先日、ある出版社の編集者の方とお会いしました。お盆期間中にもかかわらずお時間をとっていただき、とても仕事熱心な方だと思いました。自分もまだまだ頑張らなければならないなと、強く決意した次第であります。
その席で、ちょっと気になったのが“ベンチャー村”というお話。
売れている起業家本に共通する6つのポイント
なんでも、起業家のなかには本を出版したいという方が多いそうですが(あるいは出版社側から話を持ち込むことも多々)、実際には、なかなか売上に貢献しない現実があるとのこと。その理由は、「ベンチャー起業家というのは、一部で騒がれているほど世間から関心をもたれていない」から。
正直、目からうろこでした。ボクの場合、ベンチャーに関わらず起業家の方(地に足をつけて事業を行っている方に限りますが)を尊敬していて、それは「リスクをとって挑戦し、イノベーションを起こし、社会に大きく貢献している(あるいはインパクトを与えている)」という理由があります。
ボクの父もバブル期に会社を経営していました。でも、晩年は成れの果て。家族はバラバラになり、あらゆるものを失いました。でも、だからと言って「やっぱり起業なんかするべきではない」というのは間違いだと思っていて。挑戦しない人生、あるいは挑戦する人を応援しない社会に、ボクは価値を感じない。
会社勤めをするという選択肢があるかわりに、会社を起業するという選択肢を奪ってしまうような社会なんて、結局はなんの自由もない閉塞的な空間でしかないじゃないですか。「デモ行進なんて暇人のやることだ」と批判するのはまだしも、デモ行進を行う自由を奪うのは民主主義のやり方じゃない。
ただ、そのこととは別に、書籍の“売上”ということを考えたときには、やはり多くの人が関心を示さなければ問題なわけで。あくまでもビジネスなので、重版されるかされないかというのは(それがすべてではないにしろ)、出版社にとって死活問題にも成り得るのです。
たとえば、日本の起業家関連でとくに人気のある書籍には次のようなものがあります。
売り上げランキング: 5,022
売り上げランキング: 414
売り上げランキング: 353
売り上げランキング: 1,665
売り上げランキング: 419
これらの書籍に共通するポイントをいくつかピックアップすると
- ストーリー性がある
- ドラマがある
- 浮き沈みがある(成功ばかりでない)
- 啓発性がある
- 哲学がある
- 必ずしも起業の役に立つわけではない
といったところでしょうか。つまり、エンタメなんですよ。
売れている書籍は“大衆に受け入れられた”ことを意味するので、当然といえば当然です。あるラジオ番組でドイツ文学者の池内紀さんが「日本には優れた週刊誌がない」と話されていましたが、ゴシップばかりが好まれて読まれている現状を鑑みれば、それもまた仕方のないことかもしれません。
冒頭の“ベンチャー村”という言葉は、「ベンチャー界隈の話題は、「ベンチャー村」という一部の村の中で盛り上がっているだけ」という意味。そのあたりを加味して、サラリーマンのバイブルか、あるいはドラマ化されるぐらいに“人間の本質をえぐり出した”内容の書籍でなければ売れなさそうですね。それが起業家本人に書けるかどうかは疑問ですが。
結論:(僭越ながら)だから我々ライターがいるのです。