フリーランス・個人事業主として働くうえで、アルバイトやパートなど、従業員の雇用を検討している方は少なくありません。人手が増えれば、できることもより幅広くなります。
ただし、従業員を雇用するためには、必要な手続きを行わなければなりません。そこでこちらの記事では、フリーランス・個人事業主向けに、従業員の雇用に関する手続きを紹介します。
【キホン】募集から採用までの手順
アルバイトやパートを雇用する際の手順は大きく3つあります。具体的には、「1.募集」「2.面接」「3.採用」です。それぞれのステップについて簡単に紹介します。
1.募集
求人募集の方法は、「実店舗での張り紙」「ホームページやチラシ・広告等での告知」「各種求人サイトの利用」にはじまり、「友人・知人からの紹介」も効果的です。
求人サイトであれば、「日本最大級のアルバイト求人サイト【アルバイトEX】」や、「バイト探しはシフトワークス」、「ジョブセンス」などが有名です。
2.面接
面接では、主に「雇用条件の確認」と「採用者の適性」をみます。とくに、勤務時間や給料、契約期間、さらには家庭や学業との両立、健康状態についてもすり合わせておきましょう。
面接時のヒアリングシートは、こちらのサイトからダウンロードできます。スムーズに面接を進めていくために、ぜひ参考にしてください。
3.採用
条件に合致している人が見つかれば、あとは採用するだけです。採用時に提出してもらう書類には、「身分証明書」や「労働契約書」などがあります。
雇用契約書等の書式については、こちらのサイトからダウンロードできます。同時に、マニュアルやユニフォームの用意など、採用後の準備も進めておきましょう。
従業員の雇用に関する手続き
次に、従業員を雇用する際に必要な手続きについて紹介します。状況に応じて、おおむね以下のような手続きが必要となります。
①給与支払いに関する手続き(源泉徴収)
従業員を雇うことになったら、まず、給与支払事務所等の所在地がある所轄税務署に対して「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しましょう。提出時期は、給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設、移転または廃止した日から“1ヶ月以内”となります。
この届け出により、事業主は「源泉徴収義務者」となるため、原則として毎月源泉徴収をしなければなりません。ただ、従業員が10名未満であれば、税務署に対して「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を提出することで、まとめて納付することも可能です(年2回(7月と1月))。
②労働保険(労災保険)・雇用保険に関する手続き
労働保険(労災保険)・雇用保険に関する手続きについて見ていきましょう。いずれも、適用事業者になった場合に必要な手続きとなります。
労災保険は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず、すべてに適用されます。なお、労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」をいい、 労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態は関係ありません。
雇用保険については、労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わず、農林水産業の一部を除きすべて適用事業となり、その事業主は、労働保険料の納付、雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負うことになります。
雇用保険の適用事業に雇用される労働者は、原則としてその意志にかかわらず被保険者となります。ただし、1週間の所定労働時間が20時間未満である方や同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方は、雇用保険の適用除外となるなど、雇用形態等により被保険者とならない場合もあります。
<労働保険の適用事業者(※一元適用事業)>
保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署に対して「保険関係成立届」を提出しなければなりません。
加えて、保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に、所轄の労働基準監督署、都道府県労働局、金融機関等のいずれかに「労働保険概算保険料申告書」を提出します。
<雇用保険の適用事業者(※一元適用事業)>
設置の日の翌日から起算して10日以内に、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に対して、「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。
また同時に、資格取得の事実があった日の翌月10日までに、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に対して、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
※一元適用事業:農林漁業・建設業を除く事業者
③採用時の手続き
採用時には、賃金や労働時間などの労働条件のうち、とくに重要な項目については書面を交付して明示しなければならないとされています(労働基準法15条)。具体的には次の通りです。
<書面の交付による明示事項>
①労働契約の期間
②就業の場所・従事する業務の内容
③始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
④賃金の決定・計算・支払いの方法、賃金の締め切り・支払いの時期に関する事項
⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)
<口頭の明示でもよい事項>
①昇給に関する事項
②退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法、支払いの時期に関する事項
③臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
④労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
⑤安全衛生に関する事項
⑥職業訓練に関する事項
⑦災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
⑧表彰、制裁に関する事項
⑨休職に関する事項
雇用の判断は慎重に
このように、従業員の雇用には煩雑な手続きが必要となります。また、支出面から考えても、一定額の費用(固定費)が発生してしまうということもあり、慎重な判断が必要です。
「本当に従業員を雇う必要があるのか」ということや、費用対効果についても検討しつつ、手続きの全体像を把握したうえで、最終的に判断するようにしましょう。