書店で本を“手に取る”際に、どういった点に着目するかと言えば、やはり、次の3点に集約されるかと思います。
「タイトル」「著者」「装丁(帯)」
そして、これが本を“購入する”ということになれば、次のように変化します。
「中身(文章のわかりやすさ、コンテンツの良し悪し)」「著者」「価格」
ただし、これは、本を定期的に購読している人の場合。もし、普段は読書をしない人が、テレビやインターネット、あるいは友人・知人からの勧めで本を購入する場合には、「中身」はそれほど重要ではないかもしれません。とくに、Amazonをはじめとするインターネット書店で本を購入する人が増加している昨今(ネット書店全体で2000億円以上とも。ちなみに、日本全体で9,000億円弱:2010年時データ,日本著者販促センターより)、中身を見ることなく、他人の評価や口コミのみをもとにして購入していることもあるでしょう。
これが何を意味しているかと言うと、書店における消費者の心理は、AIDA理論では次のようになるということです。(書店での、書籍購入者の大半は「衝動買い」なので、AIDMA理論のMemory(記憶)は除きます)
☆「読書家」の場合 Attention(注意)・Interest(関心)・Desire(欲求)「タイトル」「装丁(帯)」「著者」 →Action(行動)「中身」「価格」
★「非読書家」の場合 Attention(注意)・Interest(関心)・Desire(欲求)「メディアへの露出(テレビ、インターネット、雑誌など)」「タイトル」「著者」 →Action(行動)「価格」
つまり、少数の読書家以外にとっては、“購入の理由は中身ではない”ということですね。しかも、ベストセラーを「非読者層に売れた本」と定義するのであれば、その意味は大きいでしょう。
もちろん、ライフネット生命の出口治明さんのように、購入する書籍を新聞の書評欄から探し、著者が誰かに関わらず、最初の数ページを見て判断するという、熱心な読書家もいます。しかし、そのような人は、あくまでも一部でしょう。読書家の中のさらに一部。マイノリティなんですね。もし、そのような「心ある読者」が、いわゆる良書を何冊も購入してくれるのであれば、著者あるいは出版社は、本当の意味で良い本を作り続けることだけに苦心すればいい。しかし、どんなに良書でも1人1冊が基本の書籍では(別の目的がある人は除いて)、そうはいかない。なぜなら、端的に、採算がとれないからですね。
このような厳然たる事実が、ビジネスと芸術のあいだにはある。いかに優れた絵を描くゴッホも、パトロンがいなければ描き続けることはできないのです。もちろん、現在のように名前が売れていれば、話は別ですが。だからこそ著者は、芸術ではなく、文字通り“ビジネス書”を描く必要があるのですね。こと、最初の数冊に関しては。
ポプラ社
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