2017年も残りわずか。今年もいろいろなことがありました。
さて、2017年に出版された書籍についてはどうでしょうか。こちらの記事では、個人的に読んで「おもしろかった」「ためになった」2017年の本を、ランキング形式で紹介しています。
2017年「今年の書籍」ベスト10
2017年に出版された書籍のうち、「おもしろかった」「ためになった」本をランキング形式で紹介しています。みなさんが読んだ本も入っているかもしれません。
10.世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
10位は山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』です。いわゆるビジネス書らしいビジネス書でランクインしたのはこの本だけとなりました。
論理や数字、戦略、分析など、どうしても左脳的に考えてしまうビジネスシーンにおいて、美意識やアートといった右脳的概念の重要性を打ち出した点は目からウロコでした。
9.出版〈2018年度版〉
9位は出版評論家の植田康夫著『出版〈2018年度版〉』です。就活生向けの本ではありますが、出版業界のことが細かく分析・紹介されているので、勉強になります。
とくに出版業界は、若者の読書離れやデバイスの多様化などを背景に、紙の書籍・雑誌が低迷しています。これからはさらに、細分化された読者ニーズを考慮する必要がありそうです。
8.未来の年表 人口減少日本でこれから起きること
8位は河合雅司氏の『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』です。将来の日本で起こるであろう事象が、データをもとに紹介されています。
「少子高齢化」や「年金・社会保障制度の崩壊」などは耳にタコができるほどよく聞く話題ですが、きちんと数字にあたることによって、より未来の問題をとらえやすくなります。
7.告白 三島由紀夫未公開インタビュー
7位は三島由紀夫の『告白 三島由紀夫未公開インタビュー』です。三島由紀夫ファンにとっては、貴重な未公開インタビューとなっています。
本来、作家は作品のなかで想いや感情を伝えるもの。しかし、インタビュー形式の対話において語られる言葉であっても、三島由紀夫はとても詩的でうっとりします。
6.行動経済学まんが ヘンテコノミクス
6位は『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』です。リチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したこともあり、今年は行動経済学が話題になりました。
その行動経済学をわかりやすく漫画で表現しているのが本書です。ストーリーといい、絵のタッチといい、あっという間に読めてしまうわりには奥が深いです。
5.読むことの可能性: 文学理論への招待
5位は武田悠一氏の『読むことの可能性: 文学理論への招待』です。難解な文学理論を、解説やQ&A形式でわかりやすく紹介してくれています。
活字以外の娯楽にあふれている現代だからこそ、あらためて、文学の可能性を模索してみる。それがより豊かな人生をおくるきっかけになるはずです。
4.Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて
4位は玉川陽介氏の『Excelでできる 不動産投資「収益計算」のすべて』です。本書はあふれる不動産投資系書籍のなかでも、とくに異彩を放っています。
不動産投資の本は初心者向けのものが多いのですが、こちらはかなり玄人向け。数多くの不動産投資系書籍作成に携わっている筆者も、思わずうなってしまいました。良書です。
3.不安な個人、立ちすくむ国家
3位は『不安な個人、立ちすくむ国家』です。経産省の若手プロジェクトが手掛けた意欲的なPDFが話題となり、本書の刊行につながりました。
ただ実は、この書籍そのものよりも、ジブリの小冊子『熱風』2017年11月号に掲載されている議論の方がおもしろいです。気になる方はぜひ、手にとってみてください。
2.誰が何を論じているのか: 現代日本の思想と状況
2位は小熊英二氏の『誰が何を論じているのか: 現代日本の思想と状況』です。現代の論説を多角的な視点で概観するのにうってつけの書籍となっています。
小熊英二氏の鋭い分析・論評は、既存の論考に対する新しい視座を与えてくれます。年末年始にあらためてじっくりと再読したい、そんな素晴らしい書籍です。
1.文学問題(F+f)+
1位は山本貴光氏の『文学問題(F+f)+』です。夏目漱石が研究した文学理論を紐解き、ていねいに解説してくれています。
夏目漱石の『私の個人主義』を読まれた方なら、「失敗の亡骸(なきがら)、しかも奇形児の亡骸だ」という言葉をご存知でしょう。それがつまり『文学論』なのですね。
ただ、『文学論』そのものは英語あり旧仮名遣いありでとてもむずかしい。それが本書なら、じっくりゆっくり考えながら読み進めることができます。
2018年はより深い読書体験を
読んだ本は数知れず、今年はとくに、そのうち10冊をピックアップするのには苦労しました。ただそれは、良書がたくさんあったからではなく、「記憶に残る書籍が少なかったから」です。残念ながら。
一方、『文学問題(F+f)+』をはじめ、年の瀬になって良書と出会うことができました。その点は嬉しい誤算です。ぜひ来年も、素晴らしい書籍との出会いを期待しています。そして、2018年はより深い読書体験を。
みなさんの2017年はいかがでしたでしょうか。