メール文は、現代社会において、誰もが避けて通れない文章です。最近では、メールを使ったことがないという若年者も増えていますが、未だに仕事上(社内・社外)のコミュニケーションはメールが主流であり、メール文を書けることは必須のスキルと言えます。
ただ、これまでメール文を書いてこなかった人は、「どのように書いていいのかわからない」と悩んでしまうことでしょう。その結果、チャットアプリやソーシャルメディアで書いているのと同じように、シンプルでフレンドリーな書き方をしている人もいます。
しかし、メールにはメールなりの文章の書き方があります。「ちょっとまどろっこしいな」「そんな文面、必要ないのでは?」と思うこともあるかもしれませんが、慣れてしまえば、相手の気を悪くすることなく、一定のマナーに配慮することが可能です。
とくにビジネスの現場において、基本的なマナーを守れることは大切です。礼儀というものは、それだけで自分の印象を操作する武器になりますし、余計な失点を防ぎながら自らの評価を高められるツールにもなります。だからこそ、身につけておいて損はありません。
中でもメール文に関するテクニックは、日常的なコミュニケーションに使えるため、非常に重要であると言えるでしょう。そこで本稿では、メール文の基本的な書き方をふまえて、「伝わるメールの書き方」について詳しく解説していきましょう。
■なぜあなたのメールは伝わらないのか?
基本的なメール文の書き方について見ていく前に、まずは、「伝わらないメール文」について考えてみましょう。伝わらないメール文について知っておくことは、余計なミスをなくし、伝わるメールを書くための基本に結びつくためです。
さて、伝わらないメールには次のようなマイナスポイントが含まれています。
・わかりにくい
・何が言いたいのか不明確
・基本がなっていない
・マナーがなっていない
・極端に長い(短い)
「わかりにくい」というのは、伝えるポイントを押さえておらず、論理的な文章が書けていないということです。あらかじめ何を伝えたいのか明確にし、その情報をどう並べればいいのかを考えてメール文を書けば、自ずと伝わる文章になります。
「何が言いたいのか不明確」というのは、伝える事柄を1つではなく、複数、並べているのが原因です。もちろん、伝達項目がいくつかあってもいいのですが、その場合にはそれがわかるように記述し、より伝わりやすい配慮が欠かせません。
「基本がなっていない」というのは、とくにビジネスで使われるメール文の基礎が押さえられていないということです。メール文には基本的な書き方があります。そのフォーマットに沿って書いていれば、基本をふまえることは簡単です。
「マナーがなっていない」というのは、基本的なマナーについて理解していないか、あるいは理解していても実践できていない状態を指します。ビジネスマナーはメールにおいても適用されます。基本的なマナーを身につけ、メールに応用しましょう。
最後の「極端に長い(短い)」というのは、メール文において書くべき分量が適切でないということです。メール文には、適切な長さがあります。長すぎても短すぎてもいけません。適切な長さを知り、その規準に沿って書くことが大切です。
■「伝わる」ということの本当の意味
ところで、「伝わる」メールを書く際に、どうなったら「伝わった」と判断できるのでしょうか。いろいろな解釈が可能ですが、基本的には、「自分が伝えたい意図に沿った行動を引き出せたこと」が、ひとつの判断軸になるでしょう。
とくにビジネスシーンでは、メールを送付した相手が「わかりました」と言っただけで、「伝わった」と評価することはできません。なぜなら、メールの内容が十分に伝わっていなくても、相手は「わかりました」と返答する可能性があるためです。
たとえば部下や後輩にメールを送付したとき、その内容が十分に伝わらず、相手が「よくわからないな」と思っていても、めんどうくさいから「わかりました」と返答するかもしれません。そのため、「わかりました」というレスポンスだけでは評価できません。
そこで重要なのが、送付したメールによって相手の行動が変わったかどうかを見ることです。具体的には、「今日の14時までに見積書を提出してください」というメールを送付した場合、相手が14時までに見積書を提出したという行動をもって、「伝わった」と判断するのです。
そのメールを送付しなかった場合、もしかしたら、今日中どころか、いつまで経っても見積書がもらえなかったかもしれません。しかし、メールを送付したことによって、14時までにもらえたとしたら、確実に相手の行動は変わっています。
それが、とくにビジネスシーンにおける「伝わった」の評価となります。メール文の場合には、そのように相手の行為を引き出せるものにしなければなりません。一方で、相手が行動しない(行動を変えない場合)、そのメールには何かが欠けていたと判断できます。
■伝わるメール文を書くために必要な3つのこと
そのうえで、伝わるメール文を書くためのポイントについて確認しておきましょう。「伝わる」というのは、「相手の行動を変える」「相手の行為を引き出す」ということでした。そのために意識したいのは、次の3つのポイントです。
1.「何を」してもらいたいのか明確にする
2.「いつまでに」してもらいたいのか明確にする
3.「なぜ」するべきなのかを明確にする
これら3つのポイントは、いわゆる「5W1H」の一部となります。5W1Hとは、「Who(だれが)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(なにを)」「Why(なぜ)」「How(どのように)」の頭文字をとったものです。
とくにビジネスシーンでは、これらに加えて「How much(いくらで)」などが加えられることもありますが、メール文の場合、いつも記述されるわけではありません。また、「Who(だれが)」や「Where(どこで)」もそれほど気にする必要はないでしょう。
とりあえず意識しておきたいのは「What(何を)」「When(いつまでに)」「Why(なぜ)」の3つです。これらを、わかりやすく「メール文における3W」としておきましょう。この3つがあれば、メール文の基礎は押さえられます。
たとえば先程の例であれば、「見積書を提出する」「14時までに」ということに加えて、「社内の稟議にかけるため」という事柄を加えておけば、3Wを記述したメールになっていると言えます。それにより、相手の行動が引き出されます。
しかし、「What(何を)」が欠けていると、相手はどのような行為が求められているのかわかりません。そのため、そのメールを読んでも具体的な行動がイメージできず、結果的に相手の行為を変えることができません。
また、「When(いつまでに)」がない場合には、相手が何をすればいいのかは理解できても、いつまでに行動してくれるのかはわかりません。しかしそれでは、結果的に望むような行為を引き出せず、相手にまかせてしまうこととなるのです。
さらに「Why(なぜ)」については、「What(何を)」「When(いつまでに)」の裏側にある理由を説明することによって、論理(ロゴス)から感情(パトス)を引き出します。その両者があると、相手は動機と危機感をもち、動いてくれるようになります。
■メール文の基本フォーマットとは
伝わるメール文、つまり相手の行動を引き出すには「What(何を)」「When(いつまでに)」「Why(なぜ)」が必要なのだと理解できましたでしょうか。そのうえで、メール文の基本フォーマットについても確認しておきましょう。
メール文は、小説や詩などのような「創作」とは異なります。また、ビジネスシーンで作成されることが多い「企画書」や「提案書」よりも、コミュニケーション(意思疎通)に力点が置かれている文章になります。
企画書や提案書も広義においてはコミュニケーションなのですが、より直接的な、しかもリアルタイムでの意思疎通にはメール文が使われています。また、事前の調査や高度な論理構成が必要な「プレゼン資料」や「レポート・論文」とも異なっています。
ただし、会話やチャットなどより、形式が重視されるという点も押さえておいてください。だからこそ、基本フォーマットを押さえておくことが求められます。具体的には、次のような5項目によって構成されます。
1.相手方の名前
2.あいさつ
3.本文
4.締めの言葉
5.送信者の名前
「相手方の名前」というのは、社内であれば「名字」、社外であれば「会社名+名字」が基本となります。場合によっては役職を入れたほうがいい場合もありますが、基本的にはこれらの情報を網羅していれば問題ありません。
ちなみに、直接的な送信相手だけでなく、伝達事項としてともに伝えておきたい相手がいる場合は「CC(Carbon copy)」で名字を入れておくと丁寧です。必要ないと判断できる場合は、名前を書かずに送付しても構いません。
次に「あいさつ文」を記述します。あいさつ文は、「いつもお世話になっております」「大変お世話になりありがとうございます」など、簡単なものでいいでしょう。ここで丁寧すぎる文をいれると、慇懃無礼にとられかねないので注意が必要です。
あいさつ文を書いたら、次に「本文」を書いていきます。本文に書くべき内容はすでに述べたとおり、「What(何を)」「When(いつまでに)」「Why(なぜ)」を網羅しておきましょう。
たとえば、「社内の稟議にかけるため」「14時までに」「見積書を提出する」などと記述しておけば、読んだ相手は求められている行動がはっきりするため、その可否を含めてレスポンスしやすくなります。
本文の次は「締めの言葉」を書いていきます。あいさつ同様、ここもむずかしく考えずに「何卒、宜しくお願いします」「どうぞ、宜しくお願い申し上げます」などと書いておけば問題ありません。あまり固くなりすぎないよう、漢字を減らし、柔らかいニュアンスを心がけましょう。
最後に記述するのは「送信者の名前」です。社内であれば名字だけでいいですが、社外に送る場合は「会社名+名字」が基本となります。また、はじめてメールを送る相手であれば、会社名、氏名、住所、電話番号などが記載されたクレジットを入れておくと丁寧です。
■基本フォーマットで何度もメールを書いてみよう
基本フォーマットをふまえてメールを書くと、次のような文面になります。
株式会社△△
◯◯様
いつもお世話になっております。
◯◯です。
この度は、◯◯(求める行為)の件にてご連絡させていただきました。
お忙しいところ恐縮ではございますが、◯◯(理由)のため、◯◯(期日)までに、◯◯(求めるもの)をご返送いただけますと幸いです。
お手数おかけしますが、どうぞ、よろしくお願いいたします。
▲▲株式会社
◯◯
■自己点検とフィードバックのコツ
以上がメール文の基本となりますが、書き慣れていないうちは、自己点検とフィードバックを繰り返すようにしてください。とりあえず書けたらそのままにしておくのではなく、自らチェックしつつ、相手の反応も確認してみるのです。
自分でできるチェックとしては、「誤字脱字の確認」「内容の確認」はもちろん、「添付資料の確認」「送付先の名前の確認」など、ミスが生じやすいところを重点的にチェックしておきましょう。ポイントを箇条書きにして確認すると無駄がありません。
また、相手からのフィードバックに関しては、社内の人であれば直接感想を聞いてみるのもいいでしょう。社外の人であれば、「メールを送付したことで実際にどのような変化(行動)が起きたか」を確認するようにしてください。
メールを送付することで、相手の行動をきちんと促せているのであれば、そのメールは成果をあげていることになります。そうでない場合、相手の立場や性格もふまえながら、メールの文面を工夫してみましょう。
くり返しになりますが、メール文というのは、あくまでもコミュニケーションの一貫です。そのため、誰に対しても効力を発揮する「正解」というのはありません。基本を押さえつつ、相手に合わせて対応できるよう、試行錯誤を続けていきましょう。
■まとめ
・メールの基本はコミュニケーション
・伝わるメールを書くための3つのポイント
1.「何を」してもらいたいのか明確にする
2.「いつまでに」してもらいたいのか明確にする
3.「なぜ」するべきなのかを明確にする
・メールに必要な5つの項目とは
1.相手方の名前
2.あいさつ
3.本文
4.締めの言葉
5.送信者の名前
・たくさん書いてメールに慣れることが大事
コミュニケーションツールであるメールは、基本を押さえつつ、より伝わるような工夫をしていこう。