使い捨てのライターたちへ|ライターの未来と救いの書7選

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 未来をざっくり夢想してみても、単純労働が次々に淘汰されていくのは明白です。工場では機械化が進んでいますし、スーパーのレジはセルフ化、雑務を処理するシステムは次々に構築され、学校やオフィスはインターネットの中にある。

 そもそもの動機は人間の負担を減らすことだと考えれば、人間の仕事が減るのは自然な流れと言えるでしょう。いずれは自動文書作成ソフトが完成し、汎用的なライターや文章家も職を追われるかもしれません。

 そうなる前に個人としてあるいはメディアとしてできる対策はなにか。やはり「超」になる以外にないかと思います。


ライターの未来

 超になるとはつまり「特化する」ということです。単純にある特定の分野の記事を書かせたらピカ一というだけでは不十分です。右に出るものはいない、あるいは追随を許さない。たとえばコンビニで言うところのセブン-イレブンのように、2位以下に大きく水をあける。それが超です。

 ではどの分野で超になれば良いか。それは分かりません。というよりそれが分かれば苦労しません。それに、必ずヒットする分野を知っていたとしても、そのものに対して興味がわかなければ大した記事は書けないでしょう。ですからどの分野に特化するは、需要うんぬんも大切ですが、「オタクになってみる」のが手っ取り早いかと思います。

 考えられるのは、「ツールは情報を伝えることができても、情熱を伝えることはできない」ということ。まずは誰よりも情熱を感じられるものを見つけましょう。そして同時に、瞬時に優れた文章に変えられる能力を養っておくべきです。なにが優れた文章なのかを熟知しておけば、あなたは自ら書かなくても良いかもしれません。ツールを利用すれば良いのです。

 ただし、とくに個人単位のネットメディアに言えることですが、はじめから外注に頼るのは考えものです。というより未来がない。ライティングが単純労働になれば、人間の仕事はおのずと創造的な分野に限定されます。つまり良い文章とはなにかを知り、判断し、改善し、試行錯誤をくり返して成果をあげることが主流な業務になる。

 ツールに成果報酬を与えても、能力を超えて働くことはないのです。良い文章を選別するために優秀な編集者を雇う? ならばあなたの仕事はなんでしょうか。ライターや編集者が単独でメディアを立ち上げられる時代です。知識のない管理者気取り・編集長気取りに居場所はありません。

「良い文章とは何か?」を知るための書籍7冊

 とは言え「良い文章とは何か」を知ることは簡単です。良い文章とは何かについて論じている名著を読めば良いのです。道標として以下に独断と偏見で選んだ7冊をご紹介します。

1.文章心得帖 (ちくま学芸文庫)

 最初に発表されたのは1980年とちょっと古い本なのですが、中身は現代にも通ずる「良い文章に関する原理原則」が詰まっています。とくに全体を通して訴えている「紋切型を徹底的に排除する」という姿勢は、すべてのライター・文章家が意識すべきポイントかと思います。新刊のビジネス書を読むくらいならこの書籍をくり返し読んだ方が何倍も得るものが多いことでしょう。

文章心得帖 (ちくま学芸文庫)
鶴見 俊輔
筑摩書房
売り上げランキング: 149,873

2.井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

 「いちばん大事なことは、自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということ」。このあまりにも有名な言葉は、何を書けばよいのか分からなくなってしまった文章家にとって、背中を押してくれるまさに箴言です。大切なのは文章に対する姿勢。情報の中身ばかりがクローズアップされている現代だからこそ、文章に対して真摯に向き合うようにしたいですね。

井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)
井上 ひさし
新潮社
売り上げランキング: 14,270

3.考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則

 情報を正しく伝えるために重要なのが「論理」です。情報を風化させずに人々の記憶に根付かせるにはストーリーや物語を活用することもできますが、そこには誤読の危険があることも忘れてはなりません。こちらの書籍で提示している手法、その背景には「相手の関心に向かって書く」という伝達の最重要ポイントがあります。だからこそ、時代に関係なく活用されている手法なのですね。

 ただし、こちらの書籍は著者がバーバラ・ミントさんという外国の方なので、日本人向けにバージョンアップされている『入門 考える技術・書く技術』の方が読みやすいかもしれません。可能であれば併読することをオススメします。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則
バーバラ ミント グロービスマネジメントインスティテュート
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 1,607
入門 考える技術・書く技術
山崎 康司
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 8,365

4.<不良>のための文章術 (NHKブックス)

 上記の三冊はわりと座学によった内容の書籍でしたが、ここからはよりプロの文章家向けの書籍をご紹介します。まずはこちらの書籍。お金を稼ぐことに特化した文章術について赤裸々につづられています。なかには身も蓋もない話と感じることもあるかもしれませんが、現実に対する甘えを消すには良い薬となるでしょう。全体を通して歯切れが良いので読み物としても十分楽しめます。絶版本なので、中古あるいは図書館でお求めください。

<不良>のための文章術 (NHKブックス)
永江 朗
NHK出版
売り上げランキング: 292,216

5.書いて生きていく プロ文章論

 自称「文章を書くのがニガテ」な著者が、なぜ幅広い層に「あなたの文章はうまい」と言わしめているのか。その答えが本書には書かれています。頭でっかちになって枝葉末節にばかり気にしている“稼げない”ライター・文章家。あるいは自信過剰、傲慢になってしまった方のテキストにピッタリです。キーワードは「話すように書く」。同じ著者の『文章は「書く前」に8割決まる』もぜひ参照ください。理解が深まります。

書いて生きていく プロ文章論
上阪 徹
ミシマ社
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文章は「書く前」に8割決まる
上阪 徹
サンマーク出版
売り上げランキング: 27,923

6.ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則

 商業的な文章のとくにキャッチコピーにおいては、本書の右に出るものはありません。小冊子マーケティングの先駆者である神田昌典さんがかつてむさぼり読んだという伝説の名著です。いわゆる「セールスレター」関連の書籍はうさんくさいものも多いのですが、こちらは広告についての学びも得られる良書ですので、所有して事あるごとに読み返す価値があります。

 ちなみにSEOやWordPress関連の記事で有名な『バズ部』さんは、この書籍からかなりの影響を受けていると見受けられます。オススメです。

ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則
ジョン・ケープルズ
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 3,414

7.インターネット的 (PHP新書)

 最後はインターネット上の文章について考えるための書籍です。こちらはコピーライターで『ほぼ日刊イトイ新聞』の経営者でもあるご存知糸井重里さんが2001年に書いた本です。この書籍を書かれた頃には、すでに未来の文章についておぼろげながら見えていたのかと思うと、さすがとしか言いようがありません。

 こちらが預言書だとしたら、事後報告書としては『ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)』がオススメです。ニュアンスはかなり異なりますが。

インターネット的 (PHP新書)
糸井 重里
PHP研究所
売り上げランキング: 142,290
ウェブはバカと暇人のもの (光文社新書)
中川淳一郎
光文社
売り上げランキング: 15,579

まとめ

    • 単純労働はこれからどんどん淘汰される
    • ライターや文章家もまたしかり
    • 私たちに残されているのは「創造的な仕事」のみ
    • 文章作成から「管理・監督・編集」へ
    • ただし自分でも書くこと。そして良書で知見を得ること

こんな記事がありました(2014.7.2加筆)

AP通信社、AIが人間に代わって記事を書く技術を導入|Gizmodo

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