小説を完成させるには、一定の時間と労力が必要です。短編でも中編でも長編でも、相応に時間がかかり、また書き手としての努力が求められます。
とくに長編は、1つの作品を完成させるのに長い時間がかかるため、腰をすえて取り掛かる必要があります。初心者の中には、書き上げられずに苦労している人もいるでしょう。
ただ、どんな小説も、最後まで書き上げなければなりません。1つ1つの作品を完成させてこそ、作家としての力量があがり、また作家として鍛えられていくのです。
では、どうすれば長編小説を最後まで書くことができるのでしょうか。最も簡単な方法は「プロット」をつくること。プロットを作れば、迷うことなく書くことができます。
そこで本稿では、そもそもプロットはどのようなもので、具体的にどのような要素が必要なのかを紹介します。プロットを作ることで、1つの作品を完成させましょう。
■そもそもプロットとは
そもそもプロットとは、小説や戯曲などの「筋(すじ)」をあらわす言葉です。正確には、「構想」や「仕組み」、「趣向」などを含む幅広い意味をもっています。
そんなプロットですが、とくに長編小説を執筆する際にあらかじめ用意しておきたいのは、次の5項目となります。
1.キャッチ(作品のセールスポイント、ウリ)
2.テーマ(伝えたいこと)
3.登場人物(だれが)
4.設定(いつ、どこで、何を、どのように、なぜ)
5.あらすじ(話の流れ:起承転結or序破急)
これら5つの項目をあらかじめ用意しておくことによって、途中で迷うことなく、小説を書いていくことができます。
小説家の中には、プロットを用意する人(プロッター)もいれば、反対にプロットを用意しない人(パンツァー)もいますが、最初のうちは用意しておいたほうが無難です。
なぜなら、プロットを用意しておかなければ、何をどのように書いていいかわからず、行きあたりばったりで書き進めることとなってしまうからです。
■プロットを用意していないときに起こること
プロットに必要な5つの項目について詳しくみていく前に、「プロットを用意していないときに起こること」について考えてみましょう。
冒頭でも述べていますが、小説は書き上げなければ意味がありません。とくに最初のうちは、1つの作品をきちんと書き上げることに全力をそそぐ必要があります。
小説家志望の人によくあるのが、「とりあえず書きはじめてみたものの、途中で嫌になって投げ出してしまう」ことでしょう。この段階をクリアするのがファーストステップです。
そこでプロット作りに着手してみるのですが、「プロットを作るより、とにかく書いたほうがラクだ」と思い、書きはじめてしまう。そしてまた、断念するのです。
そのような悪循環をくり返し、やがて「自分には小説を書く才能がないんだ」と思ってしまうのが、初心者の「あるある」です。そのような事態は避けなければなりません。
そうならないよう、小説の執筆には2つの「書く」作業があることを頭に入れておきましょう。具体的には「①プロットを書く」と「②原稿を書く」の2つです。
さらに、原稿を書き上げたあとは「③原稿に手を入れる(推敲)」という作業が待っているのですが、比重としては「1:1:8」のようなイメージでしょうか。
つまりプロット書くことは、原稿を書くことと同様に重要な作業であり、さらにそのあとに待っている推敲は、小説の執筆において最重要の作業となります。
このような比重を意識しておけば、プロットを軽視することなく、プロットを作り、原稿を書き、原稿に手を入れるという一連の作業を行えるはずです。
■プロットに盛り込むべき5つの要素
では、プロットに盛り込むべき5つの要素について、それぞれ具体的にみていきましょう。以下、各項目の詳細です。
1.キャッチ(作品のセールスポイント、ウリ)
1つ目の「キャッチ」とは、作品のセールスポイントやウリのことです。あらすじや話の流れではなく、「他の作品とは異なる魅力」を設定することが大切です。
たとえば、「震災で育まれた男女の友情」というのは、作品のベースになる設定ではあるものの、それがそのままキャッチになるわけではありません。
そこからさらに、読者にアピールするための要素を盛り込みます。具体的には「震災前日にタイムスリップした」「もし震災が起きなかったら」などが挙げられます。
2.テーマ(伝えたいこと)
2つ目の「テーマ」とは、この「作品によって何を伝えたいのか」ということです。どんな作品にも、何らかの伝えたいことが求められます。
伝えたいことを考えるのは、読者に対するアプローチを考えることにつながります。つまり、読者にどんな思いを共有したいのか、ということです。
この作品を読んだことで、読者がどんな感情をいだき、読み終わった読者がどのような気持ちになるのか。それらをふまえて、テーマを掘り下げていきましょう。
3.登場人物(だれが)
3つ目の「登場人物」は、主人公、ヒロイン、その他の人物などを決めていくことです。とくに重要なのは、物語の主役となる主人公とヒロインです。
また、物語を進めていくうえでキーパーソンとなる友人や知人、敵対者などの人物もきちんと決めておけば、物語の展開がイメージしやすくなります。
登場人物を決める際には、年齢や性別、職業、趣味など、可能な範囲で細かく決めておきましょう。登場人物が勝手に動き出すまで作り込みます。
4.設定(いつ、どこで、何を、どのように、なぜ)
4つ目の「設定」では、いつ、どこで、何を、どのように、なぜを決めていきます。具体的には、時代と舞台があり、そこでどんな物語が展開されるのか、ということです。
時代や舞台の設定は、物語全体の雰囲気を決める重要な要素となります。ストーリーを考える決め手ともなるため、話の内容と合わせて検討しましょう。
また、物語上でどのようなことがなぜ起きるのかを考えるときは、登場人物との兼ね合いも重視してください。登場人物が明確であれば、起きることも自然と浮かびます。
5.あらすじ(話の流れ:起承転結or序破急)
5つ目の「あらすじ」は、この物語を完結に述べたものです。展開の例としては、「起承転結」や「序破急」など、はじまり、展開、おわりを意識するといいでしょう。
プロットを作成する段階では、細かいあらすじを設定する必要はありません。ただ、少なくとも、そのあらすじを聞いた人が話の内容をイメージできるようにしておきましょう。
このあらすじがしっかりしていないと、物語の全体像やイメージが構築できません。できるだけわかりやすく、簡潔にまとめるようにしましょう。
■5つの項目を疑問形にして自問自答してみよう!
プロットを作る際には、これら5つの項目を疑問形にして、それに答えるかたちで作っていきましょう。具体的には、以下の質問に答えてみてください。
1.この作品の最大の魅力はどこにありますか?
2.この作品で読者に伝えたいことは何ですか?(どんな想いを共有したいですか?)
3.この作品にはどのような人が登場しますか?
4.いつ、どこで、何が、どうなるお話ですか?
5.このお話を中学生にもわかるように1分で説明してください。
これらの質問に答えることで、プロットのベースが作れます。そこからさらに肉付けして、プロットを作り込んでいきましょう。
■まとめ
・小説の執筆には「プロット」が不可欠
・書き上げるためにもプロットを用意しよう
・プロットには次の5つの要素を盛り込もう
1.キャッチ(作品のセールスポイント、ウリ)
2.テーマ(伝えたいこと)
3.登場人物(だれが)
4.設定(いつ、どこで、何を、どのように、なぜ)
5.あらすじ(話の流れ:起承転結or序破急)
まずはプロットを作り、小説を最後まで書き上げましょう。