ディスカヴァー・トゥエンティワンやオトバンクが主催している「ビジネス書大賞」。2010年からはじまり、すでに6回開催されています。そのビジネス書大賞2012年で、見事大賞を受賞された作品が経営コンサルタントの瀧本哲史氏著『僕は君たちに武器を配りたい』です。
その瀧本氏の新刊が、新潮新書から発売されました。タイトルは『戦略がすべて』。エンジェル投資家や京大准教授という肩書もお持ちの瀧本氏ならではの独自の切り口で、これからの「勝者の戦略」について語っています。帯のコピーは「著者が教える資本主義社会の「攻略法」」。
筆者がとくに感銘をうけたのが、次の記述です。
ビジネスにおいて多くの利益の分け前(報酬)を得られるプレイヤーは、資本家、投資家の側であるといえる。彼らは儲ける仕組み(資本)を所有していて、ビジネス全体の利益と損失を帰属されているからだ。
まさに、資本主義社会の本質をついた言説だと思います。本書では、「大ヒットマンガもコモディティとなる」という事例を取り上げてその内容を説明していますが、つまり、「だれかの神輿をかつぐのではなく、自ら祭りの主催者になること」が、資本主義社会における勝者というわけです。
では、どうやって祭りを主催すればいいのか。祭りには神輿をかつぐ人や、屋台を出す人、そして一般のお客など、つまり参加者が必要です。その参加者を集めるために必要なのが「戦略」というわけです。優れた戦略があれば、資本主義社会で成功できる可能性が高まるのですね。
本書には、「ヒットコンテンツには「仕掛け」がある」「労働市場でバカは「評価」されない」「政治は社会を動かす「ゲーム」だ」など、さまざまな観点から戦略について解説しています。ぜひ、資本主義社会で勝者になりたいという方は、読んでみてはいかがでしょうか。
目次
I ヒットコンテンツには「仕掛け」がある
1.コケるリスクを排除する――AKB48の方程式
2.全てをプラットフォームとして考える――鉄道会社の方程式
3.ブランド価値を再構築する――五輪招致の方程式
II 労働市場でバカは「評価」されない ル
4.「儲ける仕組み」を手に入れる――スター俳優の方程式
5.資本主義社会の歩き方を学ぶ――RPGの方程式
6.コンピューターにできる仕事はやめる――編集者の方程式
7.人の流れで企業を読む――人材市場の方程式
8.二束三文の人材とならない――2030年の方程式
III「革新」なきプロジェクトは報われない
9.勝てる土俵を作り出す――オリンピックの方程式
10.多数決は不毛である――iPS細胞の方程式
11.人脈とは「外部の脳」である――トップマネジメントの方程式
12.アナロジーから予測を立てる――北海道の方程式
IV.情報に潜む「企み」を見抜け
13.ネットの炎上は必然である――ネットビジネスの方程式
14.不都合な情報を重視する――新聞誤報の方程式
15.若者とは仲間になる――デジタルデバイスの方程式
16.教養とはパスポートである――リベラルアーツの方程式
V 人間の「価値」は教育で決まる
17.優秀な人材を大学で作る――就活の方程式
18.エリート教育で差別化を図る――東京大学の方程式
19.コミュニティの文化を意識化する――部活動の方程式
20.頭の良さをスクリーニングする――英語入試の方程式
21.入試で人間力を養う――AO入試の方程式
VI 政治は社会を動かす「ゲーム」だ
22.勝ち組の町を「足」が選ぶ――地方創生の方程式
23.マーケティングで政治を捉える――選挙戦の方程式
24.身近な代理人を利用する――地方政治の方程式
VII 「戦略」を持てない日本人のために
著者
瀧本 哲史
京都大学産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。エンジェル投資家。東京大学法学部卒業。マッキンゼー&カンパニーでコンサルティング業に従事し、独立。著書に『僕は君たちに武器を配りたい』。