なぜ「従軍慰安婦問題」はナンセンスなのか|『戦争と性』

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戦争と性

戦争と性

 『戦争と性』は、「従軍慰安婦問題」をはじめとする戦争と性の問題について考えるためにうってつけの書籍だと言えそうです。

 日本のメディア、あるいは韓国のメディアによる報道、またはそれぞれの国民が感情論をベースに言及している媒体(書籍、個人のサイト等)に関しては、どうも偏りが強すぎる嫌いがありますので。


僕が性と葛藤した夜

 20代の中頃、僕は新卒で入った会社を辞め、数ヶ月ほど西日本を旅していました。途中、大坂の友人宅で数週間お世話になっていたのですが、そのとき、こともあろうかトルストイの『クロイツェル・ソナタ/悪魔』を読みつつも、夜は飛田新地(風俗街)に通っていました。性に対する否定的な思想をすり込みながら、その思想に反駁するかたちで抱く娼婦。自己矛盾と安酒で酩酊した頭のなかに去来していたのは不思議な興奮だったと記憶しています。

 当時の僕と比較するのはあまりにもですが、戦場あるいは戦後での性に対する人々の認識が正常でなかったことは否めません。「従軍慰安婦問題」が政治上の外交課題にもなっていることを踏まえ、戦争と性について、私たちは今一度考えなおしてみる必要があるでしょう。とくに、戦争を知らない世代はなおさらです。

売買春の合法化について

 2013年に橋下徹大阪市長が米軍司令官に対して風俗の活用をうながしたことがありました。こう言うと誤解をまねくかもしれませんが、世界の性の現状をみる限り、目の付けどころは悪くなかったのです。本書の解説でもそのことに触れています。どういうことかと言いますと、性は管理されるべきだということが世界の共通認識になりつつあるということです。

 詳しい内容はこちらの記事(「マリファナも売春も合法化が進んでいる)に記載されていますが、つまりは売買春を非合法のまま放置しておくと結果として経済的に安定していない女性がリスクをかぶってしまう、ということです。世界はその事実を認め、裏社会の秩序に任せるのではなく、合法的に管理することが妥当だという考えに向かっています。オランダ、フランス、ドイツをはじめとする欧州各国以外にも、合法化されている国はたくさんあります(こちらのサイトが詳しいです)。

 ただし、アメリカに関して言えば合法化するのは難しそうです。その理由は次の2つ。

  1. ピューリタニズムへの配慮
  2. 管理費用の増大懸念

 簡単に言うと、プロテスタント(原理主義的、つまりは厳格で真面目なキリスト教徒。なぜアメリカ式資本主義が繁栄したかはウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をお読み下さい )の多い宗教事情が不貞行為の合法化を認めず、さらにはそのようなことに支出できるお金などない、ということでしょう。橋下市長の主張はこの点において無知でした。

 また、日本は例によってアメリカの右にならえであることは言うまでもありません。アメリカ軍に占領されていた変換前の沖縄においても事情は同じです。

『戦争と性』から読み取れる本当の敵

 アメリカや日本のように特別な事情がなければ、平時においても戦時下においても、性が管理されるべきものであるということは考え方としてとても合理的です。その理由を本書(解説や序文含む)から引用します。

 軍内で性的抑圧を受けた男たちが、欲望に負けて従来の道徳枠組で律し切れない振舞いに及ぶが、それは銃後にいる女たちも同じだと書かれています。問題に対処するには、(1)女性の自由意思に基づく、(2)国による管理売春宿という形で、兵站としての性を提供するのが有効です。

平時においてもヨーロッパの多くの国が管理売春を合法化しました。――(中略) これは(1)女性の自由意思に基づく、(2)国や州ないし業者の管理売春(後者は業者が女性を管理し、国や州が業者を管理する)が、平時においても性病や暴力の蔓延を防ぐのに有効だからです。

経済的困窮から仕方なく売春する女性は、自由意志を行使しているように見えますが、付随契約――余儀なくされた選択――なので、法実務では自由意志を認めません。

 戦時でも平時でも性の管理が合理的であることは記述のとおりです。また、非合法の管理売春(たとえばヤクザによる売春の秩序)においては、女性に対する保障がありません。

 店舗風俗廃止や暴力団排除条例も、社会がどう回っているか弁えず、見たくない所に目をつぶり、見たい所だけ浄化を求める新住民敵要求のなせる業。派遣風俗化して用心棒がいない個室営業となり、風俗嬢が生本番競争による性病の危険と暴力の危険に晒され、暴排条例ゆえに表向き組をやめた「なりすまし市民」の蔓延で警察が活動実態を掴めなくなる。

 痛烈な批判ですが、非合法の管理売春について的を得た指摘となっています。慰安婦問題についてただ日本の責任ばかりを追求するひとは、果たして近視眼的な視点に陥ってないと言えるでしょうか。

 われわれは不幸にして、この半世紀間に二度も、史上空前の大戦争に遭遇した。――(中略) とくに日本の婦人は、こんどの世界戦争の最大の犠牲者だともいえるであろう。戦争でわが子を奪われて日常の生活苦と老後の不安におののく日本の幾百万の母親たち、夫を失い、老人と子供とを背負わされて路頭に迷う幾百万の日本の未亡人たち、混血児を生まされて悩む幾十万の日本の女たち、痛ましい姿である。

 日本という民族が実際に存在するのは事実で、私たちの祖先が戦禍を与えたのも事実。しかし、それについて今を生きている私たちが「血を引いているから」と言って謝罪することにどれほど建設的な意味があるでしょうか。日本の母もまた戦争の被害者なのです。

戦争の正体

 食欲と性欲は本能であるために、これを無制限に放置することはゆるされない。モーラルと法律のできたのはこのためで、二大本能もこのわくをはなれてはびこることは、人間が社会的動物である以上、ゆるされないことである。そして、人間の本能があらゆる抑圧を脱してあばれ放題にあれ狂い、健全なモーラルと秩序に必要な法のくさりを断ちきるのが集団混乱である戦争に他ならない。

 男子が家庭から抜き取られたとき、世の妻や夫は、社会や教会から祝福された夫婦愛の純潔は、戦争のあらゆる旋風をくぐっても、平和が来復すれば救われるものと信じていた。しかし、金で買った愛の鬱陶しい共用ベッドの中で戦争売淫の痛ましい犠牲者をその腕に抱き、われわれの掲げた例が描写しているような方法でその欲情を鎮めた夫が、出征したときと同じ身体で帰還できたであろうか?

 われわれが戦争の本来の創造物ということができ、またいわねばならぬものは、時に征服者と被占領地域の被抑圧住民との間、連合国の解放者と同盟国の女たちとの間に結ばれた人間的関係でもなければ、この感傷的な戦争牧歌でもなくて、貧窮、飢餓および売淫である。

“未来志向”の本当の意味

 未来志向とは、過去を謝罪することではなく、過去を反省して“やるべきこと”をやるということではないでしょうか。そしてもちろん、やるべきこととは言うまでもありません。

 人間的感情を抱き、愛というものを生命の測り知れぬ貴い善と見、この愛が次第に繊細なものになるのを精神的、道徳的および文化的進歩の一つと見ているすべての人間が戦争から引き出さねばならぬ教訓は、全力をあげて――戦争によって脅やかされた愛の名においても――戦争の再発の防止を助ける義務を認識することなのである。

戦争と性

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