句読点(「句点=。(マル)」や「読点=、(テン)」)は、どう打てばいいのか。
句点の打ち方で迷うことは少ない。一文の終わりに添えればいいだけである。「例文:今日は晴れていた。明日も晴れだといいなと思った。」。例外といえば『モーニング娘。』ぐらいなものか。
その他の原則は次のとおり。
・「!」や「?」のあとに句点はつけない
・カギカッコ(「」)内の文末にも句点は原則つけない(国語で習う原則とは異なるので注意)
・カギカッコの後に句点をつけるかどうかは好みによる
・通常のカッコ(())の場合、前と後、どちらに句点をつけてもいい(カッコが前の文字を修飾している場合のみ、カッコの後に句点を打つ)
さて、問題は「テン=読点(、)」の打ち方だ。
どの教科書にも明確な指針が示してなかったので(複雑で難解な指標はたくさんあったが)辟易していたのだが、『新装版 日本語の作文技術』 に明確な指標が書かれていた。
読点の打ち方、そのポイントはたったの3つだ。
正しい読点の打ち方「3つのポイント」
読点の打ち方については、以下の3つのポイント以外にも多数掲げている書籍は多い。詳しくは本書に譲るが、それらは不要である。
押さえておくべきなのは、次の3点だけで十分だ。では、それぞれのポイントについて見ていこう。
1.長い修飾語が2つ以上あるとき
第一の原則は、「長い修飾語が2つ以上あるとき」である。
ex.病名が心筋梗そくだと元気にまかせて、過労をかさねたのではないかと思い、ガンだと、どうして早期発見できなかったのかと気にかかかる。(『朝日新聞』1974年9月30日夕刊・文化面「日記から」)
明らかに意味がとりにくい。原則にしたがって直すと次の通りである。
訂正後:病名が心筋梗そくだと、元気にまかせて過労をかさねたのではなないかと思う。本当はガンだったのだ。どうして早期発見できなかったのかと気にかかかる。
前半部分は「病名が心筋梗そくだと」と「元気にまかせて過労をかさねたのではなないかと」が「思う」を修飾している。どちらも長い修飾語だから読点を打つ。
後半部分は、文をわけて意味を通りやすくすれば読点はいらない。もし、修飾語の片方が短ければ次のようになる。
ex改.ただの風邪だと元気にまかせて過労をかさねたのではないかと思う。本当はガンだったのだ。どうして早期発見できなかったのかと気にかかかる。
いずれにしても、長い文章を短くするよう心がけるべきなのは言うまでもない。
2.語順が逆の場合
第二の原則は、「語順が逆の場合」である。
ex. 私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した。
本書には「長い節の順に文章を並べるべし」という原則が紹介さている(p73)。この例文はその原則にしたがっているため、読点がなくても誤読は少ないはずだ。並び替えてみよう。
ex2.Aが私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。
これは語順が原則の逆である。だから読点を打つ。
訂正後:Aが、私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。
こうしても良さそうだ。
訂正後2:Aが私の親友のCに紹介したのは、私がふるえるほど大嫌いなBだ。
3.筆者の思想として
最後は例外として、「筆者の思想として自由に」打つ。
ex.そして誰もいなくなった。
この例文の場合は「誰もいなくなったこと」が流れるように説明されている。以下はどうだろうか。
ex改.そして、誰もいなくなった。
読点を打つことによって「そして」が強調されている。
このように、「しかし」や「だが」のあとに打たれる読点も、同様に「意味を持たせるため」に打たれている。これは原則ではなく、筆者が思想を表すために使われる例外的な手法だ。
読点の打ち方に迷ったときは
大切なのは、「リズムが変だな」「おかしいな」と思った時だけ原則を確認するべきということ。
そのときには、
・長い修飾語が2つ以上ないだろうか?
・語順が逆になっていないだろうか?
と確認してほしい。
その過程で、読点を打ってもいいし、文章を短くしてもいい。大切なのは、読者にとっての読みやすさに配慮することだ。
そのうえで、自らの思想として読点を打つべきだと思ったら、例外的に打つようにしよう。
ただし、無闇やたらに読点を打ってしまうと重要な読点の効力が薄まってしてしまう恐れがある。気をつけよう。
以上のことをふまえて、読点の打ち方に注意されたし。
その他、読点を打つべき箇所について
3つのポイントをふまえたうえで、「もっと読みやすい文章を書きたい」と思う人は、次の箇所にも読点を打ってみてはいかがだろうか。
①漢字が続くとき
・あなたの行為は原則禁止されています。
・あなたの行為は原則、禁止されています。
漢字が続く文章というのは、どうしても読みにくくなってしまう。意味が異なる漢字が続く場合には、読点を打ってみよう。
②主語が長いとき
・凍てつく寒さをものともしない登山家の彼がうちにやってきた。
・凍てつく寒さをものともしない登山家の彼が、うちにやってきた。
日本語の語順では、どこまでが主語でどこからが術後なのかがわかりにくい。そのため、主語を明確にするために読点を打ってみよう。
③接続詞のあと
・だからこそ生きるということが大事なのだ。
・だからこそ、生きるということが大事なのだ。
これは、上記3つのポイントで紹介した「筆者の思想として」読点を打つのに似ている。読みやすさを重視する場合、すべての接続詞のあとに読点を打ってみよう。
④言葉のかかりを明確にしたいとき
・彼は暖炉に火を入れながら、黙っている私に話しかけた。
・彼は、暖炉に火を入れながら黙っている私に話かけた。
こちらについても、3つのポイントのうち「長い修飾語が2つ以上あるとき」とほぼ同じである。意味のとり間違いが起きないように読点を打とう。
ヒトコトまとめ
正しい読点の打ち方とは
重要な読点以外はいっさい打たない、こと。
お付き合いありがとうございました。多謝。
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※あわせて読みたい
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<目次>
第1章 なぜ作文の「技術」か
第2章 修飾する側とされる側
第3章 修飾の順序
第4章 句読点のうちかた
第5章 漢字とカナの心理
第6章 助詞の使い方
第7章 段落
<著者>
本多勝一
1913年、信州・伊那谷生まれ。『朝日新聞』編集委員を経て、現在『週刊金曜日』編集委員。
<類書>
中央公論新社
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