これからのビジネスでは、企業も個人も「愛され」なくては生き残れない。そして愛されるには、まずこちらから、顧客を、取引先を、そして社員や仲間を愛さなくてはならない。
では、具体的に、どうやって彼らを愛せば良いのか?その方法が、この本には書いてある。
なぜ愛されなくてはならないのか?
「べつに愛されなくても、良い物さえ提供していれば、成長し利益を拡大することは可能なのでは?」
たしかにそうなんだけど、その考え方はちょっと古い。なぜなら、消費の現場は、日々、めまぐるしく変わっているからだ。生産者中心のマーケティング1.0、消費者中心のマーケティング2.0を経て、現在は、「理念に共感してもらう」「ファンになっていただいく」ことによって、選んでもらえる企業や個人となる「マーケティング3.0」の時代へと差しかかっている。そこでは、良いものを作れば、必ず成功できるわけではない。
この著書の作者である中田華寿子さんは、スターバックスコーヒージャパンでマーケティングに携わり、その後、ライフネット生命にマーケターとして参画している。この2つの企業に言えることが「知名度なし、予算なし、先行する大手企業あり」の状態から、大きく成長したことだ。
もしこの2社が、それぞれ「良いコーヒーを提供する」「良い保険を提供する」ということだけを考えていたら、どうなっていただろうか。おそらく、現在の2社のようには大きく発展しなかっただろう。なぜなら、良いものはすでに、知名度があり、予算があり、先行する大手企業が提供しているからだ。
そして、もの溢れ、サービス溢れの現代では、どこにも存在しない革新的な商品もサービスも、ほとんど残っていない。だから、ビジネスを成功させるには、愛される必要があるのだ。
企業や個人が愛されるには
冒頭で、「愛されるためにはまず愛さなければならない」と述べた。というのも、私たちには直接的に人の心を操作することができない。だからと言って、何もせずに待っているだけでは、もちろん愛されない。
しかし、こちらから愛を与えることによって、「返報性のルール」によって、愛される可能性は高まる。(「返報性のルール」については『影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか』を参考にされたし)なによりも、自ら行動することが大事なのだ。
もし君が愛されたいと思うなら、まず君が人を愛しなさい。<セネカ>
愛されたいなら、愛し、愛らしくあれ。<ベンジャミン・フランクリン>
ぜひ、愛される人格を目指して行動を起こそう!この本に紹介されている愛される人格は、以下のとおりだ。
愛される企業や個人に共通する「4つの人格」
- 理念がある
- 顔が見える
- 正直である
- Noと言える
1.理念がある
理念とは想いを企業の存在意義に反映し、社会において企業が強い意志を持って達成しようとする具体的なゴールを具現化したもの。
つまり、「なんのために」「どんな想いで」そのビジネスを行っているか?ということ。これがあるからブレないし、それが信頼につながる。
創業者や企業の理念と、その本質までも理解し共感し、それを自ら考え、行動に移せるスタッフとそのサービスについては、同じものを提供することができない。
ただ、その理念をマニュアルにして、飾ったり唱えたりしても効果的ではない。なぜなら、本質を理解して共感しないと、自らの行動に反映されないからだ。理念とは、ロボットのように画一的なサービスを提供するためのものではない。自らの考えと行動と言葉で、統一された、独特の体温のあるサービスを、自然につくり出すためのものなのだ。
だからこそ、日々の行動で、コミュニケーションで、理念を活用しなければならない。
2.顔が見える
顔が見えない会社やブランドには、誰もつながることができない。
とくに、対面型ではなく、web完結型のサービスにおいては、顔が見えることが安心へとつながるものだ。そのためにライフネット生命が行っていることに、「ふれあいフェア」や「全国行脚」がある。
詳しい内容は本書に譲るが、どちらも地道な努力を必要とする。ゆえに、ひとの心を揺さぶるのだろう。
3.正直である
自社にとって良いことも悪いことも正直に伝えた上で、お客さまに他社商品と比較して納得したら申し込んでいただきたい。
自社が提供するサービスに自身があるからこそ、他社のサービスと比較してもらうことに、ためらいがない。結果として他社に流れてしまったとしても、それはたまたま条件が合わなかっただけのこと。利益を度外視しているのではなく、お客さまの満足度を高めることで、長期的な企業価値の向上につなげているのだ。
企業の姿勢に確固たる理念や想いを持ち続けているか。偽りはないか。
偽りがなければ、堂々とビジネスができる。そこで生まれる「本当に良いもの」は、混じりっけのないただ良いものであり続けるがゆえに、愛され信頼されるのだ。
正直は最大の戦略である。『インターネット的 (PHP新書)』より
4.Noと言える
お客さまが共感したり、愛してくださるのは、「何でも言うことを聞くロボット」のような会社ではなく、こだわりがあり、人格や個性が見える会社です。
こだわりがあるからこそ、より良いものを提供できる。そして人々は、そういったこだわりに魅力を感じ、共感すればファンとなる。そこは企業であっても個人であって、やはり「ヒト」だからでしょうね。
「No」はハッキリと伝えるのですが、なぜ「No」なのかも、スターバックスの考えや理念とともに、懇切丁寧に伝えた。
ただ、Noの理由は懇切丁寧に説明しなければならない。それをしなければ、ただの好き嫌いになってしまうからだ。クレームへの対応にも言えることだが、「なぜNoなのか?」を丁寧に説明すれば、それがきっかけでファンになってくれることもある。
まとめ
スジを曲げず、隠さず、正直に、Noと言おう!なんだかスカッとしますね。
目次
第1章 会社を好きになってもらおう――ライフネット生命のマーケティングが目指すところ
第2章 愛されるブランドの「人格」――何が共感を呼ぶのか。それをどう伝えるのか。
第3章 全員マーケティング&インターナル・マーケティング――お客さまとの接点はすべてマーケティングチャンス
第4章 ソーシャル・メディア・マーケティング――お客さまとダイレクトにつながる
第5章 借景マーケティング――認知度をアップさせる上手な「借り方」
第6章 巻き込みマーケティング――すべてのステークホルダーを味方につける
お付き合い、ありがとうございました。多謝。