ファーストリテイリングが運営するユニクロ。2015年6月の国内売上高が、前年比マイナス11.7%と振るわなかったニュースは、記憶に新しいことと思います。そのように、何かと話題のユニクロですが、かつて町田店(現在は閉店)で働いており、フリーライターをしている大宮冬洋氏が書いた本『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』 を読みました。結論から申し上げると、“痛かった”です。
ユニクロと柳井社長に対する辛辣な批判
まずは、次の一文をお読みください。
どうせ辞めるのなら早いほうが個人にも会社にもいいというのは、効率と金銭面での成功だけを重視する人の意見に過ぎない。やる気が空回ってしまうダメ社員でも、他人を攻撃したりしない限りは、一定の居場所を与えられるべきだと僕は思う。それができない会社は、どんなに利益を上げていても、「人間の組織」としての資格がない。
いかがでしょうか。ユニクロに対するかなり辛辣な批判ですよね。要約すると、「ユニクロはカネと効率だけを重視する非人道的な烏合の衆だ(組織ですら無い)」と言っているようにも聞こえます。また本書 には、「柳井社長、愛のない会社で満足ですか?」と、社長への直接的な批判も。
会社組織とは何か?
ただこの批判。一般的なビジネスパーソンの感覚としてはどうでしょうか。ボクは正直、“痛い”と感じてしまいました。ダメ社員に居場所を与えるような会社は、よほど体力があるか、あるいはトップが無能であるかの、いずれかだと思うからです。
そもそも、会社とはなんでしょうか。営利組織です。個人が「世の中カネがすべてだ」と言えば批判されますが、企業が「わが社の第一の目的は営利である」と言えば、「何を当たり前なことを!」となるでしょう。とくに、株主をはじめとするステークホルダーの人ほど。
「倒産しない」は許されない
たとえば、居心地のいいユニクロ各店に、仕事をしない社員をひとりずつ配置したらどうなるでしょうか。きっと、会社は少しずつ蝕まれていき、やがては倒産してしまうでしょう。「ユニクロほどの規模なら潰れない」なんて、そもそも、言える時代じゃありません。
そして、会社が潰れてしまえばどうなるか。居場所どころの騒ぎではありません。すべての従業員、その家族も含めて、全員が青空の下に放り出されてしまうのです。それも裸足で。たった一人の仕事をしない社員のせいで。果たして、こうした考えは大げさでしょうか。
法律と倫理観のはざまでリスクをとる経営者たち
会社は学校ではありません。軍隊でもない。サークル活動でも、NPO法人でもありません。対価をもらって労働力を提供する場なのです。それが嫌なら辞めればいい。その自由があるだけでも、喜ぶべきだと思います。フリーランスなら、共有できる感覚だと思いますけどね。
ビジネスにおいて、売上がなければ夢も語れません。それこそ語る資格がない。経済的な弱者ほど、やれ善意だビジョンだと言いますが、そういったものを重視したいなら、ビジネスじゃなくてもいいじゃないですか。法律と倫理観のはざまで、リスクをとっているのは経営者ただひとりなのですから。
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