DeNAが手がける医療情報サイト「WELQ」をはじめとするキューレーションメディアの問題が大きな話題となっています。「WELQ」の記事は医療情報を取り扱っているにもかかわらず、専門家の監修がありません。
また、記事の信憑性も低く、デタラメな内容がネット上に溢れていることが取り上げられ、一気に炎上しました。その結果、DeNAは自社が運営するキューレーションメディアすべての記事を非公開に。12月7日には記者会見を行い、これまでの経緯を説明するとともに、事態への謝罪をすることとなりました。
私も「ライター」という仕事をしている身として思うことがあります。今回は、その中でもキューレーションメディアの問題点についてお話しします。
キューレーションメディアとは
そもそも「キューレーションメディア」とは、どのようなものなのでしょうか。
「キュレーション」(curation)は、Web上のコンテンツを特定のテーマに沿って人手で集め、それによって新たな価値を生み出す、といった意味合いで用いられる用語である。
つまり、「キューレーションメディア」はネット上にある情報をまとめたものを、新たな記事として公開しているサイトというわけです。有名なサイトは「NEVERまとめ」「ギャザリー」「byS」など。
キューレーションサイトはここ数年で急増してきましたが、今回のDeNAの騒動をきっかけに、その運営のあり方についにメスが入りました。
キューレーションメディアにおける3つの問題点
では、そんなキュレーションメディアの何が問題なのでしょうか。大きく3つあると考えられます。
1.記事や画像のパクリ
キューレーションサイトで公開されている記事の中には、記事内容や画像を他サイトから無断転載しているものがたくさんあります。サイトによっては引用元を明記しているものもありますが、そうではないサイトも多いようです。
自分で撮影した写真にもかかわらず、「他サイトから盗用したのではないですか」とクレームを受けた人もいるほど。どれが本元のものなのか分からなくなってしまうほど、写真の無断転載が横行しているのです。
キューレーションサイトの中には、1日に公開する記事数を増やすため、低単価な報酬で大量の記事作成を行うことがよくあります。これはサイトへの訪問者数を増やし、広告収入をアップさせる狙いがあるからです。
このことが原因で、編集部のチェック体制もゆるくなっていた可能性もあります。また、一部メディアでは「他サイトの記事を参考にする場合は、元の記事と同じにならないように指導していたマニュアルもあった」とのこと。これは「他サイトから転用してもいいけど、分からない程度にしてよ」という意図がうかがえます。
これがきちんと許可取りを得て行っているなら問題ありませんが、そうでなかったのがいけませんでした。
2. 正誤が不確かな情報の掲載(ゆるいチェック)
「WELQ」で問題となったのは、信ぴょう性が薄い医療情報。ニュースサイト「BuzzFeed(バズフィード)」が問題提起を行ってから、正誤が不確かな記事について一気に話題となりました。
たとえば、「肩が痛い」と検索すると、『幽霊が原因のことも?』などという話もでてくる。このような医療情報がグーグルの検索上位を独占していることで、ユーザーが不利益をこうむっているのが現状です。
医療情報を取り扱っているにも関わらず、専門家の監修はなし。公開された記事の中には、クラウドソージングで大量に雇った外部ライターによって書かれた記事も多い。「WELQ」に関しては、約9割がクラウドワーカーによる記事です。
クラウドソージングサイトに登録している人材が、必ずしも医療知識のあるライターであるとは限らない。ほとんどはネット上で情報をあつめ、それを編集して記事作成をしている素人ではないでしょうか。医療という命に関わる分野だからこそ、余計に「情報の正確性」が問われます。
3. ステルスマーケティングの横行
「ステルスマーケティング」とは、読み手に宣伝と分からないように宣伝すること。いわゆる「やらせ」というもので、略して「ステマ」と呼ばれています。普通は宣伝記事を掲載する場合は、「広告」「PR」という記載があります。
「広告」と書かれている記事は、いかにも宣伝ですという気がしますよね。そのような記事の商品は「あまり買う気になれない」という人も多いと思います。
しかしDeNAが手がけるキューレーションメディアでは、この記載がないステマ記事が存在し、ユーザーは宣伝記事と気づかないまま、商品購入のページへ飛んでしまうことも。それによって利益をあげていることが、「モラルに反するのでは」と批判を浴びているのです。
まとめ
今回、大きな話題となっているDeNAのキューレーションメディア問題。ここ数年で急成長してきた業界だっただけにその打撃は大きく、他のキューレーションメディアも続々と記事の非公開を始めました。
ネット上には情報が溢れています。その中でユーザーが求めているのは、良質な情報。きちんとした取材に基づいた、確かな情報です。今後はこのような一次情報(取材記事)が重視されるようになるでしょう。
業界を揺さぶることとなったキューレーションメディア問題の今後を、これからも追っていきたいと思います。
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