弁護士の資格を取るための2つのみちのり

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本稿は「弁護士になるには」がテーマです(寄稿)。

フリーランスとして活躍する弁護士が、弁護士になる方法を解説しています。

1.弁護士とは

弁護士法によれば、弁護士は、弁護士会名簿の登録を受け、法律事務を行うことを公認された者で、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としています(弁護士法§1)。

弁護士になる資格者は、原則として、司法修習生の修習を終えた者(同§4)で、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されることによって弁護士となる(同§8)、とされています。

.弁護士の使命

弁護士の使命は、高度な法律知識で、依頼人の権利を守ることです。

裁判所の法廷で、代理人または弁護人として、依頼人の法律上の権利や利益を守り、また国家権力による人権侵害から守るのが仕事です。また、法律相談や契約書・遺言書などの法律文書の作成を始め、示談交渉など私たちの身の回りのあらゆる法律事務処理を行うことができます。

公平で正義に適う判断を導き出すためには、法律以外の世の中の色々な出来事に興味を持つことが大事です。例えばIT関連の専門知識、或いは医療関連の専門知識が求められる時代ですので法律だけ勉強すればよしということではありません。幅広く色々な知識を吸収しようという不断の努力と熱意が必要です。

.弁護士の仕事

法律的な問題で困っている人や企業を助けることが大きな仕事です。

実際に起きた事件について、たくさんある法律の中からどの法律=条文=を適用するのかを判断し、その結果どのような解決を導き出すのが一番公平なのか、正義に適うのかということを考えます。人や社会の役に立ちたいという気持ちが強い人にはやりがいのある仕事と言えるでしょう。

最近は、企業合併、或いは買収など企業間の契約交渉にかかわることも大きな仕事になってきています。また、大企業の法律顧問、監査役だけでなく取締役として経営そのものに参画する弁護士も増えてきております。

弁護士というのは最難関の司法試験に合格しなければ就けない職業ですので、それなりの誇と自信を持つことができ、周囲からは尊敬の念で見られる人です。

 

.弁護士へのみち

⑴ 法曹というは、法律関係の仕事に携わる人の総称で、裁判官(判事)・検察官(検事)・弁護士を指します。

法曹界へ進むには次の2つのル―ト〔①と②〕があります。法曹界で働くためには、いくつかの例外を除いて先ず司法試験(*)に合格しなければなりません。この司法試験は、誰でも出願さえすれば自由に受験できるものではなく、一定の受験資格が必要とされています。

(*)司法試験とは

法曹資格付与のための国家試験の一つであり、平成14年(2002年)制定の「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律」に基づいて行われる資格試験です。

司法試験は、裁判官、検察官又は弁護士になろうとする者に必要な学識及びその能力を有するかどうかを判定することを目的とする国家試験です。「司法試

験法§1(司法試験の目的等)」

言い換えればア.「正確な知識」とイ.「応用力・思考力・問題発見力」の二点が試されるわけです。

〈出願書類〉〔必須〕

*司法試験受験願書

〈受験手数料〉28,000円 =平成28年(2016年)=

(注)「法科大学院ルート」、「予備試験ルート」のどちらのルートで司法試験受験資格を取得しても、最後に受験する司法試験は同じ試験を受験することになります。

司法試験受験から法曹資格取得まで

司法試験の受験資格は2つのルートがあります。①法科大学院過程(2年間の既修者コースと3年間の未修者コース)を修了、または、②司法試験予備試験の合格のいずれかをクリアーすることが必須条件です。

①「法科大学院修了」ルート

ア. 法科大学院既修者コース入試(2年間)

大学 ➡ 適性試験 ➡ 出願 ➡ 法科大学院既修者コース入試  ➡ 合格 ➡ 法科大学院既修者コース(2年間) ➡ 修了 ➡  司法試験 ➡ 合格 ➡ 司法修習 1年間 ➡ 修了試験合格 ➡ 法曹資格取得 (裁判官・検察官・弁護士へ)

イ. 法科大学院既修者コース入試(3年間)

大学 ➡ 適性試験 ➡ 出願 ➡ 法科大学院既修者コース入試 ➡ 合格 ➡ 法科大学院既修者コース(3年間) ➡ 修了 ➡ 司法試験 ➡ 合格 ➡ 司法修習 1年間 ➡ 修了試験合格 ➡ 法曹資格取得 (裁判官・検察官・弁護士へ)

②「予備試験」ルート  

予備試験 ➡ 合格 ➡ 予備試験 ➡ 合格 ➡ 予備試験 ➡ 合格 ➡ 司法試験 ➡ 合格 ➡ 司法修習 1年間 ➡ 修了試験合格 ➡ 法曹資格取得 (裁判官・検察官・弁護士へ)

.司法修習

司法試験に合格すると司法修習(最高裁判所の司法修習生に採用されることが必須)を受け、さらに司法修習の最後にある司法修習生考試(いわゆる“二回試験”と呼ばれています)をクリアーすることで裁判官・検察官・弁護士になることができます。

.司法試験受験の制限

平成26年(2014年)5月,改正司法試験法が成立し、法科大学院修了後5年以内或いは予備試験合格後5年以内であれば回数の制限なく受験できます。即ち、司法試験受験資格を得てから5年の内に最高5回まで受験できます。「司法試験法§4-1-1,同条同項2」

注意を要するのは、予備試験と法科大学院を併願し、予備試験合格後と2年の法科大学院修了の双方の受験資格を取得した場合です。§4-2にあるように、複数の受験資格を得た場合でも、一方の受験資格に対応する受験期間は他の受験資格に基づいて受験することはできません。

これは例えば、法科大学院を修了して、その資格で司法試験を受けた場合、その受験資格が与えられている期間(5年間)は、たとえ予備試験に合格していても、予備試験合格の資格で司法試験を受験することはできません。

なお、受験資格が消滅した場合、法科大学院を再び修了するか、予備試験に合格すると再び受験することができます。

⒈   法科大学院ルート

法科大学院に進学・修了することによって司法試験の受験資格が取得できます。この法科大学院ルートは、法曹界に進むための標準的ルートといわれています。

ここは、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とする専門職大学院「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律§2-1」で、いわゆる日本版ロースクールのことです。難易度は高く、入学は容易ではありません。

法科大学院に入学するためには、各大学が実施する入試に合格する必要があります。大学により入試の時期及び入試科目等は異なります。時期及び出願書類等については、志望大学院に確認してください。

ア 時間的・経済的負担は大きいですが、確実性は⒉の予備試験ルートよりも高いと言えるでしょう。

イ 受験資格は、原則として4年制大学を卒業していること。

ウ 大学院の学費として概ね500万円位必要と言われています。

エ 大学入学から司法試験受験資格取得迄の期間は、

○ 法学既修者コース〔大学で法学を学んだ人〕

6年〔大学4年+法科大学院2

法科大学院全国統一適性試験のほか、各大学独自の

法律試験科目、法学既修者試験の結果などが必要になります。各大学のHP等で確認ください。

○ 法学未修者コース〔大学で法学を学んでいない人〕

7年〔大学4年+法科大学院3

法科大学院全国統一適性試験のほか、各大学独自の

筆記試験(小論文)があります。各大学のHP等で確認ください。

オ 法律知識については

○ 法学既修者コースでも予備試験ほど高度な法律知識は不要です。

○ 法学未修者コースは、法律知識は不要です。

〈大まかなスケジュール〉

*法科大学院の入試(8月~11月)・・・各校により試験科目・試験の実施日は異

               なります。通常、大学卒業の前年に受験

*法科大学院での勉強                 します

○ 既修者コース(2年間)又は ○ 未修者コース(3年間)

    

*司法試験(5月)・・・・・・法科大学院の修了が必須

     ○ 短答式試験 と ○ 論文式試験

  (9月に発表)

*司法修習・二回試験

       

*法曹三者〈裁判官(判事補)・検察官・弁護士〉へ

〈出願書類〉

〔必須〕

  • 入学志願票
  • 適性試験管理委員会が実施する「○○○○年法科大学院全国統一適性試験」の

成績証明カード

  • 大学卒業(見込)証明書
  • 成績証明書(学部)
  • 志願者報告書

〔任意〕

  • 外国語能力証明書
  • 法学検定試験員会が実施する「○○○○年法学既修者試験証明書」

  (注)提出するこれら必須・任意の書類について、志望する大学院に確認をしてく

ださい。

これらの書類を提出した上で、小論文、面接などが実施されます。

⒉   予備試験ルート

司法試験予備試験に合格する予備試験ルート(平成23年(2011年)から実施)

この予備試験ルートは、大学在学中の司法試験合格や、大学院に進学するには時間的経済的に余裕がない受験生が利用するといわれています。

この予備試験は、法科大学院の過程を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とする試験です。

試験科目は、短答式筆記試験は5月中、その合格者に対しては7月中に論文式筆記試験が行われ、その合格者に対して10月中に口述試験が行われ、最終的な合格者に司法試験の受験資格が付与されます。

受験料を払えば誰でも受験できます。

ア 予備試験合格で司法試験受験資格を取得することになります。確実性は高くはありませんが、時間的経済的負担は少ないルートと言われています。

イ 受験資格に学歴や年齢の制限はありません。(大学在学中でも受験できます。)

ウ 書籍代や資格スクールの受講料などで150万円程度必要でしょう。但し、合格迄の期間により負担は大きく異なります。

エ 学習開始から最短2年程度で司法試験の受験資格の取得は可能です。但し、現在この予備試験の合格率は4%前後といわれています。合格迄に法科大学院以上の時間がかかることもあります。

オ 予備試験の合格には、法科大学院修了者と同等の高度な法律知識と実務知識が必要です。

〈大まかなスケジュール〉

*短答式試験(5月)

       (6月に発表)

*論文式試験(7月)

  (10月に発表)

*口述試験(10月)

   (最終合格発表は11月)

*司法試験(5月)・・・・・・予備試験合格が必須

     ○ 短答式試験 と ○ 論文式試験

  (9月に発表)

*司法修習・二回試験

  

*法曹三者〈裁判官(判事補)・検察官・弁護士〉へ

〈出願書類〉

〔必須〕

  • 司法試験予備試験受験願書
  • 住民票

〈受験手数料〉17,500円 =平成28年(2016年)=

*********

司法試験予備試験

司法試験

法務省大臣官房人事課司法試験予備試験係

法務省大臣官房人事課司法試験係

TEL:03-3580-4111(代)

FAX:03-3592-7603

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