良い小説には「構造」と「仕掛け」がある|『[実践]小説教室』根本昌夫

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[実践]小説教室: 伝える、揺さぶる基本メソッド (PHP新書 878)

[実践]小説教室: 伝える、揺さぶる基本メソッド (PHP新書 878)

良い小説と三文小説の違いはどこにあるだろうか?

「つまらない」「読む気がしない」小説は、議論をするまでもなく駄作である。裸の王様的な「この作品の良さがわからないのか。素人だな」という意見には実態がない。どんなに優れた作品だか知らないが、「つまらない」ものはつまらないのだ。

また、たとえ「面白い」作品でも、一度読んだだけで満足してしまうものがある。これが「三文小説」と言えるだろう。面白いし、数時間を楽しむことができた。でも、たぶんもう読まないというたぐいの小説である。巷にあふれているのはこの手のものだ。

では「良い小説」とはなんだろうか?


再読に値する作品

良い小説とはひとことで言うと「再読に値する」作品である。

材料は十分、庶民が食べても美味しく、また食べたいと思える料理。「高級すぎてたまにしか」というのとは話が違うが、高級な小説というものが存在しない以上、やはり勝負は「中身」である。

私は捨てたり処分した本を、買い直したことが何度もある。部屋の許容範囲という問題もあるが、Amazonに出品しているという理由が一番大きい。そのように「買い直す」本というのは、大抵が良書である。

あるいは、図書館で借りた本を購入する場合。これも「再読したい」がために購入するのだから、良書の可能性が高い。

良い小説を書くための3つのポイント

再読したい小説の特徴は『[実践]小説教室: 伝える、揺さぶる基本メソッド (PHP新書 878)』 に書かれている。具体的なポイントは次の3つだ。

1.心の中にあるものを

思いつきで書かれた小説にはリアリティがない。

だから読んでいて共感できない。現実感がない。感情移入できない。それはウソを並べただけの言葉の羅列である。自分の想像力を過信してしまうと、そのような小説が書かれることになる。大切なのは「視点」なのだ。どんなに平凡な日常だろうと、一般的な経験だろうと、視点を変えて見ることで「特別な」ものとなる。テーマを外に求めてウソを書く必要はない。自分が本当に書きたいと思うテーマはすでに心の中にある。それを「内面のノンフィクション」として作品に昇華させよう。『吾輩は猫である (新潮文庫)』 が良い例だ。

2.しっかりとした構成

しっかりとした構成があれば作品がブレない。

小説は「何を」「どのように」書くかということに尽きる。「何を」とはテーマ設定のことであり、「どのように」とは文体のことだ。それさえ決まれば書きはじめることは可能である。ただ、闇雲に書きはじめることは地図を持たずにはじめての土地を歩くようなものだ。ゴールの場所もわからなければ、目的地までの距離も不明である。途中で挫折してしまったり、ルートを外れてしまうことも多々あるだろう。そうならないために、あらかじめ地図という名の「構成」をつくるのだ。かの文豪「三島由紀夫」は、綿密な構成づくりで有名だったそうである。

3.重層的に

読み返したいと思わせる小説には「仕掛け」がある。

仕掛けとはなにも「トリック」のようなタネとは限らない。「村上春樹」の作品のように、わかりやすいメタファーを散りばめることで強烈な印象を与えることもできるのだ。仕掛けがあることで、ストーリーを楽しむだけの三文小説とは大きく異なる。作品に込められているメッセージ、著者の想い、時代背景、登場人物のモデル、セリフの意味など、読む度に発見がある。だから何度読んでも面白い。考えさせられる。匂いによって過去を思い出す「プルースト効果」ではないが、作品によって想起させられる記憶に涙することもあるのだ。

ヒトコトまとめ

良い小説の書き方とは

心の中にあるものを、しっかりとした構成で、重層的に書く、こと。

お付き合いありがとうございました。多謝。

<目次>

第1章 小説とは何ですか?/第2章 書いてみよう/第3章 読んで深く味わおう/人はなぜ小説を書くのか―あとがきにかえて/巻末対談 角田光代×根本昌夫ーゆっくりと、信じたいものを書く

<著者>

根本昌夫(ネモトマサオ)
文芸編集者、法政大学、帝京大学、明治学院大学各講師。1953年生まれ。早稲田大学在学中より早稲田文学編集室のスタッフとして活動。『海燕』(ベネッセ)、『野性時代』(角川書店)編集長を歴任。島田雅彦、よしもとばなな、小川洋子、角田光代のデビューに立ち会う。新人作家の発掘、育成には定評がある。純文学からミステリなどのエンターテインメント、ノンフィクション作家まで幅広い人脈をもつ。朝日カルチャーセンターなどでも、小説教室の講座を担当し、新人賞を獲得する作家を生み出している。

<類書>

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コメント

  1. たak より:

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