影響力をもつための“個人メディア”のつくり方『MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体』田端信太郎

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MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

 「メディア」とは一体なんだろうか?

『e-Words』によると次のように定義されている。

媒体、媒質、伝達手段、中間などの意味を持つ英単語。“medium”の複数形。

情報を人々に伝える機関や事業、システムなどをメディアという。近年ではインターネット、Webサイトなども一種のメディアとみなされるが、大勢の人に向かって一斉に情報を発信する新聞や雑誌、テレビ、ラジオなどのマスメディア(mass media)の意味で用いられることが多い。

  つまりは「情報の「配信者」と「受信者」を結ぶ「媒介者(仲介者)」」といったところだ。

では、もし優れたメディアをつくろうと思ったら、どういったことに留意すれば良いだろうか。


個人メディアの台頭

インターネットの拡充によってwebメディアが影響力をもつようになった。

『イケハヤ書店』によると、Yahoo!のトップページは月間68億PVを稼ぐという。一日あたり2億人以上が閲覧している計算だ。これで影響力がないとは口が裂けても言えないだろう。ちなみに、Yahoo!のトップページに表示される「Yahoo!トピック」は1,000万回以上表示されることになる。

2013年度の新聞発行部数が4,700万部、関東圏で10%の視聴率を獲得するテレビ番組の視聴者数が470万人ということを考えると、そのすごさがわかるだろう。(それぞれ『日本新聞協会』、『ビデオリサーチ』のデータをもとに試算)ちなみに新聞トップの『読売新聞』単体では1,000万部に届かない程度である。

また、web上の大型メディアだけでなく、最近では「個人メディア」にも注目が集まっている。インフルエンサーやアルファブロガーと呼ばれる人たちが運営しているブログやwebサイトの影響力は、もはや無視できない。とくにFacebookやTwitterなどのいわゆる「ソーシャルメディア」で拡散すれば、情報が爆発的に広がる可能性もある。いわゆる「バズ」である。

優れたメディアのつくり方

それでは、もし自分で個人メディアを立ち上げようと思ったら、どのような点に留意すれば良いのだろうか。以下にポイントをまとめた。

1.ペルソナの設定

メディアにおいて「ペルソナの設定」は欠かせない。

よっぽどの有名人でないかぎり、不特定多数に向けた情報配信は功を奏さない。なぜなら信憑性がないからだ。話題性にも乏しい。とくにwebメディアの場合、その情報に到達するまでが遠くなる。いくらSEOを駆使しようとも、日々流れる大量の情報に飲み込まれてしまうだろう。

だからこそペルソナ、つまりは「具体的なターゲット」の設定が必要なのだ。

実際には、本当に実在するような人のステータスを設定し、その人に向けて記事を書いていく。「性別」「年齢」「職業」「住所」「世帯規模」「学歴」その他「性格」や「現在の状況」など、具体的であればあるほど良い。

あとは、ペルソナがどんなことに興味をもっているのか、どんなことに関心があるのかを探っていく。それが配信する記事のフック(引っかかり)となるのだ。ターゲットを足止めする、閲覧してもらうきっかけである。

2.付加価値のある情報を配信する

配信する情報には「付加価値」がなければならない。

個人メディアである以上、大手メディアや既存のメディアとの差別化を図る必要がある。真新しい情報を配信しているだけでは、対抗できない。何しろ情報のソース自体が貧弱なのだ。人海戦術であくせく取材をするわけにもいかない。

そこで付加価値である。

具体的には、さまざまな情報をわかりやすく収集した「キュレーションタイプ」の記事や、ノウハウをまとめた「ハウツー記事」、新しいけど独自の視点を加えて「ハッと」させる記事など、たくさんある。web特有の「リンクまとめ記事」や「画像まとめ記事」も付加価値がある記事と言えるだろう。

最近では動画をまとめた記事も多いが、果たして“記事”と呼べるかどうかは疑問である。

3.「尊敬」「信頼」「畏怖」

ペルソナが決まり、良質な記事が書けた。あとはマネタイズだ。

しかし、それはメディアをビジネスとして展開する場合の話である。主流は「広告収入」であるが、これらのwebメディアのあり方にも関わることなので、ここでは言及しない。気になる方は既存のwebメディアをよく調べてみると良いだろう。

最後に主張したいのは、メディアは読者の「尊敬」「信頼」「畏怖」を獲得しなければならない、ということだ。優れたメディアは影響力をもつ。メディアは人々を、そして社会全体をも動かす原動力にもなれば、傀儡を操作する影の支配者になることもあるのだ。

人を動かすには「尊敬」「信頼」「畏怖」が必要である。覚えておいてほしい。

ヒトコトまとめ

  優れたメディアをつくるには

付加価値のある情報を配信し、ペルソナの興味・関心を集め、「尊敬」「信頼」「畏怖」を獲得する、こと。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

■第1章 はじめに

・メディア世界の「カエル」だからわかったこと

■第2章 一般ビジネスパーソンもメディアの知識が必要な時代

・メディアとファイナンスの共通点
・「キャッシュ」から「タレント」と「アテンション」の時代へ
・「アテンション」をつかさどり、タレントをモチベートするメディア

■第3章 「メディア」とは何か?

・最古のコミュニケーション・メディアは洞窟壁画
・コミュニケーションとクリエーションは似て非なるもの
・誰もがメディアになり得る「情報爆発」時代
・メディアの意味を定義する

■第4章 そこにメディアが存在する意味――影響力の本質

・米軍が毎日30万部の機関紙を発行する理由
・メディアで報じられる=生きた証が記憶されるということ
・なぜ「缶けり」専門誌は存在し得ないのか?
・怪しかったヨガをおしゃれに変えた「Yogini」
・メディアという観察者なしに世界は立ち上がらない
・予言を自己実現する力――「スクープ」と「誤報」の曖昧な境界線
・上場廃止に向かうライブドア社内で見えたこと
・「間違っても直せばいい」の姿勢が自分たちのクビを絞める

■第5章 「コンテンツ」の軸でメディアを読み解く
――「源氏物語」からニコ動まで。コンテンツを分類する3次元マトリックス

・ストック型とフロー型。性質を知って変幻時代に使いこなそう
・グーグルとウィキペディアの蜜月の関係
・明日になれば、古新聞。鮮度が命のフロー型
・豪速球と変化球。違いを知って自在に使い分けよう
・「食べログ」と「ミシュラン」の違いから考える参加性と権威性
・参加性メディアの全体意思は誰に帰属するのか?
・映画監督はなぜ「偉い」と思われるのか?
・デジタル上のほとんどのコンテンツはノンリニア
・主権はユーザー。進展するマイクロ・コンテンツ化

■第6章 「メディア野郎」へのブートキャンプ

・メディア編集者は、対象読者の「イタコ」となれ!
・セグメンテーションを超えたキャラ情報が「ペルソナ」
・「ペルソナ」があれば、コモディティ商売から脱却できる
・メディア運営に必要なソロバン計算――PVを軸にしたKPI構造
・KPI間でのトレードオフ関係を把握する
・稼げるメディアは、それだけ自由なメディア足り得る
・「FT」の紙がピンクなのはなぜか?
・作り手へのリスペクト=メディアの品質
・尊敬・信頼・畏怖されないメディアはたたき売りされる
・編集権の独立――高潔さがメディアの差別化要因
・全ては読者のために

■第7章 メディアとテクノロジー

・技術が進化しても記者の使命は変わらない…は間違い!
・CD1枚が74分の理由
・音楽流通は、好きなものだけ食べる「回転寿司」スタイルへ
・メディア消費にも影響を及ぼすアーキテクチャの支配
・出版は「パブリッシュ」の一手段に過ぎない
・馬具メーカーであることをやめたエルメス

■第8章 劇的に変わるメディアとメディア・ビジネス

・デジタルが街の形をも変え始めている
・ドリルを買いに来たお客さんは、本当は何を求めているのか?
・主導権は受け手――崩壊した「月9」の概念
・アンバンドリングとリワイヤリング
・「ギャング・オブ・4」には立ち向かわずに利用する

■第9章 拡大する個人型メディアの影響力とこれから

・津田大介、ホリエモン……”お布施型”メディアが流行る理由
・雑誌がオーケストラなら、メルマガはロックバンド

<著者>

田端信太郎(タバタシンタロウ)
1975年生まれ。NTTデータに入社し、BS/CSデジタル関連の放送・通信融合の事業開発、JV設立に携わったのち、リクルートへ。フリーマガジン「R25」の源流となるプロジェクトを立ち上げ、「R25」創刊後は広告営業の責任者を務める。その後、2005年4月にライブドアに入社し、「livedoorニュース」を統括。ライブドア事件後には執行役員メディア事業部長に就任し経営再生をリード。さらに新規メディアとして、「BLOGOS」や「MarketHack」、「Techwave」などを立ち上げる。2010年春からコンデナスト・デジタル社へ。2012年6月、NHK執行役員。

<類書>

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

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