書くことの秘訣を一つにまとめるとすると、それは日々の心の動きをないがしろにせず、自分の内面に目をとめて、それを言葉として残しておくこと以外にないのです。


大切なのは“自分”

誰にでも書ける文章に価値はない。

歯車のひとつになりたくないと思いながら、歯車として働いているサラリーマン。代わりは他にもたくさんいる。独自の能力や経験を生かせなければ、人材としての価値は限定的になる。

文章もまた同じである。どこかで借りてきたような、どこかに書いてあるような文章を求めているひとはいない。人を惹きつける魅力がなければ相手にされない。情報過多の現代ならなおさらだ。

では何を書けば良いのか?書くべきは「自分で考えたこと」である。

優れた文章を書く秘訣

ポイントは次の3つだ。

1.心の動きを書きとめる

自分の心を動かさない文章は、他人の心も動かさない。

「書き手が涙を流して書いたようなものでなければ、読み手が涙を流すことはない」と言ったのはフロイトだ。文章を書くたびに涙を流すわけにはいかないが、心が動くような文章を心がけたい。

そのためには、日頃から自分の「心の動き」を書きとめておくと良い。感動したこと、怒ったこと、笑ったこと、嬉しかったこと。できれば“文章”で書き記す。次第に、心を動かすネタが集まる。

文章を書く際には、心が動いた体験を盛り込もう。やがて読者の心を打つ文章になる。

2.文章に“覚悟”をもつ

逃げ腰でけんかをうる人間を支持する人はいない。

真のリーダーはつねに自分が先頭に立って指揮をとる。ジャンヌ・ダルクしかりマハトマ・ガンディーしかりである。それは文章を書く姿勢としても同じだ。

誰の意見だか分からない文章に、人を動かす力はない。自分の立場を明確にし、批判を恐れず、自分が正しいと思うことを文章にしてはじめて説得力がうまれる。

ユニークな視点、人と違う意見は「自分の中から見つける」しかないのだ。

3.削る力

書けない書けないと、頭を抱えていても文章は完成しない。

まず好きに書いてみることである。足かせがあればすべて取り払って構わない。白紙の原稿が作品となることはないが、不完全でいびつな「価値のある」作品は存在する。

大切なのは推敲だ。書いて書いて、バッサリ削る。

太らないようにと何も食べなければ、ただ痩せるだけで、魅力的なボディーを手に入れることはできない。健康的な食事よりも、自由に食べて思いっきり体を動かす方が良い。

何を削るか。どこを残すか。ときには断腸の思いで削るかもしれない。そうした試行錯誤が感じられる文章もまた、人間的で美しい。

ヒトコトまとめ

優れた文章は

「自分の頭」「自分の心」「自分の取捨選択」から生まれる。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

まえがき
「書けない」が「書くこと」の第一歩
「書くこと」は恥じらうこと

第1章 あなたは9歳の作文力を忘れている

文章の本質は「ウソ」である
プロはこうやって文章力を鍛える
小説とノンフィクションの違いとは
書く前にカメラの位置を決める
「カリブの海賊」には後ろを向いて乗れ
読み手を特定の一人に絞って書く
「思いのほか広かった」のどこが問題か
形容詞の使い方を意識する
ボキャブラリーは本当に必要か
自分にしかわからない感覚を文にする

第2章 プロ作家の文章テクニック

すべてを書いてしまわず、次の日に繰り越す
文は一行目から書かなくていい
シナリオライターの「箱書き」手法
逆接以外の接続詞を外す
「全然よかった」は正しいか
自分の文章のリズムを知る
鬱、薔薇……難しい漢字は記号にすぎない
短い文章には「メイン料理」だけを選ぶ
実は、削る力が重要である
「余談だが」「ちなみに」は使わない
まずは書きたい要素を盛り込んでから
ヒッチコックはこうしてアイデアを捨てた

第3章 名文の条件とは何か

名文かどうかは、風景描写でわかる
小説の会話の書き方をどうするか
著者の顔が見えるのは、つまりはダメな作品
つくり話こそ、小道具が必要
ときには、こんな手法で切り込む
「若者よ、海外旅行をせよ」の違和感
文章は真似から始まる
個性の正体とはどういうものか

第4章 日常生活で文章力を磨く

時間を忘れて没頭する
ワープロか、それとも手書きか
インターネットの魔力に勝てるか
朝には朝の、夜には夜の誘惑がある
集中力は音楽でつくる
1、2行の日記でも文章はうまくなる
読み手を意識した瞬間、日記は文学になる
メモにも必ず、年月日を記入する
料理のレシピの難しさとは
伝えたつもりだが、伝わっていない
締め切りの2日前に原稿をあげる

第5章 検索、コピペ時代の文章術

一本の井戸か、遠浅の海か
綴ることは、未来へつながること
「私の○○○も読んでください」
コピー&ペーストが文章を殺す
ランキング思考で直観力が衰える
キュレーションとは何だろう
タイトルの一人歩きに注意する
ネット辞書との付き合い方を考える
言葉が「フロー」になっている
縮小のスパイラルの末、誰が残るか
底なしの深い海に潜っていく

第6章 書くために「考える」ということ

デジタル化時代の「考える」ということ
無駄を切り捨ててはいけない
タイトルに悩むときはどうするか
数字のウソに気をつけろ
その図は文章にできますか
記事に主張が盛り込まれているか
資料におぼれるな
書きたいテーマが見つからない
心に引っかかったピースをすくいあげる

あとがき デジタル化時代の「書く」ということ

<著者>

藤原智美
ふじわら・ともみ
1955年、福岡市生まれ。フリーランスのライターを経て、90年に『王を撃て』で小説家としてデビュー。『運転士』で第107回芥川賞受賞。主な小説作品に『モナの瞳』『私を忘れないで』。小説創作のかたわらドキュメンタリー作品も手がけ、住まいと家族関係を考察した『「家をつくる」ということ』はベストセラーに。続編『家族を「する」家』はロングセラーになる。主なノンフィクション作品に『なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか』『暴走老人!』『検索バカ』。『暴走老人!』では若者よりもキレやすい「新」老人の姿と、彼らの生態を通した現代社会の人間関係を考察し、タイトルのネーミングとともに視点の鋭さが話題を呼んだ。(PRESIDENT Storeより)
公式サイト:http://www.fujiwara-t.net/

<類書>

文は一行目から書かなくていい - 検索、コピペ時代の文章術

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